第4話 愛されるよりも愛したい

「さっすがセバスチャン……あの状況で相手の本質を見抜き、さりげなく契約しちゃうなんて、彼にしか出来ないことだわ」

 シロヤマと一緒に事の成り行きを見守っていたまりんが、心の底から感心の声を出す。

「セバスチャンは昔から、相手の心情を読み取り、自分が有利になる位置に持って行くのが得意なんだ。それがセバスチャンの戦術なんだよ」

 超美麗な死神さまがセバスチャンと契約したことで、ほっと安堵したシロヤマはそう、右隣に立ってまりんに教えた。

「けれど、本当にアレで良かったの?超美麗な死神さまって、シロヤマにとっては、かなりの好みなんでしょう?」

「うん、まーね……控えめに言って、超オレ好みだから、本当はセバスチャンに渡したくなかったけど……ってまりんちゃん、この手の話、大丈夫なの?」

 あまりにもナチュラルだったため、すんなりと返事をしてしまったシロヤマはふと気付き、まりんに尋ねる。

 意外なものに出くわしたかのような、驚きの表情をするシロヤマに、まりんはあっさりと返事をした。

「この程度なら、大丈夫」

「そっか……まぁ、相手がセバスチャンなら俺は許す。それに俺には……細谷ほそやくんと言う名の、愛おしい存在が居るしね!」

 にんまりとしながら、得意げに放ったシロヤマの言葉を耳にし、わざとらしく驚いたセバスチャンが話に乗っかった。

「おや、初耳ですね。ガクトくんに、そのような存在が居るとは」

「細谷くんとは、ビルの屋上で愛を誓い合った仲だからね!」

 ふふんと満足げに笑みを浮かべ、声たかだかに断言したシロヤマは

「ここで宣言する!俺は、細谷くんが好きだ!愛してる!!だから……」

 まりんに大鎌を預け、振り向くと両手を広げて

「さぁ!俺の胸に、飛び込んでおいで!!」

 満面の笑みを浮かべ、迎え入れる体勢で待ち構えた。

「相変わらず、気色悪いんだよ!おめェはよォ!!」

 シロヤマから見て前方から、全力疾走して来た細谷が、携えていた槍で以て怒りのツッコミを入れた。

「気色悪くて結構だ!俺は、罵られれば罵られるほど燃えるタチなんでね!!けど、感謝しろよ?俺がこうでも言わなきゃ、君はずっと日本間の外で待機してなきゃならなかったんだから。

 折角助けに来たのに、なにも出来ないどころか登場すらしないまま退散なんて、俺が君の立場だったらまっぴら御免だね」

 瞬時に出現した、自身の大鎌で以て細谷の槍を受け止めたシロヤマは、キザな笑みを浮かべてそう告げた。シロヤマなりに、細谷を気遣きづかってのことだった。

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