雨男晴女

酒本料磨

第1話 はじめに

 災害あるところ、雨男あり。なぜか決まって雨男なのである。雨女はいない。

都市部への人口流入 、交通機関の発達にともない移動が容易になり、雨男の偏在にともなう局地的なゲリラ豪雨が多発している。地球温暖化の所為にされつつある未曾有の天候不順も、世界人口の増加がもたらした、絶対数としての雨男の増加と偏在によるものである。

 この人災に対応すべく安倍第二次内閣において、密かに気象庁内に設置されたのが「減災・防災研究所」通称「雨男管理局」である。そのふざけた響きとは裏腹に、バルクとしての雨男の分布とその変化を観測予測する高度な情報処理技術を有し、また、個人としての雨男を扱う必要性から、厳重なセキュリティ保持体制を敷くエリート集団により構成された超重要部局である。

 従来、観測予測による警報を関係各所に通達することによる災害の軽減が、この部局の目的だった。しかし、個別の雨男の雨男度合いに関するデータの集積と、災害発生確率と単位面積当たりのトータル雨男指数との強い相関関係の把握がもたらした、災害の未然回避への活動は、新たな業務として法的、人的整備が始まっていた。また、従来推測の域を出ていなかった晴れ女の存在が、絶対数は少ないものの、統計的に証明されたこともより効果的な災害軽減、回避の切り札として期待され、晴れ女個人の特定と晴れ女度合いの計測方法の検討が始まっていた。蛇足ではあるが、晴れ男の存在については、科学的アプローチによる証明は未だなされていない

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