なんだ!? この作品はっ

※先に断っておきますが、面白い作品です。

まずあらすじの主人公の行動からして、読者の理解から遠い。
一文一文からして明確な日本語であるはずなのに、主人公の思考がまったく分からない。

だが意味不明すぎて興味が惹かれるのも確かで、ついページを開いてしまった。
しかしやはり読んでみても主人公の行動は何から何まで意味不明。
自分はゲーム中では殺すのが嫌いだと独白しつつ軽い感じでデスノート的ボタン一つで殺害。
その都度借金が重なり、それが自分の死につながるはずなのだ。
なのに、自身の行状をあらためたり自己保全のため努力するわけではない。自己犠牲の勧善懲悪や破滅願望があるわけでもない。大した目的もなく大量殺戮しつつ、「死にたくない」などと嘆く。
完全にサイコのそれである。

なのに妙にテンポが良く、読ませる文章をしているのだ。

そんな風に読者置いてけぼりで、物語の整合性とか感情移入とかそっちのけで、破滅に向かって進撃していくさまはある種痛快ではある。

その様はレースゲームで思い切り逆走したらなんかイベントあるのかというひねくれたプレイスタイルにも似ている。

途中のアプリの応用は(納得できるかはともかくとして)「そういう手があったか」と感心してしまうものもあったり、こんな支離滅裂な生き方をしつつ死を恐れていた少年の末路だけは、一応落ち着くべきところに落着したと言えるだろう。

たしかに粗い部分は多いですが、個人的には半端に体裁を整えた作品よりかはこういうZ級映画のごときハチャメチャな方が好きです。
今後ともこの感性と勢いとチャレンジ精神はぜひとも大切にしてほしいと思える挑戦作です。