第30話

「ねぇ、悠斗くん」


 私は夕飯を食べながら悠斗くんの名前を口にして読んだ。

 

「ん? 何?」


 私は今日の出来事、篠原くんに私達が付き合っていることを話した時に、一つ疑問に思ったことを悠斗くんに聞いてみることにした。


「私と悠斗くんって、お似合いのカップルに見えないのかな?」

「ど、どうしてそんな事聞くの?」

「今日篠原くんに私達が付き合ってることを言っても信じてくれなかったでしょ? だから私達お似合いじゃないのかなって不安になっちゃって」

「あー、それはね」


 悠斗くんの不安そうな表情は少し和らいだ。


「小春が可愛すぎて俺なんかが付き合えるわけないと思ってたからだよ」

「私が? 可愛いの?」

「うん。可愛いよ。俺にはもったいないくらいね」

「ぎゃ、逆じゃなくて? 私に悠斗くんはもったいないんじゃないの?」


 私が悠斗くんに勿体ないくらい可愛いわけがない。むしろ私には悠斗くんがもったいないくらいカッコいいと思ってる。本当に私なんかに悠斗くんの彼女が務まるのかな? って毎晩布団に入るたびに思う。


「そんなわけないじゃん。可愛くて料理も凄く上手で優しい小春は、俺にはもったいないよ」

「悠斗くんだってカッコいいし料理上手だし優しいじゃん」


 悠斗くんが作ってくれるお弁当はすごく美味しいし、クリスマスにプレゼントをくれたり、転びそうになる私を助けてくれたり、急にお家に押し寄せて同棲してくれないかって言っても快くオッケーしてくれたし、初めて会った時からカッコよくて好きになっていた。そして席が隣同士になって、近くで悠斗くんを見ているうちに大好きになっていた。


「そう? そう言ってくれると嬉しいよ。それに、他人からお似合いの恋人同士に見られなくても俺は小春と居られるならそれで幸せだよ」

「わ、私もすごーく幸せだよ! 悠斗くんと一緒に居られるだけで幸せなの!」


 私は悠斗くんに私と居るだけで幸せ、という嬉しすぎる言葉をもらってついはしゃいでしまった。


「だから誰かからそう言われても気にする必要なんてないんだよ」

「そうだね。悠斗くんの言う通りだ!」


 悠斗くんは優しく微笑むと、机に並べている肉じゃがを箸で掴み口へ運んだ。

 

「美味しい!」

「ありがとう」


 悠斗くんは私の手料理を食べるたびに美味しいって言ってくれる。それに私はありがとうって返す。

 もし悠斗くんと出会っていなければ。今頃、家で私一人寂しくご飯を食べていたと思う。

 ずっとこの幸せが続いてほしい。

 高校を卒業したらなるべく早く悠斗くんと結婚したい。そして今よりも賑やかな家庭を築きたい。

 仕事から帰って来た悠斗くんを玄関でお帰りって出迎えて、美味しいご飯を用意して、子供たちと一緒に楽しい会話をしながら食べて、土日は家族全員でどこかにお出かけして~。

 そんな物凄く楽しくて幸せな想像をしながら、私も肉じゃがを一口食べる。

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