第12話 部員集め!


小野寺澪(おのでらみお)に兵藤恋絵(ひょうどうこえ)。改めて見ると可愛い子が2人並ぶ絵は素晴らしかった。そこに中村瑠美(なかむらるみ)さんという小動物が加わったんだ。


僕は小野寺さんの腕とお腹の隙間から教室を見渡す。結構な視線が集まってしまっていた。驚いたり、羨ましがったり、明らかに面白く無さそうにしてる人もいる。


他のクラスから来ちゃってる小野寺さん。それも注目を集める原因になっている。


実は兵藤さんと教室で何度か目が合うことがあった。僕の自意識過剰では無いと思う。あちらさんは僕のことを結構な頻度で見ているらしい。うーん、小野寺さんと一緒に絡んで来るなんて思わなかったよ。


「ダメだよ?別れても大切な人なんだからね?」


「ってことは、このヘラヘラ地味君は澪のことを振ったと?そういうこと!?」


兵藤さんの睨みがハンパない。そのままシワになって取れなくってしまうくらいに、顔で嫌悪感を表していた。


可愛い顔なのにそんなに怒ったら損だよ?とか言いたかったけれど、心の中に留めておく。


「僕と小野寺さんの昔のことだ。だから掘り下げないでくれ」


「ほーぅ?」


「は?はぁ!?北村ってこの子と付き合ってたのか!?」


三田くんが大袈裟に声を荒げるせいで、再度クラスの全員が僕に視線を集めたのがわかった。


小野寺さん、小野寺さん!こうなるのがわかっていて、なぜ僕の前に現れたの?


「そうだけど。今は関係無い話だ。僕は小野寺さんのことを悪く言いたくないし、後でゆっくりと小野寺さんに聞いてみたらいいじゃないか。とりあえず恋のキューピット部の話を・・・」


「逃げないで!」


ガツンと上げたつま先を机に掛けて、兵藤さんが威圧してくる。パンツが見えるよって言ったら殺されてしまいそうだ。


小野寺さんはぎゅっと僕を強く抱きしめてくる。さっきよりも、強く。


そんな中、少しも取り乱さない中村さんがケラケラと笑い始めた。


「えー?ウケるんだけど。別れた2人がキューピットって・・・恋人いなくて困ってる自分たちをなんとかするって話ー?」


「俺が今目の前で見せられているのは恋人同士のイチャつきではないのか?」


「わたしもそう見えるけどぉー。でも本人たちが違うって言うんだから良くない?こえっちー」


「こ、こえっちー?」


「こえっちのえっちー。パンツ見えてるゾ?」


中村さんに指摘された兵藤さんが真っ赤な顔して上げていた足を下ろしちゃった。くっ。なかなかに眼福だったのに。


「ふーん。なるほどねー。訳ありメンバー面白そう!瑠美も入れてね。人の不幸は蜜のあじー」


「ちょっと、中村さん。僕らが作ろうとしてるのは別れさせ屋とかじゃないから」


僕らが元カレ元カノだと認識してくれたからだろうか。


僕と小野寺さんが仮にカップルの形になっていたら、僕たちみたいにくっついちゃいなよーってみんなに言えるかもしれない。だが、僕らは元、なのだ。宣伝にはならないだろうし、むしろマイナスイメージがつきまとうかも?


だけど、中村さんが言いたいことはそういうことでは無いらしい。


「そだねー。でもでもー、結果的にやってることはそう変わんないと思うよ?」


「どういう意味かな?」


「まー、やってみたらわかるよ。わたしは恋のキューピット部、入るー!でも部長とか役職系はヤだからねー?軽ーくヒラでいさせて」


「俺も、入ろうかな。男子が足りないとハーレムになって悔しいから、俺も・・・!」


「ねぇ、君?ハーレムなんてあり得ないし」

と小野寺さん。


「三田っちー。ワンチャンイケるとか考えたらわたしが踏んであげよー!」

と中村さん。


「部内者になっても壁は存在する。外野は黙っててくれない?」

とトドメの兵藤さん。


「ひどしっ!!??」


中村さんのおかげで、兵藤さんの追及はとりあえず煙に巻くことができた。


だけど、この一件でクラスの人たちにまた質問攻めにあったのは言うまでも無かった。

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