第16話

「ちくしょう……何の成果も得られなかった」

 そう嘆くのは、この屋敷にプランダール伯爵の使者としてやってきた騎士団長インハルド。

 プランダール伯爵の息子でもあるらしい。

 食事を終え、用意された部屋入ると悔しげに椅子に座った。

 顔は爽やかなイケメンで多分性格もいい。

 背も高く後ろ盾もかなり強そう。

 その青年が嘆く理由はただ一つ。

「……クソっ!どうやったらラッキースケベでおっぱい見れるか緊急会議だ」

 とても美青年からとび出てくる言葉じゃない。

「それは構わないが、諦めて他の街の女冒険者とかにお願いしてみたらどうだ?」


 インハルドが目指しているラッキースケベと言うのは、ランダムクローズマジックを使ったラッキースケベ。

 この魔法は発動に魔力を使わない代償に身に着けている服を消費すると言う。

 インハルドはやっとこのランダムクローズマジックを覚えている女性に出会うことが出来たという。

 それくらい希少性の高い魔法らしい。

「それは考えたが諦めるのは勿体無い。それくらい完璧な身体をしているのだダージリンは」

 キラキラと目を輝かせて何を言ってるのだとツッコミたいがいい身体なのは事実だ。

 俺の好みとは違うがエロい体と言うべきか。

 それに俺も見れるものならおっぱいが見たい。


「インハルドはプランダール伯爵の息子だろ?ならそのの権力使えば何も言えないんじゃないか?」

「随分と下衆な提案をするね。悪いが僕は父上と違って不当な権力は嫌いなのでね」

「随分と真面目なんだな」

「反面教師のお陰かな」

父上の皮肉を笑いながら言ったインハルド。

多分これは本当に父上の事が嫌いなのだろう。


 再びうーんと2人頭を捻っていると、ハッと1つの名案が降ってきた。


「おい、これなんてどうだ?」

「ん、なんだ」

「報酬に付け込んでやって貰うのはどうだ?」

 インハルドは小首を傾げた。

「報酬?ダージリンがそこまでしてくれる程の依頼や問題がこの屋敷にあるのか?」

「あるじゃないか。思い出せ。クローバー家とプランダール家の問題で……」

「それか!父上を殺したいというこっちの願いと、確か次女?だっけか家に来るのは。その子を救えば相当な手柄になるな!」

 インハルドも分かったのか目を見開き言った。

「ああそうだ。けどアリスも忘れるなよ」

「さっき考えた作戦を行うだけで報酬まで付いてくるとは……貴公も悪じゃのう」

「何をおっしゃるか。お主も負けてはおらぬぞ」

 急な子芝居も嫌いじゃない。

 やっぱりこいつとは仲良くなれそうだ。

「そうと決まれば、明日の見送りに来てくれるだろう。その時にお願いするとしますか」

「そうだな。俺はもう寝るわ。おやすみ」

 俺はインハンドの部屋を後にした。

「襲いに行くなよ?」

「いかねーよ!とっとと寝ろ」


 本当に部屋を後にした俺は自室に戻り布団に潜った。

天井を見上げ溜息を零す。

 みんなの前では平気な顔をしているが、正直アリスが心配だ。

 早く助けてあげたいけど、魂が抜かれてるとかなんやらだし……。

 インハルドのラッキースケベと同時に救えないかなー。

 ていうか、ラッキースケベって作戦を考えてやるものなのか?

 インハルドもふし――俺は気を失うような眠気に襲われ眠った。



ーーーーーーーーーー



「突然の押し掛けてしまって済まなかったね。次からはもっと前もって伝えてから遊びに来させて貰うよ」

メイドのダージリン、ジャスミン、ルフナの3人は言葉は返さずお辞儀だけした。


「お礼を言わせてもらうのはこっちの方だよ。アリスの救出にも手伝ってくれるみたいだしな」

話を切り出すにはここしかないと思い、できるだけ自然に話を入れた。

「アリス様の救出に協力してくださるのですか!?」

ダージリンさんが聞き返した。

「ええ。それに次女様を当家に迎え入れるのは相応しくないと判断しているのでそちらも辞めさせたいと考えております。たとえ火の中水の中森の中、敵がどんな貴族であってもモンスターや父上であっても必ず助け出してみせましょう。どんな凶悪な敵が居るか分かりませんが必ず」

「それはなんとも頼もしい……!御不在の当主もさぞかし喜ぶことでしょう」

「その喜びはダージリンさんも同じですか?」

俺の意味のわからない質問にとりあえず「ええ」と肯定するダージリンさん。

「だったら御褒美とか期待しちゃっても……??」

耳打ちするように小声で囁くとダージリンさんは顔を赤くし、「達成した時の状況次第です」

「分かりました」

俺は大きく頭の上で○を作った。

するとインハルドは親指をGoodと立て、馬車を走らせた。

「ユウマ君。作戦は成功だ!では、2日後当家に来てくれ」

「わかったよー。じゃあなインハルド」

馬車が100m程進んだのを確認し、俺は汗を拭った。

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