第51話 須崎の一時的な引き取り手として.....

雪代先輩などに誘われてから旅行に行く事になった。

俺はその事に顎に手を添えながら考えていると.....定森先生から連絡があって俺は衝撃を受けた。

定森先生に連絡をしようと思った所だったのだが.....。

その定森先生がとある女の子を引き取ったというのだ。

警察に捕まった子だという。


そこら辺は衝撃じゃないんだが.....その。

何の衝撃かといえば.....そうだな。

問題は定森先生が引き取った女の子である。


それは.....須崎だったのだ。

俺は愕然としながら電話しつつ定森先生の話を聞いていた。

定森先生は相変わらずの優しい感じで俺に話してくる。

だが.....今回は気になるな。


「定森先生.....その。.....割とマジに須崎は危ないと思うのですが.....彼女の過去を考えると.....そう言ったら駄目なのかもしれないですけど」


『.....確かにそうかもしれないですね。.....でも決めたんです。私は.....須崎さんは傷付いているって。見守りたいって。だから引き取る事にしたんです。決意したんです』


「.....何処で須崎と知り合ったんですか」


『須崎さんの事は昔から知ってました。テレビで観たんです。事件を。.....君をイジメている事も何もかもを。だけど.....今回の件で決意したんです。やっぱり須崎さんを改心出来るのは私だけかなって。私みたいな人じゃ無いと駄目かなって』


「.....ですが.....」


君の気持ちも理解しています。

今現在、本当に、です。

でも.....彼女はきっと改心出来ると思います。


彼女に寄り添う人が居なかった。

だから思うのです。

今ならって、と、定森先生は苦笑する。

俺はその言葉に、チャンス。.....そうなのかな、と思ってしまった。

考えながら俺は目の前を見る。


『私に何かする様な子じゃないですよあの子は。大丈夫。信じて下さい』


「貴方は.....本当に聖母の様ですね.....」


『.....私は聖母と言われる様な存在ではないですよ。本当にお節介なだけですよ』


「.....昔から変わらないですね。定森先生。本当に.....愛おしいです」


『私も君が好きです。でも.....君はもう幸せですから。私の事よりも.....千佳さんを支えてあげて下さいね』


俺にそんな事を言ってくれる定森先生。

そんな姿に俺は頷く。

その通りだ。

今は.....強くなければ。

千佳を守らねばいけないのだ。


「定森先生。本当に感謝しています。有難う御座います」


『私は何もしてないです。.....全て君が切り開いたのですよ。.....だから誇りに思って下さい。貴方は道を強く切り開く力があるのですからね』


「.....俺も強くないっすよ。.....でも定森先生がそう言ってくれるから。今があります。.....定森先生。貴方のお陰も絶対にありますから。貴方も誇りに思って下さい」


『そうですね。.....有難う。そう思ってみます。.....そう言ってくれた君は.....本当に誇りの生徒です』


「.....感謝です」


涙が出てきた。

俺は思いながら.....笑みを浮かべる。

そして目の前の写真立てを見る。

そこには俺と定森先生の写った写真がある。

俺はそれを見ながら.....前を見据える。


「信じてみます。.....俺。須崎と定森先生を」


『そうですね。是非とも信じて下さい。私達を。きっと大丈夫ですからね』


「.....でも本当に何かあったら言って下さい。.....心配な気持ちは拭えないです」


『そうですね。.....分かりました。その時は君の事も考えます。宜しくです』


「.....有難う御座います」


それでは失礼します、と電話を切ろうとする定森先生。

俺は、俺も失礼します、と言ってから電話を切った。

それから前をまた見据えた。

本当に心配だな.....。

この気持ちをどうしたら良いのだろうか。


コンコン


「.....夜空か」


「うん」


「.....どうぞ」


それから夜空が入って来る。

そして心配げに俺を見てくる夜空。

俺は.....その様子を見て直ぐに察した。

これは須崎の事だな、と。


「須崎.....お兄ちゃんの昔の先生が引き取ったって聞いたけど.....」


「.....そうだな。その通りだ」


「.....大丈夫なのかな。.....心配でしか無いよ」


「.....須崎は変われるって。定森先生が言ってる。だからきっと大丈夫だ。須崎は.....変われる筈だと思う。でもこれがラストチャンスだろうな」


「.....だね。これで悪い事をしたら駄目だよね」


顎に手を添える夜空。

それから考える仕草をする夜空。

俺はそれを見ながら.....窓から外を見る。

そして、まあそんな事よりコンビニ行かないか、と夜空を誘う。

そんな夜空は、うん。行こうか、と笑みを浮かべてくれた。


「今日は明日香が働いている筈だよな」


「だね。うん」


正直言ってかなり不安ではある。

だけど.....定森先生は.....チャンスを与えてほしいとそう言った。

俺はその言葉に従って.....須崎の事を思う。

悪い事するなよ、須崎、と。


「何か買う?」


「そうだなアイスとか?」


「それ良いね」


「じゃあそうすっか」


そして俺達はコンビニまで向かう為に玄関に来る。

それから玄関で靴を履く。

そうしてから.....ドアを開けた。

何だか.....新しい世界に飛び込む様なそんな感覚だ。

俺は.....思いながら.....出てからドアを閉めた。

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