自慢の奥方 (茅)

遠野 彬

第1話 俺は玉の輿に乗った


いなか町の四男として生まれて……

学校の成績も振るわず、これといった資格も技術も持ち合わせていない私が……

この町一番の名家の跡取りとして婿入りする事になった。


その家のお嬢様との縁談話を持ってきたのは、世話好きのトメさんだった。

「この町で生きていくには十分な家柄のお嬢様だ。 文句を言ったら承知しないよ! 」

高圧的に話すトメさんは、半ば強制的に話を薦めてきた。


お相手のお嬢様とお見合いという形で会ったのは、トメさんから

「余程好きに成れない女性で無ければ話を進める! 」という確約をさせられた後だった。


そのお嬢様と会って分かった事は……

彼女は病弱で体力が無い事。 そして私は彼女をサポートする……という名目で、仕事をしなくても一生食べていける程の財産が、その家には有る事だった。

肝心の彼女の器量や容姿についてはベールに包まれたままで、確認する事が出来なかった。

「相手の顔も見れないで、何が見合いなのか! 」と言いたいのは山々だったが、ここまで来ると、相当に深い事情があるのだと思わされた。


「トメさん、彼女の名前は何と言うのさ?」

「ああ……茅(かや)だよ。 鈴木茅! 

見ての通り多少病弱だが、あれだけの名家だ、断る事は許さないよ! 」

トメさんがこれ程 高圧的に話すのには訳がある。

トメさんは母のお姉さんで、私の伯母に当たる。 そして、私が40才を越えても独り身でいるもんだから、母から頼まれた……というところだ。

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