第3話:とっても長いプロローグその3

「俺の願いは彼女の名前とシナリオの結末を知ることだ」

 大事なことなので2回言う。


「そ、そんな願いでいいのですか?」


「そんな願いとはなんだ。俺にとっては大事な願いなんだぞ!」

 俺は少しムッとした感じで言った。


「まあ、大丈夫ですけど、てっきりこのゲーム世界への転生や転移を希望されるかと」


「ああ、今流行りだな。けど、俺は今の生活に不満は無いわけではないけど、こんなの何処の世界でも多かれ少なかれあるだろ。それに俺は両親を見捨てて異世界に行けるほど薄情じゃないぞ」


(それにまだやりたいツミゲーもあるしな)


「でも、やはり居たのか転移とか転生は」


「ええ、いらっしゃいましたね。叶えられる願いは転生と転移を一人づつなので叶えたのはお二人様ですが、最初の方は"異世界でチーレム転生をさせてくれ"と願われましたよ」


 思いの外、どストレートな願いだった。


「でも、異世界への転生は結構大変なんですよ」


「って、あるのか異世界!!」


 俺にはそれが驚きだった。 JRPG好きな俺には夢が広がる話である。


「ええありますよ。それで、転生の為、色々な世界の神様に問い合わせて転生をお願いしたのですが、中々受け入れてもらえず大変でしたよ」


「そ、そうなのか」


 ラノベや漫画みたいに簡単に行くものじゃないのだな。なんか神様なら簡単にパッパやっているイメージが強いからな。


「貴方の国でも、難民、移民申請はハードルはかなり高いものですので、ご理解頂けると思いますが、他所の異物に対して慎重になるのは、国も世界でも一緒ですよ」


 シロは疲れたように言った。


 何気に苦労しているのだな、仕事で無茶振りをよくされる自分と重ね同情するな。


「じゃあ、結局そのチーレム希望はどうなったんだ」


「何処も難色を示していたのですが、友神ゆうじんのたっくんに相談したところ、快く引き受けて下さいましたよ」


「たっくん?」


 どんな神様だそれ……


「ああ、すみません。たっくんと言うのは私がつけた愛称ですよ。タコみたいな異世界の神様なので。本名はニャル…」

「ああーー!!今日も良い天気だな!!」


 正気がピンチになそうな名前を俺は全力渾身でスルーした。 つか、居たのかよ架空の神様じゃないのかよ!と心の中で突っ込む。


「たっくんにお任せして無事、異世界転生されたとのことです」

 いや、それ絶対無事じゃねーから


 解っててならこいつかなりタチが悪い神様だな。 解らなければひでえ天然だな。


「この前、チーレムさんから手紙が来たのですけど見ます」


 そう言ってシロは何処から出したのか、手紙を見せて来た。


 正直見るのは怖かったが、好奇心に負けた俺は手紙を受け取りその内容を見た。



 ただ一言


  テケリ・リ

  テケリ・リ



 ……紫の何だか分からない汁で、人間の根源こんげんたる精神をえぐるような冒涜的ぼうとくてきな文字がそこには並んでいた。


 ああ、チーレムよ……いのち輝くデザインとなってしまったのか……

 今はただチーレムが哀れにしか思わなかった。


「て、転移の願いはどうなったんだ」


 俺は話題を変えることにした。

 このままチーレムの話をしていると、正気がピンチで、狂気がうーにゃーしてしまいそうな気がしたからだ。


 実際、頭が重い。


「ああ、ロリコンさんのことですか? 」


 再び、身も蓋もない、どストレートな表現である。


「おいおい、いくら何でもひどい呼び方だな。余程そいつが気にくわなかったのか?」


「いえ、紳士な御方でしたよ。ロリコンと言うのは自己申告でしたので」


 思いがけない回答で草生える。


「この案件も大変だったんじゃないか」


 先ほどのチーレムの時の転生への苦労話を聞いて、こちらも大変かと思いきや。


「転移に関してはそれほど大変ではないので、大丈夫ですよ」


 あっさりした感じで答えてきた。


「転移は、藤也さんの感覚で言うと海外に短期の滞在みたいなものですから、結構何とかなるものなんですよ」


 つまり、転生は《移民》で転移は《ビザ取りの滞在》というところか……

 そう理解する。


「ちなみにロリコン紳士さんが行かれた世界はこんな所です」


 そう言うとスクリーンのような映像が現れた。 そこには褐色肌の10歳から13、14歳くらいの複数の美少女たちが薄着の際どい着衣で水遊びだろうか、遊んでいる光景が写し出された。


 肌にぴったりと衣類が張り付き未成熟なラインが浮かび上がっていた。


 そして、映像が切り替わり南国の王国のような光景が写し出される。


 街並みのイメージとしてはフィリピンのセブ島が近いと思った。

 街を歩く人たちが写し出され多数の商店や施設など、活気のある感じがとてもした。


 だが、一つ映像に違和感があることがあったので聞いてみる。


「なあ、映像写っている人達だけど、幼女と少女しか居なくないか?」


 そう、街並みに多数の人達が映されたが全員が少女だった。


「ええ、彼女達は特殊な種族で身体の成長が藤也さんの人間でいうところの15歳くらいで老化が止まり。 そして50年くらいで寿命を迎えます。そして大半は女性しか生まれないのでこういう光景になるのですよ」


 とんでもない娘たちも居たものである。異世界は広いと納得する。


「それで、ロリコン紳士だったか、そいつはこの世界に転移して上手くやっているのか?」


 チーレムの末路が頭によぎり、ロリコン紳士ももしかしてと考える。


「この住民たちの神からは、彼女たちとは上手くやっていると聞いています。住民の皆からとても感謝されていると」


「そうなのか」


 そう聞くと、俺はロリコン紳士が少し羨ましく思う。

 言っとくが俺はロリコンじゃないぞ。


 本当だぞ。


「これはこの前その神から、送ってきたお礼状と添付されていた映像です」


 またスクリーンが映り出される。


 だが、その光景は俺が思っていたのとは違っていた。

 そう、一言で言うならば……


 ロリコン紳士でかっ!!

 ちなみに大きいのはアレジャナイヨ


 周りの木や山の風景に比べてロリコン紳士のおっさんの身長が大きいのだ。


 まさにガリバー旅行記や、駆逐されそうな80m級な感じである。


 その周りには豆粒のような大きさの少女達が何とかコミュニケーションを取っていた。


 そして、ロリコン紳士は自作だろうか、クワのようなモノを片手に地面を耕していた。既に耕された箇所は他の少女達によって耕作が始められていた。


 他のシーンも映し出され、お祭りで神像の横で鎮座したロリコン紳士に祈りを捧げる少女たちにロリコン紳士は穏やかな笑顔が浮かんでいる。


 この顔…こいつ悟ってやがる。


 他にも、住民たちと上手くやっている。映像が次々と流れ幸せなスローライフが送れているのがわかる映像だった。


 まあ、YESロリータ、NOタッチな状態でほっと安心した。

 ホントウダヨ 、ウスイホンガアツクナルナンテ 、オモッテナイヨ


「でも、これだけ身長差があったら食べる物とか大丈夫なのか?」


 どう考えても彼女達の食事でロリコン紳士が満足出来そうに思えない。


「向こうの神から飲食不要、病気耐性の加護与えたとのことなので大丈夫かと」


「身長の対比は言わなかったのか……」


「最初の映像を見せながら説明はしましたが、完全に説明が終わる前に "ここに決めた!!  彼女たちは私の母になってくれるかも知れない少女たちだ!!  我がたましい重力ろりに引かれたか!!" と涎を流し、眼を血走らせて詰め寄られたのですぐに手続きを取らせていただきました」


 おい、紳士要素何処行った。


(まあ、本人が幸せならそれで良いか)


 俺はそう納得することにした。


「では、藤也さんの願いは叶えられる準備が整い次第また夢の中でお邪魔させていただきます」


「時間がかかるのか」


 てっきりすぐに分かるものかと思っていた。


「では、これにて。あ、資料用にこのパソコンとゲームをお借りして良いですか?」


「ああ、構わないよ」


「では、また後日に。失礼します」




 仰向けになった俺の目には見慣れた天井が写し出される。

 間違いなく俺の部屋だ。


「変な夢だったな……」


 今日は早朝でミーティングがあるのを思いだし、夢のことは一先ず棚にあげ、いつもの様に会社へと慌てて向かった。


 そしていつもの生活が始まる。


 後日の休日にガネメモが久しぶりにしたくなり、部屋を探したが、ノートパソコンとガネメモのソフトは部屋から無くなっていた。

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