5話 その料理、殺意につき。


 今日はいい天気だ。雲一つなく、気温も程よい眠くなるような感じだった。

 こういう日は日向ぼっこをしてゆっくりお昼寝したい。


「平和だな~」


 家の庭に寝転がり一人つぶやく。やっぱ、ここはいいところだ。改めてそう思えるような日だった。すると、


「ねーディア―、ちょっと付き合ってくんない?」


「何をだ?」


ったく....人の気持ちいお昼寝を邪魔しやがって....まあ、この家のリピアを払ってくれたのはベルだし、嫌いではないのであまり無下にもできない。


「私ね、料理を練習したいの」


「なんだ....熱でもあるんじゃねえか?病院ならここから歩いて....」


「私は真面目に相談してるの!いつもあなた一人に作らせてて、悪いと思ってるから

 私も作れるようになりたいなって...」


「ほう、教えてやるのはいいが、この俺の料理テクは一朝一夕じゃ習得できんぞ」


「それでいいよ!だってあれでしょ、料理って基礎ができれば後は応用でしょ!」


「料理に限らずなんでも基礎ができたら応用だろ...」


 相変わらずこいつはこの世のことを何にも知らないらしい。始まる前からこれだけは言える。絶対に上手くいかない。






「あーもう!だ・か・らまだ塩をいれるタイミングじゃねえ!っておい、人が言って

 るそばからやるな!」


「いちいちうるさいわね!そんな細かい事はいいでしょ!食べれればいいの!」


「お前、それでも教えを乞うてる立場か?あと、食べれればいいとは言うが、そもそ

 もそのレベルにすら達してないんだよ。大人しく話を聞け!」


「あんた、そんなんだからモテないのよ。あーあ、かわいそう」


「俺がモテないだと?そいつは聞き捨てならねえぞ。いいだろう俺のモテエピソード

 を教えてやろう。あれは3年前...」


「あ!大変!料理が焦げちゃった....あんたが下らない話をしてるせいよ!」


「俺の所為って言うのかよ!大体、お前が人にモテないとかって馬鹿にするからだ

 ろ!」


「うっ、それは...悪かったと思ってるわよ...でも、そんなんで怒るとか子供じゃある 

 まいし。情けないわね」


 こいつ、息を吐くように俺を馬鹿にしやがる...しょうがないな。普段ならリスクが大きすぎるから使わない切り札がある。今はそいつを切らざるを得ないらしい。意を決して解き放つ。


「相変わらずお前も心が小さいな。その胸のようにな」


「あ、あんた....そ、それ...」


 おお効いてる効いてるぅ!やはり流石の破壊力だ。これでベルも.....ってあれ?なんかベルの背中にどす黒いオーラが見えるんですけど...これってまずいんじゃ...


「ディア―くん?」


「ハ、ハイナンデショウ」


「なにか言い残すことは?」


「そんなテンプレな展開、今じゃ流行ら...」


「とりあえず死ねーー!」


 その後、ベルの愛情(殺意)たっぷりの料理を死ぬまで食べさせられたのは言うまでもない。





「この通りだ。俺、いやこの私めをどうかベル様のご慈悲の下にお許しください」


「ま、まあそこまで言うなら許してやらないこともないわ」


「へっ、ちょろいぜ。これが俗に言うチョロインという奴か」


「あなた、全部聞こえてるわよ」


「ふん、聞こえるように言ってんだよ」


「死にたいなら何度でもヤッてあげるけど」


 俺とベルの口論はその後、2時間ほど続くのであった....長すぎるだろ!









 







 


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