お前は俺が守る!!~最強の彼女にはそんなもの必要なかったみたいです~

咲希斗

第1話 俺はクレアが好きなんだ

「レイン、早くしなさいよ。まったくとろいんだから」


「待ってくれよ。足早いんだよ、クレアは」


「急がないと遅れるじゃない。初日から遅刻とかなったらあんたのせいだからね」


 俺の名前はレイン。今年で15歳になる。この口の悪い女は、俺の父がつかえている貴族の娘であるクレア=フォントネルである。髪は金髪で、長い髪をポニーテールにしており長さは腰の辺りまである。見た目も細くスラッとしており、10人が見れば10人が可愛いというくらい申し分ない。足りないとすれば胸だけか……


 しかし大きな欠点がひとつだけある。性格だ。貴族の一人娘として育てられ、すっごく甘やかされて生きてきたせいか、わがままで口も悪く、暴力的だ。俺はいつもその被害にあっている。


 それなのに俺はなぜかクレアのことが気になってしょうがないのだ。


 俺は生まれた時から、フォントネル家の御屋敷の離れで住んでいる。同じ年に生まれたクレアとは同じ敷地内で育ってきた。いわゆる幼なじみというものであろう。


 そして今日から剣魔法大学にクレアと共に通うこととなったのだ。


 レクト剣魔法学院。名の通り剣術や魔術を学ぶ学校だ。普通は名のある貴族しかはいれない名門大学だが俺は特別にクレアの父のコネによりこの学校に入学することになった。なんとなく、クレアの父親には気に入られてる気がする。もしかしたら普段からクレアに苛められている俺に悪いと思ってのことかもしれないが。


「でもなんであんたまで入学してくるのよ。ほんとパパはレインに甘いんだから。甘やかしてもレインの為にならないわ」


 たしかに。甘やかされまくった結果がクレアだからそうだろうね。


「おい早くしなさい。入学式に間に合わないよ」


 学校の門の前で教師だろうか、早く来いと手招きしている。


「もう、レインのせいで初日からバタバタだわ。なんでもっと走れないのかしら」


「はいはい、すいませんね。足遅くて…」


 っていうか、クレアがもっと早く起きてくればよかったんだよ。ギリギリまで寝てたくせに。


「なんか文句ありそうな顔ね」


「そ、そんなわけないじゃないか。ほら急ぐぞ」


「わかってるわよ」


 入学式の会場へ入るとすでに他の入学生は揃っているようだった。一番前のちょうど空いている二つの席に並んで座った。すると後ろの方でヒソヒソと話し声が聞こえる。


「ねぇねぇ、あの人がフォントネル家のご令嬢?」


「きっとそうだよ。いやぁ、噂に違わず美しい」


 隣でクレアは俺に向けて得意気な顔をしている。


「隣の男性は誰かしら。お付きの人?」


「お付きの人がこの学校入れる訳ないじゃない。きっと名のある貴族の方よ。なかなかのイケメンじゃない。でも一緒に来たということは許嫁じゃない?」


 許嫁という言葉を聞いた瞬間、クレアは勢いよく席を立ち後ろを振り返る。


「誰かしら今許嫁とかいったのは。この方は只の召し使いよ。私の父の優しさで入学できただけよ」


 さすがは貴族。いつもは怒鳴り散らすところなのに、さすがに初対面では我慢するのね。クレアの手は握りこぶしになっており、プルプルしていた。


「ご、ごめんなさい。何も知らないのに勝手なことをいいました」


「いえいえ、分かってくださればいいの」


 クレアはそう言うと、静かに席に座った。しかし、フォントネル家ってほんと凄いんだな。他の入学生も貴族だろうにペコペコしていたし。


「ご、ごほん。そろそろ式を始めてもよろしいかしら」


 もしかして教師も何も言えないのかな……


 入学式は滞りなく進んだ。1時間程色々な人の話を聞き最後の人が話終わると、その後入学生は3つのクラスに分けられた。入学生は100人程いたので約30人ずつか。クラスは最初はランダムだと言っていた。試験の結果によりその後またクラスは分けられるらしい。俺のクラス? もちろんクレアも一緒です。たぶんクレア父の差し金だろう。見張ってろという意味かな。


 入学生はそれぞれの教室へ移動した。皆キビキビ動く中、俺とクレアはのんびり教室へ移動した。まぁのんびりしてたのはクレアなんだが。


 教室に入るとすでに皆席についていた。クレアは前の方の席のようだ。俺は後ろの方だったので、移動していたら目の前にペンが落ちてきた。だれか落としたのかなと思い、拾おうと屈むと頭の上からさまざまなペンが降ってきた。


「いやぁ、ごめんごめん。筆箱落としちゃったよ。拾ってくれないかい?  召し使いさん。得意だろ」


 いかにもお坊ちゃんと言う青年がニヤニヤしながら言ってくる。


 さすがにイラッっとしたが、貴族と揉めてもろくなことはない。何よりもフォントネル家には迷惑かけたくない。大人しくペンを拾っていると、後ろに誰か立っていた。誰だと思い振り返ると拳を振り上げるクレアが見えた。


「やっ、やめ」


 俺が静止する前に、拳はお坊ちゃんの顔にめり込んでいた。クレアが拳を振り抜くとお坊ちゃんは教室の端まで飛ばされた。


 あーあ、気の毒に……


「私の召し使いを使おうなんて100年早いのよ。他のみんなもいいこと、こいつは私の召し使いなんだから勝手に使ったら承知しないわよ」


 みんな驚きと恐怖で何も言えなくなっている。


 いやいやそもそも召し使いじゃないけどな。……けどなんかスッキリしたな。


「クレア、ありがっああぁぁぁー」


 礼を言おうとしたら髪を引っ張られてクレアの席まで連れていかれた。そして隣の席の女の子に笑顔で話しかける。


「ねぇあなた、こいつと席変わってあげて。私の近くにいないと苛められちゃうみたいだから」


「は、はい。喜んで」


 その子は怯えるようにいそいそと席を移動した。


 なんかゴメンね。


 でも席がクレアの隣になり嬉しいと感じる自分がいた。うん、こんなのも口が悪くて暴力的な幼なじみだけど、俺はやっぱりクレアが好きなんだ!!


 クレアはお互い小さかった時言っていた。


「私は、私より強い男としか結婚しないわ」


 俺はその言葉を鮮明に覚えている。俺はこの学校で腕を磨きクレアを倒して告白する。


「お前が好きだ。結婚してくれ。お前は俺が守る」


 いつかこの台詞をクレアに聞かせてやるんだ!

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