第13話 スピリット

前期テストから1ヶ月と少しが経ち今は9月の上旬。季節的にはもうすぐ秋だがまだまだ暑い。

そして現在の時刻は11時を回ったところであり、4時限目の授業をしている真っ最中だ。


「次は能力について教えます。能力とは1部の人が使う事が出来る超自然的な神秘であり超常的な現象であるとされています」


魔力学の授業の1部である能力について北条先生が饒舌に説明していく。

俺も1能力者として寝ずにきちんと聞いておこうと思う。


『普通は授業というのはどんな内容でも聞くべきだと思いますよ』

『俺の中では授業は必要なものだけ聞いて後は睡眠時間だから』

『全く、相真君は・・・・・・』


俺の思考を読んで念話を送ってくるルナに俺が真顔でそう返すとルナは呆れたような表情を浮かべる。


「能力は魔術と同じように魔力を媒体としており、能力によって引き起こされる現象を"魔法"と言います。魔法と魔術の違いとしては、魔術が魔力と科学を融合して効率良く神秘を引き起こしているのに対して、魔法は魔力だけで神秘を引き起こす純粋なる魔力現象です」


北条先生による専門用語を交えて能力についての解説。

神秘は確か魔力によって起こる超自然的な科学では解明出来ない人智を超えた超常現象だったな。

魔力現象はその名の通り魔力によって引き起こされる現象の事を示す言葉だ。


『なぁルナ、《魔王継承ファントムフォース》の身体強化も魔法なのか?』

『正確には魔王の魂を継承する事が魔法です。魔法で身体能力を強化しているわけではありません』

『なるほど』


「能力に使用する魔力は魔術を行使するのに使う魔力とは別物です。魔術用の魔力は体外から吸収するものであり魂の外側を覆うように存在するという"オド"に溜め込まれています。しかし能力に使われる魔力は".固有魔力"と呼ばれる魂の内側に存在する自分で生成させられるものです」


『オドって何?初めて聞いたんだけど』

『オドとは外部から魔力を吸収し溜め込むための物理的に存在しない器官の事です。魔術師の魔力量はオドに溜め込める魔力の量の事を指します。それと恐らくオドについては授業で教えられてます。相真君が寝てただけかと』

『なるほどな。でも能力には魔力つかうんだろ?俺は魔力少ないのになんで能力使えるんだ?』


ルナは俺の質問に簡潔な回答をする。最後に苦言を呈すが俺はそれを華麗にスルーし次の質問をする。


『相真君はオドに溜め込める魔力量は少ないですが、固有魔力は結構多いです。それに《魔王継承ファントムフォース》は発動すれば固有魔力の量も増えるので問題ありません』

『へー、固有魔力の量とオドの魔力量は同じじゃないのか。つうか能力使うのに必要な固有魔力が能力発動すれば固有魔力増えるズル過ぎるだろ。・・・・・・・ちょっと待て、デパートの時の剣出すのに使ったのは固有魔力か?』

『そうですよ。黒魔法は《魔王継承ファントムフォース》の魔法の1つですから』

『気絶したのって魔力が減ったのも理由だったよな。あの剣出すのにどんだけ固有魔力を消費するんだよ!』

『あの魔剣は確かに魔力消費は多いですが、能力に制限を掛けているからという理由もあります。20%程度の継承では固有魔力も大して増えませんからね』


「因みに生まれつきの能力者より後天的に能力者にった人の方が遥かに多いそうです。私の知っている能力者の方々も元々固有魔力が多い人間が生活する環境によって能力が覚醒したという人がほとんどです」


これについてはルナから聞いた事がある。普通能力者はどういう経緯で能力が覚醒するのか聞いたところ、「負傷して死にかけた時に能力者に覚醒するケース」や「長年劣悪な環境で育ち絶望した子供が能力者になるケース」などがあるらしい。まぁ俺の場合は「死にかけた俺をルナが助けるために」という超が付くほどの異端な理由なのだが。


「そして能力は4つのクラスに分けられています。1つ目は"エフェクト"。エフェクトは基本的に1種類の現象しか起こせません。能力が単純な分魔力消費が少なく長期戦に対応出来ます。2つ目は"エピック"。エピックは複数の現象を引き起こす事が可能で、汎用性が高いのが特徴です。エフェクトと比べて魔力消費が多く短期決戦向きで、能力が大技で切り札として使うしかないというケースもよくあります」


『こう聞くとエフェクトよりエピックのが強そうに思えるな』

『まぁエピックは希少ですからね。能力者の大多数はエフェクトですし、相性差はあるとはいえもし戦えば基本的にエピックのが有利でしょうね』


「次に3つ目の"レジェンド"。これは過去の英雄の魂と残留思念そしてその英雄を崇拝する人々の思念の集合体が合わさり能力となったものです。基礎的な身体強化やその英雄を象徴するような魔法を使う事が出来ます。最後の4つ目は"スピリット"です。スピリットは神や幻獣など神話や伝説上の存在、正確にはこの世界には存在しないものの力を使う事が出来ます。スピリットは4つの中で最も謎が多く、希少であり、最高の力を持っています。文字通りの人外の力を使える能力であり、チートと言っても過言じゃありません。そしてスピリットの能力には"使者"と呼ばれる能力のナビゲーターの様な存在がいるとされています」


『俺の能力ってどのクラスなんだ?』

『《魔王継承ファントムフォース》はスピリットに分類されています』

『へぇ。・・・・・・でも前にこの能力の力の源は先代能力の人間って言ってなかったか?それどとレジェンドになるんじゃないか?』

『いえ、継承している先代能力の能力は人外の存在から力を得たので《魔王継承ファントムフォース》はスピリットに分類されます』

『なるほどね』


ーキーンコーンー

チャイムが鳴りクラスがどっと騒がしくなり、「あー終わった」や「やっと飯だ!」などの声が聞こえてくる。

軍校では基本的にチャイムが鳴った瞬間に授業が終わり(授業終わりの挨拶などはなし)なのでチャイムがなった瞬間にこうなる。


「授業はこれで終わりです。でも連絡事項があるので昼食を摂りながらでもいいので聞いて下さい」


教卓に立つ先生が騒ぐ生徒をまとめ上げる。


「来週の週末に体育祭があります。体育祭はクラス対抗で実施されるのですが、普通の高校のようではありません。基本的には実戦訓練のような感じです。皆んなで頑張って1位を目指しましょう!」

「よっしゃ優勝するぞ!」

「つまり週末に戦闘訓練するってだけじゃん」

「実戦訓練とか緊張するなぁ」


生徒達が多種多様の声を上げる。実戦訓練を体育祭なんて名前にする必要があったのか?とは思うが、クラス同士で競うからには本気で勝ちにいこうと思う。


「頑張ろうね相真君!」

「そうだな。出来るだけクラスの足を引っ張りたくはないし、気合入れて訓練しようかね」

「何言ってんだ相真。お前はこのクラスのエースだぞ!お前は堂々としてればいいんだよ」


隣の席の沙月と前の席の圭一が話しかけてくる。俺は結構緊張しているんだが圭一は気さくに俺の肩を叩く。


「エースって、俺は別に大したことは・・・・・・」

「何言ってんだ、このクラスの最強は相真だろ!」

「お前がエースだぞ黒木!」

「私達を引っ張っていってね黒木君」


俺は謙遜するが他の生徒達も口々に期待の言葉を口にする。


(いつから俺はこんなに期待されるようになったんだ?)


『前期テストのお陰じゃないですか?』

『ああ、そういえば点数晒されたんだっけ』


前期テストの結果は格闘術が95点で武装のテストが93点で共に学年1位だった。まぁ総合点数は普通科のテストが30点代だったので30位くらいだったのだが。

しかし生徒ランクは教師がテストの内容を基にしてテスト結果とは別に出すらしく、俺は格闘術と武装のテストの成績のお陰か学年2位で生徒ランクSとなった。




「"氣"ですか?」

「そうだ。氣を感じとる、それは白鷺流口伝の技だ。習得すれば必ず君の助けとなろう」


あの後昼食を済ませて、今は兵科訓練の最中だ。今日も仁也さんから剣術を教わるために山を走ってきた。


「そんな凄い技なんですか?」

「ああ、氣を読めるようになれば世界の見え方が変わると言ってもいい」

「へぇ、それってどんな訓練すれば習得出来ます?」

「まずは五感を鍛える事だな。これを使おう」


そう言って仁也さんは難解な文字が書かれた1枚のお札を渡してくる。


「これは?」

「魔術師が使う"霊符"だよ。この霊符には対象者の五感の内の4つを封じる効果がある」


霊符とは日本の魔術(主に陰陽術)でよく使われる魔道具マジックアイテムで、紙のお札に魔術の術式が刻まれており、その魔術を発動するのに必要な魔力も溜め込まれている代物だ。霊符を持っていれば仮に魔術が使えない人間や魔力切れしていても魔術が使う事が可能だ。自分の属性以外の属性魔術も使う事が出来る。


「五感の内の4つを封じるですか。かなりしんどそうですね」

「この霊符を使った状態色々な訓練をしてもらう」

「はい!」

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