第4話 能力

視界が漆黒の光に包まれた次の瞬間ーー

俺はさっきまで倒れていた場所に戻って来ていた。

身体中に掛かる重すぎるくらいの重力も、埃っぽい都会の空気も、あらゆる不自由さがここが現実であると証明する。


「・・・・・・うお、マジで生き返ってる」


身体を見回したら捻ったりしてみるが、痛みなどは特に無い。


『あら、信じてなかったんですか?』

「いや、そういう訳じゃ無いけど・・・・・・てか現実でも喋るのか?」


からかう様な口調でルナが話しかけて来る、声が聞こえて来るとはなんか少し違う感じだが・・・・・・。


『喋れますよ、正確には念話を相真君の頭に直接送り込んでいるんですけどね』


(なるほどつまりはテレパシーか、だからこんな変な感覚なのか・・・・・・てか今さりげなく考えてる事読まれたな)


「なっ!?お、お前何故生きている!?」


そんな風に会話(?)していると黒フードの男が驚愕の表情で俺を見て来る。


「何故?・・・・・・うーん精神世界とかいう所で美少女に能力とやらを貰ったからかな?」

「何意味わからない事言ってやがる!?」

『美少女だなんて・・・・・・もう相真君ったらぁ』


俺の言葉に混乱している黒フードの男と、何故か頬を赤らめながら嬉しそうしているルナ。


「まぁいいよ、もう一度君を殺せば良いだけだ」


そう言って男はサバイバルナイフを構える。


「な、なあルナこれどうすればいいんだ?」

『フフ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。今の相真君ならあんな男どうとでも出来ますよ』


(おいおい適当過ぎなないか!?)


俺達がそんな事を話している間に、男が走って距離を詰めて来る。

助走を付けた高速の突き、一般人なら絶対に避けらないだろう、しかしーー


「うお!!」


サバイバルナイフの軌道を目で捉えた俺は、その刃を身体を翻して躱す。そして喧嘩と同じ容量でスキだらけの男にボディーブローを叩き込む。


「ぐはっ!!」

「マジか!?躱せたし、攻撃も効いたんだが?」


『だから余裕だって言ったじゃないですか、今の相真君ならあの程度の攻撃くらい躱せますし、攻撃だって通じますよ』


自分自身に驚愕する俺に対して、ルナが冷静にそう告げる。


「くっそ!よくもやってくれたな!」


男はさっきのボディーブローで完全に頭に血が昇った様で、サバイバルナイフを考え無しに振り回して始める。


「おっと!」

『なんとも素人丸出しの動きですね』

「いや俺も素人なんだが?」


俺は振り回されたサバイバルナイフを後ろに跳んでどうにか躱すが、回避する事しか出来ず近づけない。


『こういう時は一瞬相手の気を引いて下さい、そうすればその瞬間に倒し切れます』

「気を引く・・・・・・ねぇ」


ルナに助言を貰った俺は血で染まったパーカーを脱ぎ男に向かって駆け出し、男との距離が1メートル程になった所で強引に停止し、さっき脱いだパーカーを男に向かって思いっきり投げる。


「なんだ、これ!?」

「おっらぁ!」


目眩しがわりのパーカーに混乱して隙だらけの男に全力の右ストレートを放つ。


「ぐはっ!!」


顔面を思いっきり殴られた男は数メートル吹っ飛んで気絶する。


「マジで勝てたな・・・・・・てか俺強くなり過ぎだろ」

『そりゃあ相真君は能力者になったんですからこれくらい当然です、これでもまだまだ全力じゃないですよ』

「これで全力じゃないのかよ、なぁこの能力ってのは解除とかのか?流石にこんな身体能力してたら周りから怪しまれるだろ」

『ああ能力の解除なら解除したいと念じれば解除出来ますよ、逆にそのままだと相真君の身体に負担が掛かっているので解除しないとダメですよ』


(念じれば解除出来るのか、なら早速能力解除っと)


俺はルナに言われた通りに能力解除と念じた瞬間ー


「うっ!?」


脇腹を貫く様な激痛に再び襲われその場に倒れる


『あ、でも脇腹の傷は治ってないので能力解除したらめちゃくちゃ痛いですよ』

「・・・・・・早く言え・・・・・・よ」


遅すぎる忠告をするルナに恨み言を最後に零して俺の意識は再び闇に落ちた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る