第19話足立さんと夏休み-3-

「やっぱり迷惑だよね」


この世の終わり様な顔をして足立さんは僕に言ってるのか独り言か分からない、疑問形なのか断定なのか判断できない言葉を呟いた


どちらにしても




「違う、そういうことじゃない。なんか、上手く言えないけど僕達あんまり良くない事してるんじゃないかな」



足立さんの目が光った気がした


部屋の隅から、カップを取り出してるキッチンにいる僕へと2秒で詰め寄る人間離れした身体能力を発揮して、お互いの顔が5センチになる程に詰め寄ってきた



「どの口が言うのかなー、、雪くん」


え、今なんて?十条君じゃなくて下の名前?


咄嗟のことにフリーズする僕


その隙にポケットに手を入れられて煙草を出された


「ど、の、く、ち、が、い、う、の、か、な」


鼻先にタバコの箱をあてられ、腕を、タトゥーをなぞられ


盛大に不機嫌な声で足立さんは詰め寄ってきた


いや、もう既にこれ以上詰め寄る距離でもないのに



仰る通りで、、


か細い声で下を向いて返した


同時に、いちご飴を口に突っ込まれた


ちょっと!!!



有無を言わなさい顔で「タバコの代わりにまずこれでも代わりににして、それから言いなよ」


そう言うとそっぽを向いてベッドにもたれかかってぬいぐるみを抱きしめて体操座りをし始めた



ああ、大前提で僕はとやかく言える人間じゃないんだよなー



今更に思う



「今日はもう寝よ」


自身と、僕の口に放り込まれるハルシオン


気まずさにシングルベット



なんか曲名っぽいな、昭和世代の



電気を消して横になる僕ら


沈黙が気まずい



「やっぱり迷惑だよね、あたし」


顔は見えないけど、悲痛な声


「だから違うんだよ、全然そんな事ない。

ただ、皐月さんになんか悪い気がして」


「それは、あたしだって分かってる。でも心配かけたくないし、、、逃げてるのは分かってる。でも、もう少し、、」


そう言われてしまっては


分かったよとしか言うざるを得ない


「話せるようになったら少しずつでいいから、話し合って皐月さんに言おう?」


まあ確かに今、今日の明日でって理由もないし。


とりあえず、取っ掛りは出来たから良しとしよう



「雪くん、ありがとう、ばかっ」


なんでありがとうでばかなんだ



その声は心底安堵したかのような声色だった


照れ隠しなのか、足立さんは向き合って声をかけた僕にそのまましがみついた、強く抱きつくように


心臓に悪すぎる照れ隠しだ


僕は固まってしまって、そのままの姿勢を余儀なくされた



ハルシオンのおかげか、それでも何時しか眠りにつくことができた








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る