第29話気が利かない

「ユナ、言ってくれたら、よかったのに」

 子供を見送り店内に入る。

 返答がないユナの顔をファンリーはじっとみる。

「・・・お金がないので」

「金払ってないのか、小姓?従卒ではないのか?奴隷か?」

 にやついた顔でファルークはファンリーをみる。

 ずぼしなだけに腹がたつ。少しでも自由に使える金わたしておけばよかった。気が利かないな。

 ファルークにあたり気味に低い声で声をかける。

「おい、お前はここの領主の息子じゃねえのか、なんとかできないのか?」

 ファンリーはファルークの肩をつよくつかんだ。ファルークはその手をはらいのける。

「ふん。俺は領主の息子だがなんの権限もない。むしろいなくなればうまくいくのにって思ってる奴のほうが多い。そんな俺になにができるっていうんだ」

「事情はしらないが権限がないにしろ、ルセには孤児院ぐらいあるだろう」

「あるさ、あいつらが孤児ならばな方法はいくらでもある。あいつらは孤児ではない」

「孤児ではないないのか?」

「ああ、明日の朝迎えにきてやる。胸くそわるいものを見せてやるよ」

 言い放ちファルークはそのまま店をでていった。

 明日の朝が俺も少し冷静になれるな。

 あたってしまった事をファンリーは反省した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る