第10話足立桜(あだちさくら)

あたしだって人並みに遊ぶことやファッションに興味を持つ


でも、あまり人と深く関わり合う事はしたくない


お姉ちゃんは昔から社交的でファッションが大好きで


その道を目指す為に海外まで行ってしまった


あたしにはそこまで目指すものや社交性はないけれど、流行り物やファッションはお姉ちゃんの影響でそれなりに気にするようにはなった


連れられて何度かクラブのイベントにも行った


それでもやっぱりそれをずっと表に出すのは無理で、学校では大人しい存在だった


学生にとって一番生活の割合を占めるのは学校


そこで無理をしたくない


でも、それ以外のほんの少しの時間の場所でなら


そう思ってお姉ちゃんが居なくなって、それまではお姉ちゃんと出掛ける時しかしなかった濃いめのメイクや髪のセット、ファッションをするようになって、1人でクラブに行くようになった


目的とか、そういったものはないけれど

お姉ちゃんが居なくなって、ただの大人しい暗い地味なあたしになるのはダメな気がした



誰か誘って行きたいなって何度も思ったけれど


身近にお姉ちゃん以外にクラブに行く子は居なかったし、夜に至ってはまだ入れない年齢だから無理だった


休学して海外に行く際にお姉ちゃんが貸してくれた学生証



ほんとはお店の人がもう顔見知りで、まだ18歳になってないって知ってて、お姉ちゃんと居る時以外はダメだっだけど、お姉ちゃんが海外に行ってからは頻繁に出入りしない、ナンパにはついて行かないって条件で特別にって入らせてくれた


お姉ちゃんの学生証を見せるだけで入れる唯一のクラブ



慣れていけば、前から知ってる人は挨拶や軽い雑談程度でそんなに絡んでこないし、知らない人も上手にあしらってかわせばそれなりに楽しめる非日常的になれるたった一つの場所



普段誰も知らない人しかいないからこそ、気兼ねなく好きなメイクや格好をしていける


あたしのストレス解消


あと、お姉ちゃんが離れて寂しくなったのを紛らわせる方法




ある日にビックリすることがあった



最初、しばらく見ても確信がもてなかったけれど



クラスメイトの十条君が居た



普段と違う髪型で、1人で



あたしはとてもその彼の姿に親近感を覚えた


学校でもほとんど話した事がない


意識して見てなんかなかったから分からないけれど、あたしだけじゃなく多分殆どの人が話した事がない十条君


自分でも驚く事にあたしは彼に近づいていって、自分から声をかけた



殆どのクラスメイトが話した事がないであろう十条君


彼はとても話しやすかった


無表情の学校での顔しか見たことが無かったのに、話しかけた瞬間凄く驚いた顔をしていた


近くで見て気付いたけれど、なんとタトゥーが入ってる


え、高校生で入れていいの?


痛くなかったのかな?


タトゥーに関しても大慌てな十条君


なんだかおかしくて、緊張感は全く無くなった



あたしと同じように、学校と違う姿で夜のクラブに居るクラスメイトに、あたしは学校で友達と話すどんな時よりも明るく接していた


勢いでおうちまでお邪魔してしまったのは自分でも驚いた


親近感と、接しやすい十条の人柄


お姉ちゃんと居る時のように自然に明るく出来る


何よりも、彼にとっては迷惑かもしれないけれど、彼にならなぜか打ち明けて聞いて欲しいと思ったあたしの不安



なんでだろうか



なんだこいつって思われるかもしれない


それでも、同じように眠れない理由がある彼なら分かってくれるかもって気持ちが強かった



少し冷静になると、とんでもなく迷惑な女じゃないかあたしはって思い怖くなる


それでもあたしは留まれなかった



翌日も彼の元に足が向いてしまって、一緒に登校までしてしまった


おまけに夜の姿を彼にまでさせて、巻き込んで



勢いで、やってしまった


昼でも、もしこのままの自分で居られたらなにか変わるかもって


でも1人じゃ怖くて出来なくて彼を巻き込んでしまった



クラスメイトはみんなビックリしていた


あたし達の姿と、なんでこの2人がって


教室に入った瞬間に、弱気な自分が一気に全身を萎縮させた


それを振り払うように言ってしまった



再三の巻き込み



聞いた人が確実に一緒に登校して来たと認識する言葉を



あたしはなにを言ってるんだろうか本当に


ごめんなさい十条君


十条君も質問責めにあってたけど


怒っては無さそうで良かった

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