悪化した過換気症候群

 それは突然のことでした。


 高校生になってから、私は一人カラオケにはまりました。

 それが私のストレス発散法の一つでした。

 家から自転車で15分くらいのところにお店があり、土日に一人で行くことがありました。

 その日、特に変わったことなどはありませんでした。

 今まで通り、普通に自転車で、いつものお店に行きました。

 部屋に入る前からなんとなく苦しい感じはありました。そして部屋に入ると苦しくて苦しくて、全く息ができませんでした。

 私は電話で母を呼びました。そしてそのままタクシーで病院に運ばれました。


 病院についてから、私は血液ガス検査というものをされました。

 血液中の酸素や二酸化炭素の量を調べるものです。

 苦しくて辛いのに、太ももの付け根から採血されました。痛かったです。

 そして、検査の結果、二酸化炭素が少ない状態でした。過換気症候群である証です。


 発作が収まってから私は病院の先生に「薬が欲しいです」といいました。

 しかし、過換気症候群に効く特効薬のようなものはありませんでした。プラシーボ的なものしかないとのことで、何ももらえませんでした。


 それから私は一週間、学校を休みました。

 この時、またちょっとした限界が来ていました。

 嫌われ者といる毎日に疲れていました。

 過換気の発作が起きたのは多分そのせいです。

 発作が起きたことで私はどっと疲れてしまいました。

 学校でまた発作が起きるんじゃないかと不安でもありました。

 月曜日から金曜日まで休んで、次の月曜日、学校に行きました。


 カラオケで発作が起きてから約一ヵ月くらいは家でも学校でも少しだけ苦しくなることがありました。

 でも、何とか耐えられました。

 発作が起きる回数は減って、嫌われ者のことにも慣れて、私の高校生活はまた落ち着いたものになっていきました。


 今思うと、カラオケで発作が起きたあの時、母に電話してしまったことが悔しいです。

 あの時、私は母に頼るしかなかった。

 大嫌いな人に頼るしかなかった自分が悔しいです。

 今発作が起きても絶対母になんか電話しないのに。

「頼りたくないのに頼るしかない」

 普通ならこんなことで悩むことなんてないのに。

 素直に頼りたいと思える親であってほしかった。

 私はただ、

「弱みを見せてしまった」「不本意だ」「借りを作ってしまった」

 そんな感情しか抱けなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る