出発

 今日も元気印のツインテール。もう従者じゃないけど、従者の制服を着て、外に飛び出した。そう、また遅刻したのだ。

 まさかこんな大事な日まで寝坊するだなんて……。自分に呆れてしまう。

 階段を大急ぎで駆け下り、下に着いた。城の前に超特急で滑り込む。見よ!! この華麗なブーツさばきを!! 

「おっとっと……」 

 滑りすぎた。思いっきり床に転ぶ。

 が、なんとか起き上がってあたしは城の前に行った。

「遅いってば、レウェリエ……」

 今日は緩く大きな三つ編みにした雷姫が、あたしの頭をコツン、と叩く。見ると、アネラとソフィアの姫カット二人組はポニテにしていた。気合いの入り方が違うな……。

「マリア」 

 アネラは、優し気な瞳でマリアを見つめる。マリアは泣きそうな顔で、母であるアネラをじっと見つめていた。

「お母様……」

「運命には逆らえない。あたしが仮に帰ってこなかったら、エステラはあなたのものになるのよ。どんな時でも神の教えを訊いて。強く生きて」

 マリアを抱きしめるアネラ。

 その言葉にはほんの少しの名残惜しさ、少しの残酷さ、そしてめいっぱいの優しさ、愛がこもっていた。あたしも、泣きそうになってしまう。母って、偉大なんだな……。その優しさは、母にしか出せない……。

「本当にいいんですか? 王」

 クロエもまた、見送りに来ていた。切なげな表情を浮かべて、アネラに確認をしている。

「まだ、マリアも政治ができる年じゃないでしょう? あなたが王としての権力を握るの。マリアの役も、よろしくね」

「王はフェルナンデスの方しか似合わないし、マリア様の母親はアネラ様でないと務まりませんよ……」

 泣き声でアネラ様と握手するクロエ。その手は固く握られていた。

 この戦いにおいて、エステラの運命はぐるりと変わるだろう。だから責任重大。しっかりと、与えられた使命をこなさなくてはならないのだ。

 眩しい朝の日差し——。いつまでも、この日差しを浴びることができますように。

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