第25話 甲魔馬の馬車。

アインを連れてダンジョンに篭ってた俺達は地上へと戻って、そのままリカルド商会に向かった。

リカルド商会に行くとネレイムさんがジェシーと一緒に降りて来た。


「サルナスの甲魔馬は私が選んでおいたわ!コッチにいらっしゃい!」


ジェシーは俺を店の裏手の方に連れて行く。店の裏手に居たのは赤黒い色をした巨大な甲魔馬だった。確か普通の甲魔馬は黒一色の筈だよな…。しかも普通の甲魔馬より一回りデカいぞ…。


「どう?大きいでしょ?群れのヌシだったみたい。農家にはあまり大きいと大飯食らいって敬遠されてしまうから人気が無いの。でもサルナスが使うなら大きい方が良いでしょ?」


「確かに俺の今の稼ぎなら食費は大丈夫だし、大きければ魔獣に襲われ難いし、襲って来れば反撃するだろうからな。しかも馬力も有るからウチのガッツを乗せても大丈夫だろう」


「この子ならガッツが10体居ても大丈夫よ!!」


「しかし、珍しい色だな。赤い甲魔馬が居るとは聞いた事が無いな…鑑定してみるか」



種族︰甲魔馬(赤種)


レベル:85

HP:2290/2290

MP:980/980

攻撃力:570

防御力:5450《×1.25》

回避:650

幸運:105

スキル:甲殻、身体強化Lv8、踏み付け、蹴り飛ばし、体当たり、金剛力


甲殻︰レベル上昇時、防御力+400上昇、付与 《×1.25》


金剛力︰赤種のレアスキルで金剛力を発動している間は攻撃力、防御力、回避のステータスが倍に上昇する。使用を止めた後はHPも含めたステータスが1/2に下降する。下降時間は能力発動時間の十倍。



中々のスキルとステータスの持ち主である。金剛力は赤種のレアスキルなのか…コレは凄い。ラッキー程では無いにしろ防御力はかなりの物だ。


「どうやら赤種と言うレアな甲魔馬の様だ。スキルも中々良いのを持ってる」


「金剛力でしょ?きっとサルナスの役に立つと思って選んだのよ」


「ん?ちょっと待て。ジェシーも鑑定使えたのか??」


その俺の問いにネレイムさんは苦笑し、ヤレヤレといった感じでジェシーは答える。


「あのね…私だって『リカルド』の名を持つ商人なんだから当然でしょ。ウチの家系は皆、鑑定持ちなのよ」


「ナルホド…流石は天下のリカルド商会の娘だな」


「もちろん人の鑑定はしないわよ。勝手に見るのは失礼ですからね」


ジェシーが鑑定持ちと言う事で有れば、今まで以上に信頼度は増すな。


「それで馬車の方だが…どこにあるんだい?」


「ああ、そこのヤツですぞ。調整も終わって綺麗にして置きましたので」


「…コレって新品じゃ無いのか??」


俺は新品の馬車だとばかり思ってた置いてある馬車が、まさかネレイムさんが言ってた中古だとは気が付かなかった。


「いやいや、もう十年以上使ってた物ですよ。元から出来がしっかりしてたのと、大事に使ってましたのでね。綺麗なのは昨日調整を終えてから清掃魔法を掛けたので…」


「本当に良いのか?こんな良い馬車を…」


「ええ、どうぞどうぞ。ウチではもう少し大きく無いと使い勝手が悪いので…」


「なるほど。確かに少し小さめだな…では遠慮無く…大切に使わせて貰います」


「ありがとう御座います。長く使って頂けたら嬉しいです」


「ねぇ!サルナス!甲魔馬の名前は何にするの?!」


「そうだな…バリキとか…」


「…前から思ってたけど、サルナスってハッキリ言ってセンスゼロね…」


「そうかな?お前はどうだ?バリキって?」


と、当の甲魔馬に聞いてみたが無反応だから駄目なのか??


「そうねぇ…ブラッドとかどう?」


「どうだ?ブラッドは?」


するとぶんぶん首を縦に振ってる…気に入った様な気がする…。


「ほら!気に入ってるみたいよ!」


「じゃあブラッドで。宜しくな、ブラッド」


するとヒヒン!と鳴いた。鳴き声は馬っぽいんだな。つか、俺のセンスはゼロなのか…。


「それでは馬車用の馬具を装着させます。少しお待ちを」


「コレって特注品だよね?追加払うよ」


「いえいえ、この子を引き受けて下さるのだけでもウチとすれば願ったり叶ったりですので…引き取り手が中々居ないと維持費も馬鹿になりませんから」


なるほど…生き物だけあって維持費の問題は有るだろうからな。売れ残りが一番キツイわな。


「サルナス!こっちに来て!見せたい物があるの!」


ジェシーは俺の手を引っ張り店の奥に連れて行く。店の奥にかなり古いと思われる発掘品のような物が大量に置かれていた。

その中からジェシーが持ち出して来たのは、古びたガントレットだった。


「見たくれはちょっと古ぼけてるけど、面白いスキルの付与があるガントレットよ」


招福のガントレット︰装着した者に福を招くガントレット。招福の付与 《×2.0》、ガントレットへの攻撃を避ける効果。


ほう…コレは凄い…上がりにくいと言われる幸運が2倍になるのか。俺は運だけは良いから2倍になるのはかなり良い。

しかし、ガントレットへの攻撃を避ける効果ってどういう事だ?


「うむ、コレは買う事にしよう。いくらだ?」


「やっぱりそう来ると思ったわ!金貨100枚でどお?」


「良いだろう。ブラッドの紹介料と名付け料込みの値段って事でな」


「ウフフ…そう言う義理堅い所がサルナスの良い所ね。毎度ありぃ〜」


「しかし、良くこんな物見付けたな?昔から有ったのか?」


「そうみたい。詳しくはおじさ…ネレイム支店長も知らなかったわ。先代かその前の仕入れの様なの」


「じゃあ、この中にはまだまだお宝が有るかもな」


「そうかも知れないわ。その時はまた宜しくね!」


天下のリカルド商会だからとんでも無いお宝が眠っていても不思議は無いな。

しばらくジェシーの倉庫漁りに付き合った後で、馬車の用意が出来た様である。


「おお…こりゃまた立派な馬車になったな。ネレイムさん、ありがとう御座います」


「いえいえ、またお買上げ頂いた御様子で…毎度ありがとう御座います」


「専属の見立て人の腕が良いのでね…散財してしまうよ」


「それはそれは…大変で御座いますねぇ…ハッハッハ!!」


苦笑する俺は笑いながらそういったネレイムさんの思い通りに掌の上だと思ったよ。

その掌の上にいるもう一人のジェシーは満足気だけどな。やっぱりリカルド商会の一族は凄いわ…。



馬車を受け取った俺はギルドの選抜隊が決まるまでの3日間をダンジョンで過ごした。

少しでもアインのスキルを上げるのと俺達のレベルアップも兼てである。

俺達のレベルはほとんど上がらなかったが、アインはまた10レベルが上がっていた。



(アイン)

種族︰人造ミスリルゴーレム(特殊個体)


レベル:10→20

HP:1230/1230

MP:1580/1580

攻撃力:500→510

防御力:449→459

回避:69→79

幸運:44→54

スキル:身交わし、認識阻害、自動修復、雷電、毒、麻痺、魔眼Lv2→4〔魔素砲Lv4→10〕〔弱点看破Lv4→9〕〔範囲認識Lv1→5〕〔魔術解析Lv1→3〕〔魔獣解析Lv1→2〕(叡智Lv2→4 〔超高速思考〕〔分列思考〕〔予測思考〕)


相変わらずステータスの上昇はどうにもならない感じだな。

そして新しいサブスキルが出現している。


魔術解析︰魔眼で見た魔法の解析をして防御や自ら使える様に分析する。高レベル魔法はレベル依存で使用可能。


魔獣解析︰魔眼で見た魔獣の解析をする。テイムの確率が上がる。弱点看破の精度が上がる。


尚、叡智のサブスキルは俺には見えていないのだが、自分を魔獣解析したアインから聞いたものである。


超高速思考︰魔眼からの情報と【アーカイブ】からの情報を分析や解析する為の思考領域を超高速化する。


分列思考︰思考領域を分列させ、多重思考領域を展開する。


予測思考︰魔眼からの情報を元に【アーカイブ】との連結により、ある一定の予測を行う。


正直、叡智のサブスキルは何がどうなってるのかはサッパリ分からない。ただ、アインの反応速度が異常に上がっているのは感覚として理解出来る。

範囲認識のマップはエリアが大きくなっているし、魔素砲の威力が上がるのと同時に的確に相手の弱点に当てて魔獣を倒している。


壁役をやっていたのは最初だけで、今はほとんどアインに任せ切りだ。

しかも遅い動きだが無駄が無いので効率が良い。

コレならば中層でも問題は無いだろうな。


本当ならもう少し潜ってアインのスキルアップをしたい所だが、もうそろそろギルドの選抜隊が集まる頃合いだ。

俺達はそのまま地上に戻りダンジョンを後にして、新しい甲魔馬ブラッドの引く馬車で冒険者ギルドに向かった。

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