手始めにネオ・シティポップな作品を9つほど。

『THE BAY』- Suchmos

 Suchmosって、あのJamiroquaiみたいなやつ? みたいな会話はNulbarichの登場によって聞かなくなったような今も健在なような。もとい、2015年に同バンドがリリースした1stアルバム『THE BAY』は僕にとって思い出深い作品の一つです。


 このアルバムと出会ったのはリリースされた直後くらいでした。父親が、ドライブついでに立ち寄ったCDショップで偶然にもこのアルバムを買ってきたのが出会いです。

 当時のシーンにはまだ「ネオ・シティポップ」という単語が定着しておらずSuchmosも現在のような国民的バンドになる前でした。勿論、このアルバムの評判が良くその後瞬く間にスターダムにのし上がっていた訳ですが、若手ミュージシャンの音楽にほとんど反応を示さない父親がどうしてSuchmosを買ってきたのか。

 その理由は、実はとても単純なものでした。後々分かった事ですが父親は70年代の元祖シティポップ世代だったのです。なるほど。Suchmosの音楽に漂うシティポップライクなアーバン・サウンドに惹かれていた訳ですね(こう書くとダサいなこれ)。


 サウンドについては「アシッド・ジャズ」とも形容され、よく引き合いに出されるのが90年代のアシッド・ジャズシーンを牽引したJamiroquaiです。

 アシッド・ジャズは、所謂クラブ・ジャズ(DJプレイ向きのリズミカルなジャズの総称。ファラオ・サンダースとかが有名)を源流としており、ジャズやブラックミュージックのダンサンブルなグルーヴ感とポップかつ洗練されたメロディが融合したオシャレサウンドが魅力です。

 90年代当時の日本にもアシッド・ジャズに分類されるバンドがいました。その代表格が大沢伸一率いるMONDO GROSSOで、こちらは英語を基調としたボーカルで歌い上げる大人びたサウンドが特徴的です。

 MONDO GROSSOはアシッド・ジャズらしいクロスオーバーな音楽性ですが、全体を俯瞰して見えてくるものはハウス・ミュージック的なダンス・ミュージックのフィーリングのような気がします。対してSuchmosの場合は軸足がロックバンドにあり、そのフォーマットの中にシティポップやアシッド・ジャズ、そしてネオ・ソウルが見え隠れする感じがします。

 ブラックミュージックという舶来のサウンドでありながら根底にあるのは日本の歌謡曲の魂。この匙加減は、ともすれば「なりきれていない」と判断されてしまうかもしれませんが、僕としてはむしろ日本らしい佇まいを持ったグッドサウンドだと思います。


 父親の時代には山下達郎がいたように、同世代の音楽ファンとして今後もSuchmosを追い続けて行きたいと思います。

 

 * * *


 にしてもこの手のアナログ盤はプレ値が付いていたどれもたけぇ。ディスクユニオンで状態のいいものを購入しましたが元値の3倍くらいしました。あまり中古で出回る事もないので、欲しい人は見つけたらすぐにポチる事をお勧めします。まじ。

 追記。2021年2月3日、Suchmosが公式サイトにて一時活動休止を発表しました。一ファンとして彼らの復活を気長に待ちます。3rdアルバム『THE ANYMAL』で見せた新境地、戻ってきた彼らが次に何を見せてくれるのか。今から楽しみです。いずれ『THE ANYMAL』もレビューしたいと思います。

 

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