八話 悪役令嬢は生きている

 八話 悪役令嬢は生きている

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「いや、本当にここまでの騒ぎになるとはね」


「ご満足いただけたようで何より」


「このまま行くとあっさりと勝ててしまいそうで、少し物足りない気もしますがね」


「何事も楽に越したことはありません。それに王国の後も、次がありますから」


「それにしても、本物のケレス嬢がここまで……王子と勢力を二分するほどとは。正直これは予想外だったんじゃないですか?」


「……私、影武者の前は専属の教師をしておりましたので」


「これも手のひらの上と……いやー、怖い怖い。イリス嬢、私はあなたが何者なのか微塵も理解できません。ただ、この良き縁に感謝を」


「なにを、私はただの平凡な人間ですよ」


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 ーイリスの日記-


 ケレス……

 私はあなたをどこかで、結局のところキャラクターだとそう思っていた。

 いや、ケレスだけじゃない。

 世界そのものを、創作の世界に過ぎないと見下していた。


 でも、あなたは違うのね。

 いいえ、変わったんでしょうね。


 ケレスがそこまでの影響力を持って、王子と争えるほどになっていたなんて思いもしなかった。

 主人公が動く以上結果は何も変わらない。

 王子と違って主人公は手段を択ばない、有効な手であればためらうことはない。


 でも、結果なんてどうでもいい。

 なんの意味もないのだから。


 あなたが変わったと、平凡な人に為ったというのなら、きっと楽しんでくれると思うわ。


 私たちは、死という結果の決まった道の過程を歩いている。

 どう歩こうと結果は変わらない。

 そして死という結果には何の意味もない。

 一度結果を得た私は、やはりそう思う。

 もし人生に意味があるのだとしたら、それは過程に存在するのだと思う。


 ケレス、人に為ったあなたはどう思う?

 見せてほしい。


 私は……過程に意味を見出したかった。

 過程に意味などなく、結果こそがすべてだと思った私は、何の意味もない結果を得た。


 人に為ったところで逃れられない、悪役令嬢という死より限定された結果を決められたあなたは、過程に結果に何を思うの?


 キャラクターではない、ケレスという人間の存在になんの意味があると思う?


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