第20話

Cap018


 目の前では、巨大なロボット型ゴジラが足元も気にせず、闊歩している。


「何じゃ、こりゃ〜!」

「メカゴジラ」

「わぁ!」

 目の前の状況に愕然としている僕の横で、先ほどまで半裸で寝ていた博士が僕に言う。僕は、それにも驚き、再度、悲鳴を上げた。


「メカ…ゴジラ?」

「知らんのか?1974年製作。ゴジラ対メカゴジラのメカゴジラ」

 そう言うと、博士は鼻をホジホジし、その指を唯一の着衣である白衣に擦り付けた。

「名前でなくて、何で、ここに其のメカゴジラがいるのかって話ですよ!」

「そりゃ、お前の寝ている間にワシが、怒り任せに作ったから」

「何で、怒り任せに、そんなもん作るんですか!?」

「だって、学長がムカつくんだもん」

 

 この人に正論は通用しない。


『おい!そこの奴!』

メカゴジラの方から、拡声器越しの呼び掛けがある。

「なんか、呼ばれてますよ」

「お前を呼んどるんじゃろ」

「何で僕が、呼ばれる筋合いがあるんですか!?」

「ワシも無いわい!」

「博士が作ったんでしょうが!」

『どっちでもいい!』

 メカゴジラの方を見ると、その呼び掛けに合わせ、メカガジラの下顎の部分が上下している。


『アトムを出せ!さもないと、人質もお前らも、命はない』

下顎が上下している…。


「不細工な作りじゃな」

「自分でやっといて言わないでくださいよ。それに、あんなの作ったら、もう言い逃れ出来ませんよ。博士、捕まりますよ」

「大丈夫じゃ。ほれ、あそこ!メカゴジラの肩の上に乗っとるの見えるか?」

 僕は、目を凝らす。

すると、そこには何か人らしき物体が乗っている。

「何ですか、あれ?」

「悪の総帥じゃ。アレクサの人工知能を弄って、自我を持たせておいた。元がアレクサだけに、siriベースのアトムを毛嫌いしとる」

「悪を肩代わりさせたんですね…」


『いい加減、こちらの相手をしろ!』

 よく見ると、その悪の総帥が待つレシーバーはコードでメカゴジラに繋がっているようだ。

メカゴジラの下顎が上下する…。

『ええぃ、もういい!やれ、メカゴジラ!小屋ごと踏み潰してしまえ!』


 メカゴジラが迫り来る。

「ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!」

メカゴジラが足を上げ、小屋がその影に覆い尽くさせる。絶体絶命のピンチである。


“シュウィーン!”


 アトムが、小屋を飛び出したと思うと、メカゴジラは急に宙に浮き上がった。

アトムがメカゴジラを持ち上げ、そのジェットで宙に浮かせている。

そして、そのまま、アトムはメカゴジラを地面に叩きつけたのである。


「すごいぞ、アトム!」

「まだ、あいつは壊れておらんぞ、気をつけるんじゃ!」


“ウィ〜ン…ウィ〜ン“


「ん?」

 倒されたメカゴジラは、手足をバタつかせているが、一向に立ち上がれない様子である。

「時間がなかったので、前後進しか出来ん造りしたから、立てんかな」

『くそっ!みてろ!また直ぐに来るからな!』

 悪の総帥がメカゴジラを捨て逃げ出したらしい。しかし、地面に倒れ込んだメカゴジラが邪魔で、その姿を見つけることは出来なかった。


「博士!早く、追いかけて捕まえましょう!」

「待て!お腹が痛いから、まずはトイレじゃ!」

「寝冷えしてんじゃねぇよ!」

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