裏切りお姫様はハッピーエンドをお望みです!~初恋と二度目の恋と初恋と~

御都米ライハ

prologue

prologue 日記(1月10日/3月9日)

 ――これは手記だ。私という人間の、嘘と傷だらけの心を書き記すための。 




 女の子なら誰だってお姫様に憧れたことがあると思う。いや、もしかしたらない女の子もいるかもしれない。でもまぁ、そこはそれ、流してもらいたいのだけど。

 とはいえ、少なくとも私はそんな夢見がちな女の子だった。

 大きなお城に綺麗なドレス。そして毎日が素敵の連続で楽しい日々。傍らには素敵な王子様がいて――こんな表現は恥ずかしいけど――愛を囁き合う。

 今となっては馬鹿馬鹿しい妄想だけど、物語のお姫様は当時の私にとっては紛うことなく憧れだった。

 お姫様が出てくる物語は往々にしてハッピーエンドで終わるもので、幸せに暮らしているお姫様が突然悪い魔女に連れ去られてピンチに陥ると、颯爽と白馬に乗った王子様が現れてお姫様を助け出してくれる。何処までも完全無欠のハッピーエンド。文句のつけようがないくらい幸福な結末。

 だけど、そんな拍手喝采の物語を前にして私はこんなことを思ったことがある。

 お姫様が王子様を裏切ったら、どうなるんだろうって。

 イケメンで、頭も良くて、運動が出来る完全無欠な王子様。恋に夢見がちな女の子を虜にする幻想まみれの王子様。

 普通だったら裏切るはずがない。そんなことは有り得ない。

 でも、もし仮に憧れが詰まった素敵な王子様をお姫様が裏切ったら、物語は裏切らない時と同じようにハッピーエンドになるんだろうか。

 いつまで経っても答えはでない。だから私は実践することにした。

 成功するかなんて分からない。失敗するかなんて分からない。未来なんて誰にもわかりゃしない。だったら、答えを得たいなら、自分の手やってみるしかない。

 この手記に書き遺すのは、そんな私の――裏切り者のお姫様が有り得ざるハッピーエンドを導くまでの物語だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る