最後の天使は夕焼けに微笑む

@yuyuyu06

序 黒い天使たち


キーンコーンカーンコーン_

遠くに聞こえるチャイム。

一人の少女は音を聞き重い腰をあげる。

「さてと」


 地面に座り込んでたが故に、スカートに砂が付着している。

そんなことを気にもとめず移動する。

刹那、突風が吹く。スカートがふわりと風を受ける。

少女は小さく舌打ちをして面倒臭そうにスカートを手で押さえる。

「こういう時この服装って本当に面倒臭いのよね」

悪態を吐きつつも、『学校』へと向かう。


 世界が朱色に染まった。

夕方から夜にかけて【天使たち】の時間になる。


国京夕輝くにきょうゆうき、遅いぞ」

校門にたどり着いたと同時にどこからか声をかけられた。

「うるさいわね、あんたが早いのよ」

少女の名は、国京夕輝。真っ黒な長い髪に、セーラー服。

右目は眼帯で隠されている。


「それで、なんであんたと合同なのよ」

国京はまたも悪態を吐く。簡単に校内へと侵入し、男_

大村渉おおむらわたるに問う。

「主任に聞いてくれ」

大村はそう言い放つと前を歩く。

なんだこいつ、と国京は舌打ちする。

「可愛くねぇな」


「はははは、あいつらは本当に仲が悪いな」

そんな声が背後から聞こえる。

「くそっ、まんまとやられた」

主任にはめられた、と国京は顔をしかめる。それは大村も同じだった。

国京と大村直属の上司、栽松京之介うえまつきょうのすけ

性格が悪いことで有名なこの地区の統括主任。

大村が構える。顔をあげると黒く、大きく渦巻く負の感情。

闇の中でうごめく人間の姿を目の当たりにする。

最初の頃は人間でさえも救いたい、その一心だったがそんな気持ちはもう棄てざるを得なかった。何度人間を助けようとして命を棄てかけてしまったか。

幾人もの同僚が人間のために儚く散った。助けたところで人間はひどい言葉を投げかけるだけだ。なんて哀れな生き物だろう。

「おい、どうする?人間、まだ生きてるみたいだぞ」

大村は国京に問いかける。

「知らない。あんな暴走するような奴のために私たちが命をかける必要はない」

大きな鎌が国京と大村の手に握られる。

「これのどこが天使だ」

国京はそう呟くと自分の体よりも大きな黒い鎌を振り下ろした。



 恨み、憎しみ、喜び、悲しみ、全てが形となり具現化する世界。

それら全てが暴走を測った時、他のものに影響を与えないために回収する役割を担う者のことを【天使】と呼ぶ。

国京も、大村もその【天使】である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る