第45話 ビッチに狙われる

「あたしがスッキリさせてあげようか?」


 クラスメイトの滝本さんが、大胆にもそう言い放った。


 俺はハッとして、となりの道三郎を見た。


 まだスヤスヤと眠っている。


 他のみんなも寝ているのを確認して、少しだけ胸を撫で下ろす。


 それから、改めて滝本さんを見た。


 彼女は1人、小悪魔みたいに笑っている。


「い、いきなりどうしたの? 修学旅行でテンションが上がっちゃったのかな?」


「月城くんってさ、優しい顔して、エッチ上手そうだよね」


「ぶふっ……た、滝本さん、いい加減に……」


「んぅ……」


 その時、道三郎が声を発して、俺はビクッとした。


「……涼香さん、もう出来ないよ」


 こいつは幸せ者だな。


「月城くん、あたしもエッチ、上手だよ?」


「君はまだ言うか。いい加減に黙ってくれよ」


「じゃあ、チ◯ポしゃぶらせて?」


 こいつ、マジでビッチだ……ていうか、バカだ。


「お断りだよ。俺も寝るから、静かにしてくれ」


「じゃあその間、チ◯ポをしゃぶって……」


「おやすみ」


 強制的に会話を終了した。


 俺はひたすらに目をつぶって、小悪魔の視線から逃れる。


「……ロックオン」


 不吉な声が聞えたけど、俺は眠ったフリをしていた。




      ◇




 ランチを終えた後、涼香さんとお買い物をしていた。


「ていうか、可奈子ちゃん。あんたまた、おっぱい育った?」


「うっ……は、はい」


「ぶっちゃけ、何カップよ?」


「……103のKです」


「バケモノか」


「ひ、ひどい……」


「それくらいになると、服選びも苦労しそうだね~」


「そうなの。ブラも可愛いのどころか、サイズが無いから……」


「まさか、ノーブラ?」


「違います」


「いつも冬馬くんにどんな感じで揉まれているの?」


「えっ? それは優しく……って、バカ!」


「良いね~、ノリツッコミ~」


「もう、涼香さんってば~……」


「まあ、そんだけラブラブなら、冬馬くんが浮気する心配もないだろうね」


「それ、前にも言っていたけど、大丈夫ですから……たぶん」


「おや、不安そうね?」


「いや、その……旅先では何が起きるか分からないから。冬馬くんを狙っている女子がいるかもしれないし」


「いるだろうね~、彼モテそうだし」


「うぅ~」


「昨日の夜、もっといっぱい、そのおっぱいでホールドしてあげれば良かったのに」


「……確かに」


「って、へこまないで。あたしが可愛いお洋服を見繕ってあげるから」


「ぐすん」


 自分がここまで冬馬くんに依存していたとは思わなかった。


 居なくなると、改めてその存在の大きさを感じてしまう。


 実際、大きいし……って、私のバカ!




      ◇




 ねえ、チ◯ポしゃぶっても良い?


 くそ、未だにビッチのセリフが脳内でリフレインしやがる。


「初日は勉強タイムだから、ぶっちゃけ退屈だよな~。まあ、首里城とか見に行くから、良いけど」


 となりを歩く道三郎が言う。


「ああ、そうだな……」


「どした、冬馬? 何かテンション低いじゃん。やっぱり、可奈子さんとエッチ出来ないからか?」


「うん、そうかもね」


「って、マジでどうしたよ?」


 道三郎が心配して俺の肩をゆすった。


「なあ、道三郎。滝本さんのこと、どう思う?」


「えっ? ああ……ビッチなんだろ、あいつ」


「ですよね~……」


「え、何、お前。もしかして、狙われてんの?」


「かもしれない……」


「マジか~。あいつ、普通にヤ◯◯ンだからな~。前に他のクラスの奴も食われたらしいぜ」


「そっか……でも、俺には可奈子さんがいるから」


「だな~。俺らには最高の年上カノジョがいるから、誘惑されることもないよな~」


「うん、そうだね」


 俺は頷く。


 その時、同じクラスの群れの中に、滝本さんを見つけてしまった。


 彼女はもっと前から、俺を見つめていたようで。


 俺が視線を合わせると、ニヒッと笑った。


 そして、握りこぶしの人差し指と中指の間から、親指を出す。


 それが何を意味するのか、よく分からないけど。


 とにかく、嫌らしい意味なのは分かった。


 やっぱりあの女はビッチだ。


 逃げないと!


 ロ・ッ・ク・オ・ン・♡


 口パクでたぶんそう言っている。


「おい、冬馬。大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」


「……俺の貞操が危うい」


「……とにかく、逃げろ」


 そうしたいのは山々です。







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