第15話 主張する事故の態様が違ってる

 その夜、早速相手の女性(Bとする)から通報された保険会社の担当者から、連絡が入った。


「事故状況の確認をして、過失割合を決定したい。つきましては都合の良い日のお時間は?……」と。

 しかし姉の提示した複数の日時は何れもキャンセルされ、結局、姉が加入している保険会社の応接室に一同が会したのは事故から三日も経った日の午後3時だった。

 日にちが伸びた理由はBとBが加入している保険会社の担当者が会えなくて、事故状況が把握できなかったのだと言う。


 それでもようやく、会うことができて、話しを聞けたのは昨夜の18時過ぎ、自宅で待っていてやっと会えたと。

 しかし本人は来ていない。保険会社は「全権を任されていますので」ということで2名。 こちらは保険担当者1名。姉、 義兄、私の4人だ。

 

 姉が言う事故の態様。


 その日、午後6時13分頃、 姉は、義兄の車両トヨタアクアで、片側2車線ある道路の左側を時速50キロ前後で軽トラックの30メートル後を追随して走行中のところ、右後方から接近してきた赤いスポーツカーが追い抜きざま、姉の車の右側に接触した。


 それによってアクアは、右側ボディーの一部に窪み、及び接触痕が生じると共に、右サイドミラーを前方に押し倒されて破壊、右フロントフェンダーが車両筐体から引き剥がされるという、被害を受けた。

 過失割合は、姉0対B100


 Bが言う事故の態様。


 同日、午後6時10分を過ぎた頃、2車線ある道路の右車線を走っていたところ、道路中央、グリーンベルトの切れ目を利用して右折する車がいて、その後に3台の車が停止していた。

 そのためBは減速したが、停止直前、前から2台目の車が左に出たので、自分も行けると思いハンドルを左に切った。

 すると後方から高速で走行してきた姉の車が、自分の車を避けきれず接触してきた。

 よって後方確認が充分でなかったとして、過失割合は自分が60対姉が40。


 全く事実と違う、相手が主張する事故状況を聞いて、我々は開いた口が閉まらない。


 修理工場が見積もりのために写した、事故直後とは異なる写真を並べて、どちらの主張が正しいとか、いくら言い合っても埒があかない。

 結局保険屋さんは、その日は姉の主張を持ち帰り、「Bに伝えます」という事になった。


 そして次の日、Bの言葉を伝えると保険担当者の言うことには、「自分の方には後方確認が充分ではなかったことに加えて、直進車妨害の部分もあるので、7対3まで譲歩しても良い。だがそちらがそれ以上主張するなら、裁判に持ち込む」といっていますが。というものだった。


 此処に至って、姉はようやく自分の善意が全く機能していないことに気がついて、ぶち切れてしまったのだ。  

「ええ。結構ですよ。やりましょう」


17話につづく。

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