第27話 俺はハンター

 ハンター……その名の通り狩りをする職業である。狩りと言っても猪や熊などの動物を相手にするものばかりではない。狩りをする主な相手は魔物である。見た目は動物のような物や、ヒト型の物、大きさも小さな子供から城のように巨大な魔物など様々だ。怪物やモンスターと呼ばれたりもするが、その強さは動物とは比べ物にならない。


 魔物は動物とは違い、力も強く、知能がある。魔物によっては魔法も使う。魔物がなぜ生まれるのかは分かっておらず、突然山や森、洞窟などに現れる。放っておけば、人々の食糧となる動物達や果物などを根こそぎ駄目にしてしまう。最悪の場合近くの町や村を襲いだすのだ。


 そこで活躍するのがハンターだ。場合によっては騎士団が出てくることもあるが、騎士団は主に他国との戦争、つまり人と戦うときに動き出す。ハンターは魔物専門というわけである。魔物の討伐の報酬として多額の金を手にすることができるのだ。主に貴族になる実力が無かった者や、実力はあるが素行や家柄により貴族になれなかった者がハンターとなっている。


 ハンターはハンターズギルドによって管理されている。ギルドでハンターとして登録し、実力にあったクエストを受けることができる。クエストはFランクからSランクに分けられておりSランクに近づくにつれ魔物は協力になり報酬も莫大になる。現状この国には三人のSランクハンターがいるらしい。


 ということをエミリーさんが説明してくれた。確かにクレアには打ってつけかもしれない。クレアの性格を考えれば接客業などできるわけがないし、誰かに指図されて働くことも無理だろう。その点ハンターは強さが求められる。今は怪我をしているが、万全ならばきっと魔物ぐらい討伐できるだろう。


 それに昔騎士団にいたエミリーさんもいる。三人でパーティーを組めば効率よくお金を稼げるし、俺も魔物相手だったら本気で戦える。ボルタを倒す力を付ける為にもハンターになる必要があると思った。


「なぁ、クレア。どう思う?」


「おもしろそうじゃない。でもやるからにはSランクを目指すわよ。ハンターでも貴族でもトップを取ってやるわ」


 クレアはやる気に満ち溢れているようだ。


「はは。それでこそクレアだな。エミリーさん、決まりました。ハンターやりましょう」


「分かったわ。じゃあ早速ハンターズギルドに行くわよ。お金はすぐにでも欲しいからね」


 ハンターズギルドは平民街にあるのでさほど時間もかからず着いた。真っ赤な建物なので一際目に付く。中に入ると多くのハンターがいた。食堂で飯や酒を飲み食いして騒いでいるハンター、クエストの貼っている掲示板を眺めているハンター、受付の職員をナンパしているハンターなど老若男女のハンターがそこにいた。自由な服装、髪型をしており様々な武器を装備している。貴族のような窮屈な畏まる格好をした者などおらず皆楽しそうにしている。


「とりあえず、受付にいって登録しましょう」


 エミリーさんがそう言うので、五つある受付の内空いていた一番左の受付に向かった。


 ん? なんか視線を感じるな。周りを見渡すとハンター達が皆俺たちの方を見ている。


「おい、あの制服レクト学院じゃないのか?」


「なんで貴族がこんな所にいるんだよ」


「ハンターを冷やかしに来たのか」


「なんだあの男、美女二人を引き連れやがって。うらやましい」


 変なのも混ざっているがほとんどが貴族への妬みのようなものだ。やはり貴族は平民からするとあまりよく思われていないらしい。少しずつギルド内のざわつきが大きくなると、奥から一人の男が俺達に向かってきた。


 その男は少し長めの黒髪をなびかせて、筋骨隆々の大柄な体つきをして大剣を背中に差していた。正直髪型と体のバランスがよくない。


「ようこそ、わがギルドへ。私はこのギルドのマスター、マーシャルです。貴族の生徒様が一体どういったご用件ですかな。社会科見学はお断りさせてもらってますが」


 騒いでいたハンター達は静まり、マーシャルは見え透いた愛想笑いを浮かべ話しかけてきた。それにエミリーが答えた。


「いえいえ。私達はハンターになりたくてギルドにきたのです。なんせ貴族を剥奪されたので仕事が無いのですよ。もしかして元貴族はハンターになれないルールとかありました?」


 それを聞くとマーシャルは突然大声で笑い始めた。それにつられ黙って聞いていたハンター達も笑い始めた。


「がはは、貴族を剥奪されたって何やらかしたんだよ。まぁ理由なんてどうでもいい。俺達ハンターは来る者は拒まずだ。ようこそ自由の世界へ」


 さっきまでの愛想笑いとは違い、曇りなく笑っているのが分かる。


 俺達はマーシャルに案内されるままハンターとしての登録を済ませた。ハンターについてマーシャルからさらに詳しくランクについて説明を受けた。特に試験などはなく、皆一律にFランクからのスタートらしい。ランクには難易度によりポイントがつけられており、一定のポイントを稼ぐことにより次のランクに昇格できるようだ。クエストは一つ上のランクまで受けることができるが、難易度が上がれば危険度も増す。実力が伴わなければ命を落とすことになると真剣に話してくれた。


「理解できた? クレア」


「馬鹿にしてるのかしら。楽勝よ。じゃあ手っ取り早くお金稼ぎたいからEランクのクエスト受けましょう」


 本当に話聞いていたのかな……魔物と戦ったこともないのに、いきなり上のランクに挑むなんて。

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