第8話

『航、どうしたの?今日は元気無いのね』


母さんは優しかった。

いつも陽だまりのような笑顔で僕を見つめる。


『今度お家に帰ったら、ハンバーグにしよっか!それに卵焼きも焼いてあげる!』


長い入院生活の苦を感じさせてはくれない。

来る度に増える管が痛々しくて、いつも母さんから目を逸らしていた俺を、俺は一生悔やみ恨み続けるのだろうと、あの瞬間まで思っていたんだ。


「潮崎航です」


直ぐに分かったよ、だって母さん瞬きもしないで俺の事見てんだもん。一瞬バレたかと思って焦ったじゃん。

窓側の1番後ろの席・・・間違いない、母さんだ。生きてる・・・若い、制服着てるし。

えーっと、取り敢えず話かけないと。


「あの・・・えっと・・・か、三船さん?」


「ふへっ!あ!何!?」


わぁっ!なんだよビビった・・・

口から心臓出るかと思ったじゃん!

って、どうしよう。あっ!


教科書それ見てもいい?」


「へぇ、木なんだ。bookとかいったかな?」


確か父さんの部屋にしまってあったの見た事あるな、まだデータにもしてないのかよ・・・

全自動車が迎えに来ないから遅刻するし、第一さ徒歩って何よ。案内ドローンより昔は地図アプリって奴なのか・・・何でも自身でって事か・・・

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