第17話足立さんと夏休み1

夏休みになった


交友関係が広くない僕にとっては単にバイトのシフトが変わるだけの認識である


あとは、半袖を着れない僕にとっては辛い季節であった


夏休みになっても足立さんは変わらずやってくる


変わらず、というか心做しか頻度が増えている気がする


不思議に思った


夏休み故に、遊びの誘いなどないのだろうか


ふと何気なく聞いてみると


「え、遊んでるよ皐月と?十条君も来たい?」


と返ってきた


いや、そうではなく


たまたま小耳に挟んだといえばなんだか古臭い言い方だけれどもクラスや廊下でよそのクラスの男子が足立さんを遊びに誘いたいみたいな話をしているのをチラホラと耳にしている


「その、皐月さん以外の友達とか」


「んー、別に行きたいと思わないし全部断っちゃった」


にしし、と笑いそうな顔でさらっと言った



全くもって不思議だと思った


いやまぁ気持ちは分からなくもないが、少しくらいはいいのではないんじゃないのか外の世界に興味を持っても


僕の中の足立さん七不思議が増えた


「あ。そうだ、ねえあの漫画とアニメ映画になってるんだよ、見に行こうよ!あとお祭りがあるよ!それに久しぶりにクラブにも、、あ、ダメだ。夏休みだしめっちゃ人多そう」


バイトの休みの日なら支障はないし断る理由もないし、映画、祭りの日取りを決めた


映画はアニメより更に壮大で迫力があった


重要キャラが敵の強いやつに殺されてしまうシーンではポップコーンを口に含みながら彼女は泣いていた


祭りの日は、前日に原宿に連れていかれた


浴衣や甚平を拒否する僕に、暑苦しいし、夜だから目立たないと半袖を買いにショッピングの強制イベント


当日は、本当に不思議な感覚だった


半袖でタトゥーを出して歩いている自分

浴衣姿の足立さん


「健全に、ね。出来ればでいいんだけど」



と、皐月さんからか不可思議なLINEが届いた


何を誤解しているんだろう


まあでもしかしながら、足立さんの浴衣姿はとてつもない破壊力だった


言葉にせずとも、どう?どう?と言葉を待つ彼女に


「凄く似合ってる、、桜さん」


こんな言葉を僕が口にする日が来るとは


苺飴を余分に買って帰宅した


余程気に入ったのか



換気扇を回して、タバコに火をつけると足立さんが突然それを手に取って吸い始めた


げほげほとむせていた


え?え?なにしてるの?


「ダメだよ桜さん、なにしてるの!」


この夏1番驚いた


「なんで十条君は良くてあたしはダメなのかなー」


口を尖らせる


良いも悪いも、そもそも僕も良くないんだけど


「刺青に煙草なんて不良君だよっ」


そう言って僕の口にいちご飴をつっこんだ


禁煙の第1歩はよく、代用に飴やガムなんかがいいって聞いたことがあったけど、


その為に買ってきたの?




僕らの毎日は、煙草なんて問題じゃない気がする


このタイミングなら話し合えそうな気がした


苺飴を口にしながら真顔で話す僕はどこかおかしいかもしれないけれど


「桜さん、ちょっと思うことがあるんだ」



僕はようやく切り出した

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