第7話 商人ヘンデル2


 ヘンデルとキラスカは

ポーションの件を聞き及び

目の前の礼司に絶句していた

明らかに自分達が知っている常識とは

大きく乖離していたからだ

若し事実だとしたら公には出来無いし

我々の手から離れて行くのだろうと

彼等は考えていた

兎も角ヘンデルは誠意を持って交渉したいと考え交渉はどんどん好い方に転がって行った


今目の前に出された

ケーキや珈琲と云う変わったお茶

ケーキの載っている磁器の皿にティーカップ

不思議な金属のスプーンにフォーク

決して華美な装飾では無いが

少年の背後に有る巨大な動く絵画

爽やかな香りが漂う室内

室内で靴を脱ぐ習慣など

明らかに違う文明を

ヘンデルは感じ取っていた


猫科獣人ハーフのキラスカの方は

ヒト種で有る礼司が獣人種と魔人種の子供達に何の迷いも無く高価なポーションを使い

治療してしまった事に大いなる好感を持って礼司を見ていた

それと同じ剣士としての冒険者魂が騒ぐのか治癒師の剣技を初めて見たキラスカの心には畏怖の念さえ芽生えていた

キラスカはAランクの冒険者だ

主にライドニック辺境伯領と王都を活動拠点にしているが

この治癒師に勝てる冒険者は居ないのかも知れないと考えていた


ヘン)「若返りのポーション?????

若しかしてSSランク以上のポーションや医薬品が存在するのですか!?」


礼司)「ハイ!有りますよ

正確には二種有ります

トリプルSランクとGdランクです

更にGdランクを大きく分けると三種になります」


この時ヘンデルは始めてSSランク以上のポーションが有る事を知った

そして或る事を危惧し始めたのだ


ヘン)「此れは少し

不味いかも知れません」


そう言ってヘンデルは

キラスカに顔を向けた

そしてキラスカも大きく頭を縦に振った


礼司)「エッ!?

何か有りましたか?」


ヘン)「ハイ!御座います!

聖ジャリスト教聖王国が

レイジ様のポーションを市場に流すと

黙ってはいないと思います

わたくし共はレイジ様を

聖王国には絶対取られたくは無いのです」


礼司)「エッ!?

取られるって?」


ヘン)「闇の組織を使った

拉致誘拐監禁です

そして最後は隷属紋の焼印を入れ

死ぬまで

高位ポーションを造らせ続けるのです」


礼司)「それ少しだけ聞いた事が有ります

全く恐ろしい宗教国家ですよね

機会が有れば何れ潰しますよ」


キラスカも此の少年なら

本当に潰せるのではないかと

一瞬思ってしまっていた

そしてヘンデルは医薬品やポーションの営業取引をお願いしたいと希望を陳べてきた


礼司)「取引に関しては承諾しますが

素材不足のため

納品は雪解け移行となりますよ

それで良ければですけど」


ヘン)「それで大丈夫です

ところで此の大陸には不治の病が

二つ有るのですが

それの特効薬等は造れないでしょうか?」


礼司)「不治の病ですか

どんな病気なのですか?」


ヘン)「それは

四肢痩せ病とゼエゼエ死病です

二つ共に時間を掛け死んで行くのです」


礼司)『分かるか神眼?』


神眼)『四肢痩せ病とは脚気症

ゼエゼエ死病とは結核の事ですね』


礼司)「それはたぶん結核と

脚気症の事ですね

時間は掛かりますが薬で治す事が可能です

但し結核の方は第三者に羅漢しますので

隔離して治療を行なう事

たぶん周りいた人々達もキャリアで有る可能性が有りますので

精密検査を行ない隔離する必要が有ります」


ヘン)「では治るのですか!」


礼司)「手遅れで無ければ

元通りに治癒させる事は可能です」


ヘン、キラ)「「オーーーーーッ!!」」


ヘン)「それでは今すぐ治療する事は可能ですか!?」


礼司)「それは流石に無理です

先ずは先に薬を造らないと

それに受け入れ体制も整えると云うか

隔離施設等も絶対必要になります

今から準備を始めるとしても受け入れは

四月位からでしょうか?」


他に訪問治療も可能だが

いちいち訪問していたら大きくは改善しない事等を説明した

そして俺は次の条件を出した

条件は貴族、大規模商人、大規模農家等の富裕層の治療は

脚気症は治療費が金貨200枚

結核は金貨500枚

スラムの民や流民等の貧民層に対しては大白銅貨1枚とした


ヘン)「それは余りにも無謀なのでは?」


キラ)「………………………」


礼司)「実は

自分の祖国にも赤は実際存在しています

なので自分の祖国とは逆張りに致します

富裕層は貧民層に対し

責任を取って頂きます

貧民層が居るからこそ

富裕層が成り立っているのです」


経験者なら分かると思うが

例を上げるならば

日本でも赤系の病院は世界一の平等主義だ

詰り金の下に平等主義なのだ

金さえ出せば超特急治療、専任の看護婦ホステス迄もが付いてくれる

そして赤系の富裕層は絶対に逮捕されない

何故何だと云う事例を

俺達は何度も目撃しているが

我々は余りにも無力過ぎる

異世界に来てまで

態々無力だけは選びたくは無いもんだ


礼司)「勿論間に立って戴くヘンデルさんには対価をお支払い致します

新たな商材の独占販売権です」


俺は収納から塩、胡椒、砂糖、小麦粉、大豆のサンプルを出しヘンデルさんの前に出した


ヘン)「こっ此れは!

全部超特級の品だ!!………………」

ヘンデルは上位鑑定持ちだった

だからポーション等を見て判断し

驚く事が出来たのだ


ヘン)「驚きました

全て超特級の商材です

して取り引き価格は?」


礼司)「現在の普通品の相場で無制限に提供致しますので安く販売してあげて下さい」


ヘン)「完全に相場が崩れて仕舞います

農業大国のバンテリア中央帝国軍が攻めて来ますぞ!」


礼司)「それも大丈夫ですと云うか

バリリアとジャリには恨みが有りますので

それに自分は

強力な結界を無制限に張れますから

ご安心下さい」


ヘン)「非常に面白そうですな

私が責任を持って協力させて頂きます

バンテリアも商業ギルドと敢えて事を構えないと思いますが

癒着の噂も聞こえて参ります

ただ!之だけは言わせて下さい

暗殺だけには充分注意をして下さい」


どうやらヘンデルさんも間接的に

俺の仕返しに強力してくれそうだ

それにしても暗殺って

此の世界の大国って信用が無いんだな

それにしてもキラスカさん

俺を見る目が何と無く輝いている

何かしたかな〜?


礼司)「そろそろお昼ですね

宜しければご一緒にどうぞ」


ヘン)「厚かましくもお願い致します

是非他国の方達が作る料理を食べてみたいのです」


礼司)「なるほど!

知的好奇心ですね

その考え方はとても良いですよね」


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