第6話 クラン、ティグニティ。

 次の日、白鷲亭の宿で目が覚める。


「静かでよく寝れた‥ふわあ‥」

「ふむ。アラタよ、あのちょことやらを我にも食べさせるのだ、ふっふ」

「クイン‥朝からチョコ食べるの?うへぇ‥」


 マジックボックスから、チョコレートを出して食べさせてやる。

 後から聞いたが、クインは妖精のため、特に食事しなくても生きていけるとの事だった‥なんて羨ましい生物だ。



 今日は、冒険者ギルドで、依頼を受けてみようと思っている。

 今のランクは最下位のFだ。


 とりあえず、ランクもあげてみたいし、この世界のお金も稼ぎたいからね。


 ホルンの冒険者ギルドへ行くことにした。


 クインと一緒に冒険者ギルドに入り、Fランクの依頼ボードを見る。

「Fはここかな?」


 ずらっと、依頼ボードに張り紙はしてあるものの‥

 猫を探す依頼に、指輪を下水に落としたから探す依頼、ネズミの駆逐、掃除、片付け、洗濯、その他雑用が多かった‥


「ふむ、我がいるのだ、一気に強そうな奴の討伐でも良いのではないか?ふっ」

「そう言う事出来るの?」


 むーんと新は依頼を眺めていた。


「むむ?そこにいるのはクインか?」

 そう言った人物を振り返ってみると、そこには髭の長い身長は150くらいしかない筋骨隆々のドワーフが立っていた。


「ふむ、ベンザか、ふっふー」

「おお、懐かしいのぅ‥ツヨシは一緒じゃないのか?」


 俺は、クインに話しかけてきたドワーフを首を傾げて見ていた。


「アラタよ、コヤツはベンザと言う、ツヨシと一緒のクランにいたドワーフよ。ふっふ」

「む?誰じゃ、ツヨシの知り合いか?」

「いえ‥息子です」

「ぬお!?あの赤子だったやつか‥大きくなったのぉ‥で、ツヨシはどうしたんじゃい?」

「ああ‥親父は‥」

「ふむ。死んだ‥らしいぞ」

「なんと‥そうか…寂しくなったのぉ‥」


 ベンザと言うドワーフは少し悲し気に俯いた。


「それで‥アラタと言ったか?お前とクインは何故ここに?あ、まあここではなんじゃ‥こっちに来い」


 そう言って俺達をギルドの個室に連れて行くのだった。


 ベンザは個室に入ると、ドサっとソファに座った。

 俺も、対面のソファに座り、クインは隣に乗って座る。


「改めて紹介しよう、儂はベンザ・グリオル、お前の父ツヨシと同じ【ティグニティ】のメンバーじゃよ」


 ベンザからいろいろと聞くことになった。


 クランと言うのは、冒険者のコミニュニティで3~4人の小さなクランから、100人を越える大所帯の大きなクランまであるという。


 親父のいたクラン【ティグニティ】は、7人の構成だったがSランクパーティのクランだったと言った。


 ツヨシ・イセ、戦士、人間男。

 ベンザ・グリオル、戦士、ドワーフ男。

 リタ・ライオベル、斥候、獣人女。

 シルベスタ・オニール、魔法&弓使い、人間男。

 ギリアス・バリアン、遊撃、ドラゴニュート男。

 シンシア・フォレスタ、神聖魔法使い、エルフ女。


 そして、俺の母、エウロラ・アスナール、大魔法使い、ハイエルフ女。

 この、7人と親父の従魔クイン一匹、だったそうだ。


「Sランクのクラン‥」

「そうじゃ、もう昔の話だし、お前が生まれ、ツヨシが地球に帰った後に解散したけどな…そして、儂は今はフェリオール王国の冒険者ギルドの会長をしておる、たまたまホルンに用事があって来てみたらお前達を発見したというわけじゃ、わっはっは」


 ベンザは、大笑いしてそう言った。


「あの‥親父は、何故俺を連れて地球に帰ったんですか?」

「ん‥それはだな‥」

「それは‥?」

 ‥‥‥‥‥

「儂の口からは言えん!」


 ずどっと、その間に新はリアクションを起こしそうになった。


「え?なんでですか?」

「いや‥それは自分で確かめに行けば良いではないか‥」


 何で言えないんだ‥このおっさん、何か隠してるのか?


「クインは知ってるのか?」

「‥‥ふむ、我は知らない、ふー」


 なんか違和感しかないぞ‥ま、いいか‥


「で、俺の母さんは今どこにいるのですか?」

「この王国の南西に大きな森がある、そこはヘイムベーラ大森林と言う。そこは大昔から妖精達の森とも呼ばれていてな、そこに、ハイエルフの国【エルファシル】があるのじゃ、そこにお前の母さんはおるよ」


 エルファシル‥ヘイムベーラ大森林‥そこに俺の母が。


「と、とりあえずじゃ‥お前も、先ずは冒険者としてこの世界に慣れてから会いに行った方が良いんじゃないか?」

「ええ‥まあ」

「お前の冒険者ランクを今のFから、Dまで格上げしておいてやるからの」

「え‥良いんですか?」

「大きな声では言えんが、地球人の強さはツヨシで知っておる、いくら細身のお前でも、この世界の人間よりは5倍~10倍‥相当強いはずじゃ、しかもお前はエウロラの息子でもある、魔力も相当持っておろう?」


 まあ、親父は魔法は使えなかったって言うし‥


「その礼と言ってはなんじゃが‥」

「え?」

 ‥‥‥‥‥‥

 ベンザが小さな声で囁くように言う。

「地球産のウイスキーが欲しい‥」

「ウイスキーですか?‥」

「うむ、ツヨシが一度持って来たことがあってな、美味いのなんのって不純物が一切入ってないあの美味さは忘れられん!」

「はあ‥じゃあ今度持って来ます」

「本当か!やってくれるか!わっはっは!」


 ドワーフってやっぱり酒なんだね‥


「ふむ、その酒のせいでパーティが半壊しそうになったことがあったがな…ふっふー」

「な!クインその話はよせ、過去のことじゃよ‥あれはツヨシが‥」


 なんか、聞かない方が良さそうだなここは‥


「ってことで、Dランクにしておくので討伐依頼でも言ってくれば良い、クインもおるから大丈夫じゃろ」

「はい、じゃあ何か依頼受けます」

「それから、ランク昇格には試験があるので、受付で試験を受けると良い、後、これは餞別じゃくれてやるぞい、その代わりウイスキー忘れるなよ!」


 冒険者ランクには、個人ランクと、クランランクがあるみたいだ。

 個人ランクがBでも、クランランクはAとかあるみたいで、クランランクは総合的に見るのだと言う。


 餞別でくれたのは、鑑定スキルの巻物スクロールだった。

 これ‥たしか魔術師ギルドで金貨100枚したやつだよね‥良いのか貰って。

 ウイスキー効果ってやつか‥


 それから、俺は、Dランクのゴブリン退治の依頼を受けることにしたのだった。


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