第19話 俺の本気

 いつも通りの時間に俺は起きて、いつも通りに瞑想をして、剣術の訓練をし、気分転換にと魔法と剣術の組み合わせの攻撃方法なんかを開発していたりもした。

 そうしてるとすっかり1時を回っており、「そろそろ昼食にしましょう」なんて声が聞こえたので家に戻りご飯を食べ始めた。


「ローランってば、まだ疲れてそうな顔をして、、まだ二日目なんだからシャキッとしなさい。」


 そう言われたって仕方ないじゃないか。俺の気苦労知ってるか?知らないだろ!こうなったりするのが嫌で俺は前世でぼっちやってたんだぞ。


 まぁでも、ぼっちでいると母さんに「あんたまだ友達いないの?」とか「ずっとゲームなんかやってないでたまには外で遊んできたら?」なんか毎日のように言われてたから、転生したこの世界ではちゃんと友達作って仲良くやっていこうとしてるんだよ?というか、全く人と接してこなかった俺が自らやっていこうとしたんだよ?


 俺はいま初めてわかった事がある。

ぼっちが負け組? はあ? 勝ち組になったからぼっちになってんだよ!!


 人付き合いなんて勉強の53万倍疲れるわ!


 そんな不満ばかり考えながら昼食を取り終えた。



「、、、あと10分後には出ないと、、行きたくねぇ。」

「ローランはいつも勉強してるから大丈夫よ。」

「そうじゃないと分かっていながらそんなこと言うお母さんは本当に意地悪だね。」

「あら、今更なの?私はこう見えてちょっとだけ性格悪いのよ。」


ちょっとだけ性格悪いなんていうやつの性格が悪い時は本当に悪い。俺は知っている。


 そうして、家を出る時間になったので俺は家を出る事にした。

 すると後ろから毎日見ている女性が俺の後ろをついてくる。そう、グランツェである。


「なんでついてきてるの?」

「昨日任せなさいって言ったわよね。」

 たしかに言ってたけど、何するつもりだ?

どうせ聞いたって言ってくれるはずもないか、、、


とりあえず俺は釘を刺すことにしておいた。


「恥ずかしいからじっとしといてね。」

「ローランには何もしないわよ。おほほほ。」

やる気満々じゃねぇか、、、


「はぁ、、はいはい。」


そうして俺はグランツェの同行に許可をした。というか、どうせ拒否したってついてくるんだろうけど、、


 エールの家に着いてベルを鳴らした。すぐにエールは出てきてくれた。


「こんにちは。」

「こんにちは。」


エールと挨拶を交わしていると後ろからグランツェが割り込んできた。


「こんにちは。ローランの母のグランツェです。2日ぶりですね。ローランの調子を見にきました。」

「はぁ、、わかりました。とりあえず上がってください。」


そうして俺たち2人を上げてからほんの数分でレーネが来た。


「こっ、こんにちは。お邪魔します、、」

「こんにちは。とりあえず上がってください。」

「はっ、はい。」


 レーネが上がってきてリビングまでくるとビックリした表情でグランツェを見た。


「えっ?ローランママ、、あっ、こんにちは。」

「こんにちはレーネちゃん。今日はローランの様子を見に来たの。この子毎日勉強してるくせにテストの点があんまりっていうじゃない、、それでね。」


おい、そこのグランツェさん。息子を無闇に傷つけるのはやめようね。それにテストの点は別に悪くはないよ?


「なるほどです。それではローランのことよろしくお願いします。」

「はい。任されました。」


勝手に任すな!それに勝手に任されるな!俺は自由で平等な主義者だ。俺は誰のものでもない!


そんなことを考えていたがエールの「今日は実践形式で行います。」という一声で俺は一応授業モードに切り替えた。


「場所はどこでするの?」

そう最初に口を出したのはグランツェだった。

 俺とレーネよりもやる気あるんじゃないの?


「町を離れた場所に広い運動施設がありますからそこで行おうと思います。」

「わかりました。」

「それでは今から行くとします。」


そうして町を出て20分くらいすると広い運動施設が現れた。

 ちなみに場所は俺が少しだけ破壊した山のちょうど反対側。


「スッゲー。ここってIMGの半分くらいはあるよなー。」

そう思っているとどうやら口に出していたみたいだ。

 咄嗟に周りを見たが誰も俺の独り言には気づかなかったみたいだ。

 やらかしたかと思ったわー。


施設に入ってから5分くらい歩くと小アリーナ見たいな場所が現れた。


「ここで実力を測ります。まずはレーネさん、準備をしてください。」


エールがそう言うとレーネは準備をし始めたがその間にグランツェは割り込んでいった。

 マジで余計なことはしないでくれよ、、


「エールさん、、もう少しだけレーネちゃんに優しい言い方してあげられませんかね?」

「私は普通に言っているつもりですが、、」

「いえ、そう言うことではなく、人には人の性格があると思うんです。〜〜....」


 グランツェそう言い始めて昨日の俺と全く同じことを言った。

 もうそれ検証済みだぞ。結果は失敗だ。


 そうしてグランツェは全く俺と同じ道を辿り徒労に終わった。だが少しだけ活路が見えた。


「その話、昨日もローラン君に言われました。」

「えっ?ローランが!」

「はい、何かまずいことでもありましたか?」

「ちょっと、、エールさん。ローランにそこを指摘されるのは相当だと思います。」


俺って最近グランツェにめっちゃこき使われて、しかも今なんか息子をかなり過小評価してるんですけど?

 もう少し俺を労ってくれてもよくないですかー!


「こんなニブいローランでさえわかるんですよ。」

そうだよ。俺でもわかるんだよ、、ってニブいは余計だ。


「レーネちゃんはあなたのそういうド直球な態度に怯えているんです。もう少し理解してください。」


グランツェさん抑えて抑えて、、貴女もド直球ですよ。


「はぁ、、ですが、、」

そう意見を言い始めようとしたエールにグランツェは追い討ちをかけた。


「ですが、、じゃない!あなたは子ども相手にそんなキツイ言い方をするんですか!あなたが子どもの頃はそんな言い方をされたんですか?違うでしょう。」

「、、、!」


そうグランツェが言うと何かから目を覚ましたようにエールは自分のしていたことを、グランツェと俺に指摘されたことを理解した。


その後にエールは準備をし終えているレーネの所へ向かった。


「レーネさん、、いえ、レーネちゃん。昨日はキツイ言い方をしてしまってすいませんでした。次からは気をつけます。」

「あっ、、はい、、いえっ、、はい、、。」


どっちなんだよ笑笑、、


そうしてなんとか問題を(グランツェが)解決してレーネの実践形式のテストが始まった。

 ちなみにルールはどちらかが戦闘不能になるか、リングから相手を出させるかだそうだ。この施設には幾千幾万もの魔法陣があり、それで作られた結界によってどれだけ傷をつけられようとも結界の外に出ると元の体に戻るそうだ。

 

 魔法ってなんでもありだな、、、てか使用料高そうだな、、


 なんてことを考えていると試合が始まっていた。

レーネが先制攻撃を仕掛けたみたいだ。


「大地よ我等に生命の恵みを!」

 

 そうレーネが詠唱すると地面から木が出てきて、数本の木がエールに向かって行った。


「甘いっ!大地よ我等に生命の恵みを」


そう言ってエールはレーネと全く同じ魔法で対処してみせた。木の魔法ってかっこいいな、、人が使うの見てるとそう見えるとか?


「出でよ火よ!」


またもレーネが仕掛けた。今度は火属性魔法の短文詠唱だった。

 出した火をレーネとエールが出した木につけて一気に燃やした。


「短文詠唱ですか。すごいですね。ですが、水よ飲み込め!」


そう言ってエールは水の中級魔法を発動させた。俺はこれをウォーターハザードと名付けよう!

 どうでもいいか、、、


見てる限りでは互角のように見えなくもないが、実際は全然レーネの方が下なんだよなー。


 どうでもいいことばかり考えていると今度はエールから仕掛けに行った。


「今度は私からいかせてもらいます。大地よ熱と混ざりて地面を揺らせ!」


そう詠唱すると、レーネの地面の色がだんだんと赤くなってレーネはそこを飛び退いた。その後すぐに、そこにマグマが出来上がった。


へぇ〜!面白いじゃん!


「まだまだ行きますよ。雷よ氷と混ざりて数を増やせ!」


次は雷を出した周りに氷を発生させて光の反射で何本もの雷を生み出した。本物は一本だけど、、


 それを見たレーネの行動は回避。だが回避した先には既にエールが詠唱を済ませていた。


「これで終わりです。」


そう言って風魔法をレーネにぶつけてリング外へ吹き飛ばした。


 見事な魔法の使い方だな。参考になる。



そうしてエールはレーネの下へ行き彼女を運んできた。

 そうして目を覚ますとレーネに先程の試合のアドバイスと評価を下した。


「レーネちゃんは最後の回避の判断、あれが少し悪い手のように思えます。雷は一本しかなかったのであれはそこまで脅威ではありません。あそこで冷静に判断して次の魔法に備えられるともっと良いでしょう。それと、最初の木魔法からの火魔法はとてもいい攻撃でした。」


そうエールが言うと、昨日までは怯えていたレーネも少し嬉しそうに返事をした。



「それでは次にローラン君、始めましょう。」

「はい。」


俺の番か、、2人とも詠唱してたし俺も詠唱するか、、それに魔法対決だったから刀も使わないでいいだろう。

 そういえば、2人ともさっきツエを使ってたな、、どうしよう、俺持ってないんだけど、、


 そう考えていると先程まで隣に座っていたグランツェが質問をした。


「ねぇエールさん。」

「何でしょう?」

「ローランが刀を使っても、、?」


そう言うとエールは少し驚いた表情を見せた後、「刀ですね、わかりました。」と言った。


純粋な魔法勝負だと思ってた、、


「お母さん、魔法勝負じゃないの?」

「エールさんも良いって言うんだし使っちゃいなさいよ。」

「はぁ、、、全く、、」


 そうして俺は亜空間から刀を取り出して準備をした。


「亜空間魔法はいつ見ても驚きますね。」

「それはありがとうございます。」


 そう言った後にスタートの合図がなった。

 先手をもらって負けるもの嫌だし後手に回るとしよう。


「来ないのですか?それでは私から行きますよ。」

そう言って詠唱を始めた。それじゃあ俺も詠唱しますか、、と考えていたらグランツェが手を抜いたら殺す。見たいな目の飛ばし方をしてきたので諦めて全力を出す事にした。


 余計なことを考えているとエールは先程のレーネに使った雷と氷の合わせ技を使ってきた。


「はぁ、、、めんどくさい。」

そう言いながら、俺は感電しないために土魔法を刀に纏わせて、風魔法で刀を動かして飛んできた雷を全て切った。



「嘘っ!何今の剣の速さ!それに無詠唱!」

「剣の速さは魔法ですよ。無詠唱は事実ですが、、」


そう言うとエールは俺に本気を出す気になったようだ。正直ある程度してから負けるのが良かったのだが、、、


 レーネとエールの問題を解決してくれたグランツェには感謝してる。だが、今は1番邪魔されている。なんたることか!



 そうして本気を出した彼女は超短文詠唱で上級魔法と亜上級魔法を連発してきた。


 うっわ!ガチでやる気じゃん。


 俺は魔法を避けるために隠密を使った。するとエールはリング上の全体に薄く風魔法を放った。


「そこですかっ!」

 そうして居場所を見つけたエールは俺にまたも魔法を放ってきた。

(隠密は対策済みですか、、、)


 無駄に隠密を使っても魔力が尽きるだけなので俺は隠密を解いた。


「もう隠密はしないのですか?」

「リスクとリターンが釣り合ってませんので。」

「良い判断です。」


 そう言ってエールはまた魔法を連発してきた。

 コイツの魔力は無尽蔵かよ、、と考えてしまうくらい連発してきていた。


とりあえず、作戦を立てるために「鑑定」しますか、、


 そうして俺はエールを鑑定した。




ステータス  lv.47  エール

体力   291+C

持久力  216+C

敏捷   173+D

耐久   139+E

魔力   536+B

状態耐性 148+E

知能   394+C


スキル「上級魔法」「亜上級魔法」「魔力伝達A」「魔力操作C」「ひらめきB」「魔道の極みB」


「魔道の極み」…魔法発動時に一定確率で魔力を必要としなくなる。E5%.D10%、、、、A 25%.S.35%



 なんだよこの超魔法特化は!全然魔法が止む気配がないと思ったらそう言うことか!



 仕方ない。こっちから仕掛けるとするか。


「ようやく近づいてきましたね。」

「早く終わらせたいので、、、」


 そう言ってダッシュで近づいていく俺に足止め系統の魔法と攻撃系統の魔法を折り込んできた。


 チッ、、厄介だな、、、

そう思って俺は下がった。


「来ないのですか?こっちからは打たせ続けてもらいます。」


 エールがそういった途端、突如俺はエールの背後に現れてエールの背中を触った。


「今のが本当の殺し合いだったら死んでますね。僕の勝ちでいいですか?」

そう言うと、エールは負けを認めてくれた。


 その後すぐに、グランツェが俺に駆け寄ってきて抱きしめた。

「すごいわ。ローラン!やっぱりあなたはなんでもできるのね。」

「や、やめてよお母さん。恥ずかしい。」


 そうしている横でレーネは俺に質問してきた。

「さっきのどうやってやったの?」

「ちょっと話長くなるけどいい?」

「うん。聞きたい。」


そう言われたので、全てを話す事にした。


「まず、俺は初めに刀を取り出した。この地域で刀を使う人なんてそうそういないから何かあるんじゃないかと思わせることができる。そうでしょ。」

そうエールに聞くと「たしかに何かあるんじゃないかと疑いました。」と言った。


「その後に会えて刀で雷を全て切り落としたように見せかけた。先生みたいに実力が高い人になるとああいうのを普通に斬り落とす人はいますからね。そこであえて僕は魔法で防いだと言った。けど、先生はあれが剣術なんじゃないかと思ったと思います。無詠唱が使える人相手だと、先生みたいにしっかりしている人は実践でああいうことを口にされると疑ってしまいますからね。」


そう言うとまたもエールは俺に同意した。


「その後に近づかれたら速度で負けると悟った先生は上級魔法で近づかせないようにした。その時に俺はあるものを集めながら戦っていました。」


 そう言うと先生はそれは何かと尋ねてきた。


「それはこれです。」

「え?透明の石?」

「はい。石です。」


そう言うと次はレーネが疑問を書いてくれた。

「なんで石を戦闘中に集めてたの?」

「決め手に必須だったからだよ。最後に僕が下がった時あったでしょ?」

「うん。」

「あれはこの石なんだ。」

「石だったの?」

「うん、石だよ。」


そうして俺は説明の続きを話し始めた。


「上級魔法の連発をしていた先生はそれに気づかなかった。そして、これを集め終わった後、俺は先生に接近し始めた。」

「まさかそれまで待ってたんですか!」

「はい。」


「そして、俺は先生に近づくともっと激化すると考えました。案の定先生はかなりの魔法を打ってきました。そこで俺はこの石を使って先生を欺きました。」


その続きを言おうとしたらグランツェが俺の話の続きを言い始めた。


「それを風魔法でガラスみたいに上手いこと固定して、自分がエールさんの後ろを取るタイミングでそれを自分の後ろに作って、エールさんの後ろにジャンプ。ジャンプする瞬間だけ映ってその後は隠密。それと同時にエールさんの魔法でたった砂煙の中に逃げたように見せかけるためにそのガラスを奥に飛ばす。」


今言ってくれた通り全部正解なんだが、たまには俺にもカッコつけさせて欲しいものだ。

モブとてカッコつけたいものなんだ!


「正解お母さん!そして後ろに引いたと勘違いした先生の背後を取って終わり。って感じです。」


説明し終えた俺は先生の方を見ると少し呆けていた。


「まさか、9歳の子に負けるなんて、、、」

まぁそう思うわな、、、


 そう思っているとグランツェがまた口を挟んだ。

「エールさん、そんなに落ち込むことはないわ。だってローランは生まれたときからステータスにはあまり恵まれなかったけどとても優秀だったんだもの。」

別に優秀ではないんだがな、、、


そんなことを考えているとエールは俺に評価を下した。

「まだ今のところはわかりませんが、実践の方は私から教えられることはないかもしれませんね。」


そうエールは言った。


その後、魔法の練習や体力強化訓練をして授業が終わったのちに、俺とグランツェはレーネを家まで送った。


「いつもありがとう。」

「そんなに気にしなくてもいいよ。」

そう言って俺は帰ろうとした時にレーネに止められた。


「なに?」

「今日のローラン、とってもカッコよかった。それじゃ!」

そう言ってレーネは家に入っていった。


 その後振り返ったおれの前にとてもニヤニヤしてるグランツェがいた。


「お母さん何か用でもあるの?」

「いいえ〜。なにもないわ〜。」

「なんだよ、その言い方は。」

「別に〜。普通でしょ〜。」


そう言われ、ずっと俺の横でニヤニヤしているグランツェと一緒に家まで帰った。


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