偽元カノが本気を出してくる。だけど僕は普通の恋愛がしたい。

とろにか

第1話 プロローグ


『元カノ』と聞いて、みんな何を考えるだろう?


終わってしまった関係?昔、好きだった人?


うん。ポジティブに考える人もいれば、ネガティブに捉える人もいるだろう。


そうだ。この響きは、まるで自分を大人にしてしまうようなモノなのだ。


彼氏彼女の、関係があったという事実。キスまでした?セックスはした?色々な想像ができてしまう。


それが、元カノという、たった三文字だけで想像できてしまうから、凄まじい。


それだけ、誰かと付き合ったという事実は、衝撃的で、人間関係を変えて、自分のことを見る周りの目も変えてしまうのだ。


おかしいだろ?それ。


ああ、何がおかしいのかは、語らないで、置いておく。今は、


「それで、北村くん?わたしのこと、元カノにしてくれますか?」


いや。あのさ。


意味がわからない。


僕は高校の屋上に呼び出されて、待ってたのがめちゃくちゃ可愛い子で、告白されると期待してて、『わたしのこと』までは、壮絶に期待してて、文脈おかしいけど、その後に『好きだったら付き合ってください』までを期待しちゃったのに!!


どうして『元カノ』なんだよっ!!


「あのさ、小野寺さん。元カノっていうのは、どういうこと?僕たち、違うクラスだし、友達ですら無いよね?」


「友達でも、幼馴染でも、血が繋がってるわけでもないです」


「血が繋がってたら、それはそれでびっくりだよ!」


「それでも、わたしはあなたの、元カノになりたい。ダメですか?」


「元カノの意味、わかってる?」


「はい。男女がお付き合い後、なんらかのトラブルが発生して、お別れした後の、女性を指す言葉ですね」


うん。まぁ、僕も大体『元カノ』っていう言葉の認識は、そんな感じだと思ってるけどさ。


「その意味で、僕が君を元カノと呼ぶには、色々と経験が足りないだろう」


「それでは、どうすればわたしのことを、元カノと呼んでくれますか?」


あ、やばい。否定しようとしたけど、逆効果だった。相手に、小野寺さんに交渉されてしまっている。


さらに、小野寺さんは畳み掛けてくる。


「元カノになるためには、最低でもキスはしないとダメなような・・・気がします。北村くんも、そう思いませんか?」


「そうだね。手を繋ぐだけじゃ、付き合ったって、言えないね?間接キスはどう?」


僕は何を小野寺さんに聞いているのか。真面目に間接キスの話までしてしまった。


「間接キスって、全然思い出に残らないですよね」


「あ、じゃあ、男性と間接キス、経験あるんだ?」


「なんでわたしの経験の話になってるんですか?わたしは気にしないって意味で言ったんですよ?」


いや、今経験の話、してたじゃん?


「じゃあ、話をまとめると、世間一般では知らないけど、僕と小野寺さんの中では、キス以上経験したら付き合ったと言えるし、元カノと呼べる。ここまではOK?」


「はい。わたしの認識も、そんな感じです」


「そこでだ。僕みたいな人とキスしたことあると言われて、小野寺さんは、嫌じゃないの?」


「え?今、じゃあキスしようって流れじゃ無いんですか?」


「え?」


「え?」


どうしよう。小野寺さんについていけない。

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