1月・2月にリリースされた激アツな邦楽アルバムについて。

 2023年は、個人的にはかなり熱い年度になっています。

 洋楽の新譜もさることながら、邦楽の新譜も面白い作品が立て続けにリリースされています。

 今回は、3月以降の新作への期待も込めて、僕が繰り返し聴いた、1月・2月にリリースされた邦楽アルバムについて紹介します。

 では、早速いきます。

 


『映帶する煙』- 君島大空

 まずはこちら。君島大空の記念すべき1stアルバム『映帶する煙』です。

 同氏の誕生日となる一月一八日にリリースされた本作は、かなりの充実っぷり。これまでリリースされたEPで展開されてきた、フォークやロック、ジャズからアンビエント、果てはプログレまで行き来する君島大空のスタイルは、その透き通るような歌声と合わさる事で唯一無二の存在感を放ってきました。

 本作は、全体的に落ち着いたトーンで構築されており、ある意味では君島大空の「素」が一番色濃い作品となっているような印象を受けます。アンビエント的な空気感や質感は、これはかなり美味しい。ジャケ写が物語っています。俺もこのムード好き。

 先行シングルだった「19℃」はマジで何度も聴きました。リリースされたのが丁度夏から秋に移り変わろうとする時期だったので、会社から帰るときに外気温が19℃だった日は必ず聴いていました。そしてそれは今後も続けます。

 君島大空と言えば、四人編成のライブメンバーがバッチバチの強キャラです。そもそも君島大空だけでもすごいのに、そこに石若駿やKing Gnuの新井和輝が加わります。なんだその最強のリズム帯は。勝てねぇよ。


『タオルケットは穏やかな』- カネコアヤノ

 僕がリリースをずうううううっと待っていた作品と言えばこちら。カネコアヤノの新作『タオルケットは穏やかな』。なんでずっと待っていたか知りたい人は是非【小岩BushBashでBobby Orozaのライブを見てきた話。/URL https://kakuyomu.jp/works/16816452218329203330/episodes/16817330649305128109】をお読みください。

 さて、本作は、それまでの作品と比べてロック色が強く、所々に散りばめられたシューゲイザー的なサウンドがアクセントになっています。タイトル曲の「タオルケットは穏やかな」とか、いいよね。

 アルバムでは最後の収録曲となる「もしも」はエレクトロ的な楽曲ですが、その緩さと雰囲気感は坂本慎太郎を彷彿とさせ、面白い捻りになっています。

 オススメ曲は「気分」です。ライブ行きたいなぁ。


『あのち』 - GEZAN

 僕が大好きなバンドの一つ、GEZAN。『狂』に続く本作は、前作のような全編を通したダンスアルバムではありませんが、一本のストーリーを追っていく非常にコンセプチュアルなものになっています。ライブでは定番となっていた「誅犬」をはじめ、先行シングルとなった「萃点」など、GEZANの現在地を更新するキラーチューンを含んでいます。一方で「We Were The World」や「Third Summer of Love」など歌もの多く、かなり緩急のついたアルバムです。

 歌詞表現も、また面白いです。TOWER RECORDの広告に書かれた「共に歌わず、互いに歌う」という文句は本作の中で展開させる詩世界を端的に表しています。個人的によくそれ言ったな思ったのが「もう俺らは我慢できない」の歌詞の中で登場する“いつまで清志郎に頼ってるんだ”という一節。ほんとね、とか思いました。


『deadpool - EP』- Peterparker69, Jeter & Y ohtrixpointnever

 今年の正月、何の気なしにテレビを見ていたら、僕が去年聴きまくった「Flight to Mumbai」が流れてきてテンションが上がりました。CMソングとして使われていたみたいで、ええセンスしとるやないかと思った次第です。

 海外のハイパーポップ・シーンに呼応する形で、日本でもTohjiや4s4ki、ウ山あまねなどが登場しましたが、最近の注目株なのがJeterとY ohtrixpointneverからなるデュオ・Peterparker69です。何が良いって、まじで曲がいい。これに尽きる。あとジャケ写かっこいい。あとハイパーポップらしく曲が短い。次はもっとたくさん聴きたいです。


『Loves & Cults』- yahyel

 長い活動休止期間を経てリリースされた3rdアルバム『Loves & Cults』。去年の11月ごろからシングル曲をリリースし、復活の兆しを見せていましたが、ここにきて待望の新アルバムが発表となり、僕は嬉しい限りです。

 さて内容ですが、やはり先行シングルのイメージで攻めてきた印象です。James Blake的なポスト・ダブステップ系のサウンドは鳴りを潜め、「Highway」では2ステップやグライムに接近したダンサブルな楽曲に挑戦しています。確かに、最近のUKシーンではFred Againを筆頭に2ステップ的な楽曲がチラホラと出てきた印象がありますが、ここは一種D.A.N.とも共通する要素のようにも思えます。

 そういえば、『Loves & Cults』の裏では、ポスト・トリップホップを掲げるバンド・TAMIWも新作『Fight for Innocence』もリリースしています。こちらも力作なので、聴き比べて見るのも面白いですよ。



 追伸。

 最近、偉大なミュージシャンが相次いでこの世を去ってしまいました。ジャズ界ではPharoah Sanders、Wayne Shorterが逝去し、ロック界でもJeff BeckやManuel Göttschingといった素晴らしいギタリスト、そしてJet Blackといった名ドラマーも世界からいなくなってしまいました。

 そして日本でも、サディスティック・ミカ・バンド、そしてYellow Magic Orchestraで活躍した高橋幸宏氏が逝去されました。あの正確無比なハイハット・ワークが聴けなくなると思うと本当に寂しいです。Twitterで逝去の記事をみた時は、電車の中で思わず泣きそうになってしまいました。


 僕自身、全く無名の身で本当に恐縮なのですが、ここで哀悼の意を表したいと思います。ありがとうございました。

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