★9R》召喚の儀

 ここはシェルズ城の地下にある特別に作られた部屋。


 セレスティナは祭壇の前に立ち、ニックに見張られながら、どう召喚したらいいのか魔導書を開き確認していた。


(ああ。どうしたら……。このままでは、この城の者たちの思うつぼ。ですが、召喚しなければリムティナの命が)


 セレスティナはそう思いながら祭壇の方をチラッと見た。


(この魔導書に書かれている詠唱……これなら大丈夫だと思うけれど。

【原初の零なる大地を制したる○○魂よ……】

 ここだけ空白になっていて、詠唱をする者が考え唱えなければならない。

 そうなると私がここに入る言葉を……それならば、強さだけではなく、知性も兼ね備えた者を召喚した方が良いですよね。この城の者に利用されないような……)


「セレスティナ。何を手間取っている?まだ、決心が揺らいでいるとみえる。だが、分かっているな!」


「はい。……では、すぐに召喚の儀を行わせていただきます」


 セレスティナは不本意ながらもそう言い、本を床に置き右手に杖を持ち、祭壇に魔法陣を描くと同時に詠唱を始める。


 《原初の零なる大地を制したる叡智えいちを誇りし魂よ 聖なるマナの導きよ 異空を駆け巡り 次元の扉よ開け!来れ 伝承の勇者よ!!》


 その直後、魔法陣から緑色の閃光が、辺り一面に放たれると、銀髪の男が祭壇の上に現れた。


 そしてその銀髪の男は、自分に何が起きたのか分からず、しばらく呆然と立ちすくんでいた。

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