時間はあっという間に過ぎていく

第18話

「あけましておめでとう! 悠斗くん」

「ああ、おめでとう」

 

 楽しいクリスマスが終わったと思えば、直ぐに年越し。元日だ。

 つい昨日クリスマスを過ごした感覚だ。時間はあっという間に過ぎていってしまう。

 

「じゃあ初詣に行こうか」

「うん!」


 年が明けて直ぐに行ってもよかったのだが、小春が眠そうな顔をしていたので、今日行くことにした。

 それに、年明け直ぐに行くと人込みも凄いからな。

 時刻はもうすぐ十一時になる。

 今日は気温も低く、風も強いので、俺も小春も結構な厚着だ。

 俺たちが向かっている神社は、俺の家から一番近くの神社で、毎年物凄い数の人が押し寄せる。

 

「わー、今年も凄い人だね」

「そうだね。でももう慣れたな」


 毎年欠かさずに初詣には来ている。この光景は見慣れた。


「じゃあまずは手水舎に行こうか」


 手水舎で手と口を清め、お昼にもかかわらずお参りを待つ長蛇の列に並ぶ。

 これだけ人が居れば知り合いに会ってもなんら不思議ではない。

 もし誰かと会って、何故小春と俺が二人でいるのかと聞かれたら、たまたまさっき会って一緒に居るだけということにしよう。

 

「長いねぇ」

「そうだね。でもまだ短い方だよ」


 長蛇の列に並んで既に十分が経った。年明け直ぐに行くと十分待っても全くと言っていいほど進んだという自覚がない。だけど今回はもう賽銭箱が見える位置にまで進んでいる。

 

「うぅ~。寒い~」


 小春はそう言って俺にくっついて来た。

 

「か、風強くて寒いから、くっついても良い?」


 小春は可愛らしく上目遣いで聞いてきた。

 俺の答えは勿論イエス。小春の良い匂いが俺の鼻孔をくすぐる。

 それから少し経ってようやく俺たちの順番が回って来た。

 俺と小春は二礼、二拍手をして胸の前で手を合わせ、願い事を心の中で言った。数十秒願いを心の中で言った後、一礼してその場から離れる。


「悠斗くん、おみくじ引きに行こうよ!」


 小春はおみくじがある場所を指さす。

 おみくじにはあまり人は並んでいない。


「分かった。行こうか」


 すんなりとおみくじを引く。

 

「ねぇ! 悠斗くん! 私大吉だったよ!」


 嬉しそうにおみくじを見せながら結果を言う小春は物凄く可愛い。

 何時も可愛いんだけどね。


「悠斗くんはどうだった?」

「俺も小春と一緒で大吉だったよ」


 去年は小春と恋人になれて小春と同棲まですることになって、俺からしたらこれまで以上に嬉しいことはないことが起こった。

 十二月の出来事とは言え、去年は去年で変わりは無い。だから今年の運は絶望的にないと思っていた。

 大吉が出たくらいでそんなことを言う理由は、俺が今まで生きて来て初めて引いた大吉だからだ。毎年欠かさずにおみくじは引くが、大吉はこの一度しか引いたことがない。


「お揃いだね!」


 小春は満面の笑みで「おみくじ掛けに行こうよ!」と言った。


「ちょっと待って小春」

「え? なぁに?」

「良い結果のおみくじは自分で持っておくんだよ。おみくじ掛けをするのは悪い結果だった時なんだ」

「そうなの? じゃあ持っておこうかな! ねぇねぇ悠斗くん。手、繋ご?」


 そう言って小春は手を差し伸べてきた。

 何度も繋いだことのある小さくて綺麗な手だが、今でも繋ぐ時は緊張する。

 クリスマスイヴの夜だって、小春が寝ているとはいえ心臓がありえないほどバクバクしていた。

 もし小春が起きていたらどうしようと、その日は一晩寝れなかった。 

 今でも小春とのキスの感触は鮮明に覚えている。小春に抱き着いた感触も。

 初めて抱きしめ合った小春の体は、物凄く柔らかく、小さかった。

 

「悠斗くん?」

「あ、ごめん。勿論良いよ」


 俺は小春の手を優しく握った。

 俺の握っている小さな手は少し力を入れて握ってしまえば折れてしまうのではないかと思う。

 初詣を終えた俺たちは二人並んで家に帰る。


「小春は初詣毎年行ってるのか?」

「毎年は行ってないよ。四年前にお父さんと行ったのが最後かな? だから今年は悠斗くんと初詣に行けて凄く嬉しいな」

「そうなんだ。俺も一人で行くことが多かったから小春と一緒に行けて嬉しいよ」

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