第25話 キッチン

 なぜか3℃くらい涼しく感じられる。


 思わず凛が瞬の方に体を寄せる。


 左手で強く抱きしめてあげる。


 一瞬だけ動きが止まる2人。


 納得したかのように凛が離れていき、館の方に進む。


 一歩一歩辺りを警戒しながら、それでも目立たないように腰を低くして近づいていく。


 15メートル程の距離がかなり遠く感じられた。


 そして、館の裏側部分に取りついた。


 2人は会話なしで動いていた。


 全て瞬の判断に任せて凛はそれに付いていく、それが事前の打合せだった。


 窓に近づく。


 瞬がそこから中を覗き込む。


 どうやらそこはリビングだったらしい。


 ただ、今は家具類を含めて何も残されていない。


 次の窓にたどり着いた。


 同じように中を覗き込むがやはり全て撤去されているようだ。


 裏口にたどり着く。


 少し迷ってからドアノブに手をかける。


 思いがけず扉が開いた。


 素早く中に入る2人。


 魔女の館の中は庭よりもさらに温度が低く感じられた。


 瞬は手振りで凛に動画撮影を要求し、凛はそれに気付いてスマホで魔女の館の内部を撮影し始める。


 

 入った所はキッチンのあたりだったらしい。


 動画を撮影している凛の手が小刻みに震えている。


 瞬は抱きしめてあげたい気持ちに駆られたが今は頑張ってもらうしかない。


 キッチン内にも調理器具類は撤去されておりがらんとした空間が広がっている。


 そのままリビングへと向かう。


 広いリビングにスマートフォンのライトが当たる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る