第6話 終焉

「翼!ごはん行こう!」

講義が終わり翼に話しかける

しかし、その日は翼はずっと浮かない顔をしていて

僕の誘いにも

「ごめん、今日はちょっと・・・」

暗い表情を浮かべて言いづらそうに答える

「そうか・・・わかったよ!」

本当はどうしたのか聞きたかった

けど、翼の顔はそれをさせてはくれないほど

どんよりと落ちていた

そして僕も帰りに聞けばいいと思ってしまった

そうして大学が終わりいつものように

彼女のバイト先に

いつも彼女が出てくる時間に合わせて待っていた

しかし、その日はなかなか出てくることなく

かなりの時間がたった

そしてやっとでてきた彼女は僕をみてもいつものように

笑顔を返すことなく

「聡・・・ごめん、今日はまっすぐ帰るね」

「え?どうしたの?」

「うん、ちょっとね・・・」

「体調でも悪いの?」

「うん・・・ちょっと・・・」

翼は歯切れ悪くその場をはなれたそうだった

その様子に僕は

「そうか、わかった!じゃ、また今度ね」

明るく装うことしかできなかった

「ごめんね・・・」

翼は暗い顔でその場を後にした

その姿をただ見送ることしかできなかった

その後その姿を幾度どなく見る

そして徐々に姿を見ることすら無くなった

二人の間の歯車は完全にかみ合うことなく

もう離れる寸前だった

それだけはしたくないと

僕を遠ざけていた彼女に強引に時間を作ってもらい

話をする時間をもらった

それはあの時は当たり前だった彼女のバイト終わり

近くの喫茶店で話すことになった

先に席に着く僕

翼は約30分ほどして入ってくる

その姿に手を上げて合図する

すると翼は硬い表情のままこちらに向かってくる

それに

「おつかれ」

と声をかける

「ありがと」

そういって席に着く

注文を済ませて向かい合って座る二人

沈黙が流れる

前は心地よく手を触れ合わせていた時間

しかし、今はただただ沈黙だった

「・・・・」

「・・・・」

彼女の前に飲み物が運ばれる

そのタイミングで

「あのさ、翼最近避けてるよね?」

「・・・・」

「もしかして、なんか怒らせることしたかな?」

顔を横に振る

「じゃ・・・嫌いになった?」

「・・・・・」

無言

「それならそういってもらったほうが・・・・」

言いかけたとき

「嫌いなんかじゃない!」

「え?ならどうして!?」

その言葉を聞いてすぐに彼女の目から涙が落ちる

「もう・・・わからないの・・・」

涙ながらに話す

「私には彼氏がいる・・・何もしてくれないけど彼氏は彼氏・・・」

言葉を詰まらす

「でも、今は聡が彼氏みたいでしかも聡の方がやさしいしどんどん好きになる・・・」

その言葉に心が浮くしかし

「でもね、彼氏がいるのに違う人を好きになってその人に当たり前のように甘えて当たり前のようにハグとかキスして・・・どっちつかずなのに・・・」

正直それが何が悪いかわからなかっただから

「僕のこと彼氏にするばいいじゃん!」

声が大きくなる

しかし

「彼氏がいるのに他の人を好きになる・・・そんな私じゃ聡と一緒にいれないよ!!」

翼も声が大きくなる

「私、気づいたの聡のことどんどん好きになって甘えていってそしてそのあと、どんどん自分じゃ聡に合わないって・・・・私が私を嫌いになるって・・・」

涙が頬を伝いテーブルに流れ落ちている

それにどうやって言葉を返せばいいのか・・・

安易に

「それでも俺はいい」とか「俺は気にしないから」

そんな言葉が浮かんだがどれも翼の決意に対して

それに見合った言葉に思えなかった

そんな風に言葉を迷ってると

「ごめんね、もういくね」

言葉を言い終える前に翼は立ち上がり歩き出す

「まって!!」

彼女は伝票を持ちそのまま会計していく

それを追って彼女を引き止める

するとその手を払って

そのまま駅の改札に向かっていく

「待ってて!!」

それでも振り返ることなく彼女は改札を抜けていった

その姿を見ることすらできず

ちからなくその場に立ち尽くした

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