四 叫喚地獄
が、打って変わって次の第四階層、〝叫喚地獄〟では――。
「――か、勘弁してくれ! か、金ならいくらでもやる! く、車も、高級時計も全部やるからよ!」
「同伴出勤でもお泊りでもなんでもしますから! だからどうか許してえっ!」
段状ピラミッドのように組まれた無数の鉄の檻の中に、なにやらホストやキャバ嬢のような派手に盛った亡者達がぎゅうぎゅう詰めに押し込まれ、その周りを取り囲むようにして薪の山が積まれている。
「地獄はサイコー!」
「地獄はサイコー!」
「叫喚サイコー!」
「叫喚サイコー!」
さらにその周りで輪になって騒ぐ、赤いスーツをパリっと着込んだ金髪ゴージャスヘアーな鬼達……。
「これから始まるっ!」
「火炙りタぁーイム!」
「息をも吐かせぬっ!」
「火炙りタぁーイム!」
そんな妙にチャラい鬼達が、シャンパンコールならぬ火炙りコールをよく慣れた調子で唄いながら、たいそう愉しげに踊り騒いで、なんの躊躇いも容赦もなく薪に火を着けていた。
「ここはこれまでの罪プラス、酒を飲ませて悪事を働いた者が落ちる地獄……ゆえにボッタクリをしていた夜の街関連の者達が多い」
「うわあ、なんかシュールだあ……」
解説してくれる牛頭馬頭さんの傍ら、獄卒達の猟奇的なそのノリに、やっぱり地獄は人間の倫理観のはるか上を行く恐ろしい場所なのだと改めて思い知らされた。
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