第28話 修行編 Last Day ②

民衆みんしゅうみちび自由じゆう弾丸Bullet!<第壱層Mode First>」


 —— JyuBuRyuジュブリュ JyuBuジュブ


 イチの外傷はセフェクの能力によってみるみる修復されていく。イチの早かった呼吸も落ち着きを取り戻し始めたことから、おそらく内臓も同じように修復されていることが分かる。


「何が …… 起きた ……の? 」


「これがオレ達の能力だ。そしてお前が身につける能力でもある」


「イチ様、突然のご無礼をお許し下さい。すでにお体は回復されております」


「ほんとだ …… 痛みが全くない …… 」


「この世界の惟神ジンというものも知っておきたい所だがな、お前は発現できねぇんだろ?」


「うん …… 」


 —— SuZaスザッ ZaSaザサッ


惟神ジンは、オレが教えてやるよ」


 茂みから久々能智くくのちトーレが姿を現した。


「トーレ?」


「おう、あの時の小僧か」


「イチ、お前とは話の途中だったからな。それを伝えるつもりで来たが …… 。それと、そっちのガキは相変わらず口が悪いな」


「はっはー! セフェクだ。自己紹介がまだだったろう?」


「トーレだ。ジンを知りたいんだろう?」


「っは! 知っておく必要はあるな」


「状況的にお前もイチへ協力する流れか? いいぜ、にセフェク、お前にも教えてやる。」


「トーレ …… ありがとう!」


 イチはトーレへ素直に感謝を述べる。


「ふっ」


 トーレはこめかみあたりを少しいた。


「手短に説明してやる。惟神ジンは法式を朗誦ろうしょうや書術などで具現化し、力の解放を行う。法式は『壱式開錠いちしきかいじょう』と『弐式連歌にしきれんが』の二つから構成されている。自身のを開放するのが壱式開錠いちしきかいじょう。契約済みのパートナーや、惟神ジンが宿った神具しんぐなどの力を借りて開放するのが弐式連歌にしきれんがだ。弐式連歌にしきれんが壱式開錠いちしきかいじょうの後にことでしか発現出来ない。一般的にはこの二つのみが世界に教えられていて、これ以外の法式の解明は禁止されている」


「ほぅ …… 」


 うんうんと頷いているイチの横で、セフェクがわずかながら片方の口角を上げた。


「それがか」


「察しがいいな」


「え?!」


「っは! 気付くように話していたように見えたがな。何を探っている?」


「ふっ、ただの生意気なガキではないな。セフェクのいう通り、惟神ジンには一般的に伝わるの意味と、久々能智くくのち一族、及びジンタマの一部の者しか知らない解釈かいしゃくがある」


「えぇ?!」


「裏解釈では、まず壱式開錠いちしきかいじょう自体を、久々能智くくのち一族では最大の禁術としている」


「禁術ねぇ …… 」


「えぇぇ??!!!」


「イチ、いちいちうるさい! この後、理解できるようになるから騒ぐな」


「いっ …… !!!」


 ナチュラルに出てしまったのであろうトーレの言葉に、イチは最大のツッコミを押し殺した。


「言いたい事はわかった。オレも十中八九その通りだと思うぜ? 見せてみろよ。その壱式開錠いちしきかいじょうってのをよ」


「ああ、のな」


「 …… (ここでもまた常識が崩れる)」


 イチは、ことごとく崩れ去る常識の修正に再び追われた。


「 …… 」


 —— ZiZiヅィヅィ …… ZiTiTiTiヅィチチチ ……


 トーレが右腕を空にとどめると、あたりの空気がビリビリと緊張し始め、チクチクと刺激を感じる。指先から描かれる法式が美しく揺らぎながら光を帯び、円環を型取り始めた。


「こ …… これはっ! そんな …… 」


 トトが法式を目にし、思わず声を上げた。


壱式開錠いちしきかいじょう!」


 トーレのとなえと同時に、右腕を中心として法式が完成した。


「はーっはっはー! やはりな! かっ!」


 セフェクの顔は、眉も目も頬も口も釣り上がり、殺意と言わんばかりの恐ろしくも悲しげな表情へと変貌した。

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