第3話:衝突

「お前ら何してんだ…。」

「すみません!高橋タカハシさん!」

「いや、安土アヅチが謝らなくていいだろ…いやホント、すいませんでした!」

「まぁいいけどさ。」

「え、ほんとですか高橋さん!」

長宮ナガミヤ、お前、減給な?」

「ハッ‼︎」

そんなこんなでバカみたいな話をしながら、4人はビルに向かう。


ビル内部

「なんてこった!戦闘部隊がやられるなんて…!」

ブレウは慌てながら指示を回す。

「焦るなブレウ。」

「そんなこと言ったて…ボルミトさん。もう、俺たちの戦力は無に等しいんですよ!この尾牧区オウボククをいつか俺らのものにして、この上下田を支配するっていう夢も…。クソッ!」

ブレウは机を殴った。

「そうだな、これ以上戦力が減るのはなんとしてでも阻止しなければならない。」

ボルミトは右手を頬に当て、考えるような仕草をした。

「残り戦力はあのカルマ持ちに回す。そして、新しく来たやつともう1人をここで迎え撃つ。」

「三人を分散させるってゆーことですね…あれ?最初来た時三人じゃなかったです?」

「そういえば…」

バタン‼︎扉が開いて1人が駆け込んできた。

「敵来ました!今一回で応戦中です!」

「先程言った通りだ。カルマ持ちに全戦力を当て、2人をここに誘導しろ。」

「了解…。」


「クッソ何人いるんだこいつら!」

ムーンライトビル一階にて、敵と応戦する。長宮が声をかける。

「チンタラしてる暇はないぞ!安土!」

「おう言うじゃねぇか小松!もっと敵倒してから…」

高橋の首元に刃が向かうっ!

「高橋さんっ!」

明水流メイスイリュウ 綿津見ワダツミ。」

敵は投げ飛ばされる。

「偉そうに言ってくれるか?」

「ったくあんたと来たら…。」

長宮さんはすっかり呆れ顔である。

「そこにちょうどよく椅子があるので座りませんか?」

「おっ、それいいな。安土。」

サン人が腰掛けると高橋が話を始めた。

「もうそのうち二階から増援が来る。少し休憩をしたら向かおう。」

「ハイ。」

階段からは音が聞こえず、暫くは敵は来ないだろう。

ピンポーン

「へっ?なんの音だ?」

高橋さんは馬鹿面をかます。

周囲を見渡してみると、さっきの音はエレベータが降りてきた音のようだ。

「エレベーター…?」

長宮さんは不思議そうな顔をする。

安土はハッとした表情で立ち上がる。それに続いて高橋も立ち上がる。

「行きますよ!長宮さん!」

「ん?敵もいねぇのにか?」

「よく頭を働かせてください!どう考えても…」

エレベータの扉が開く。

「敵が乗ってるんでしょ!」

「オラァァァァァッ!」

「うわっ!」

長宮は今立ち上がった。当然ながら敵に囲まれる。

「仕方ねぇ、長宮は置いて俺たちで進むぞ!」

「そんな!」

「あいつなら死なねぇだろ。それに、俺とお前ならアレを使ってこの階段で敵の大ボスがいるところまで行けるはずだ!」

「……そうですね。長宮さんを信じましょう。行きますよ!」


「ふぅっ…イズミ、間に合うのか?」

「なんで私に運転させるんですかっ⁉︎」

「だって俺免許持ってないもーん。」

「このクソ上司がっ!」

深津フカヅはSMSで自分の推しの情報を見ている。

「今回向かうのは地下組織の根城ですけど、現地の人に任せておけばいいのでは?」

「んーここってどこの管区だ?」

「尾牧区でしょ?じゃぁ…」

石橋台シャッキョウタイ。だろ?」

「そうですね。」

「そんくらいすぐにペッと答えろよ。第七班の名がなくぞ?」

「このクソ上司が…。」

「口が悪ぃなぁおい。」

「そのぶん姫崎ヒメサキちゃんは…あっ‼︎」

泉は急ブレーキをかけた。

「何ですか⁉︎どうしました⁉︎」

「姫崎ちゃんの新しい投稿だぁ…眼福眼福。はっ!早くいいねして、拡散しなければ!」

「この…クソ上司ぃぃ‼︎」

泉は嘆いている。


「よくここが分かったね。」

「最上階ではなくその一つ下の階で待ちかまえるとわな。悪趣味なこった。」

高橋は舐めてかかったような態度をしている。

「あんた、ボルミトだろ?」

「そうだったら、どうする?」

「どうするもこうするも本物でも違うくても。」

ボルミトに詰め寄る。

「殴る!」

ドカッ!

高橋さんの拳は空を切った。

「アハッ!出たぜ、ボルミトサンのカルマがよ!」

「カルマ?」

安土はブレウに投げかけた。

「そうさ!あれこそがボルミトサンが与えられた力!超速のカルマだよ!」

「超速のカルマァ?」

「無知は罪だなぁおい。」

高橋はボルミトに話しかけた。

「何の話だ?」

「この上下田は常識が通じない世界だ。この上下田に入る上で覚えておかなきゃならねぇことがいくつかある。」

「……。」

「それの一つが『カゲフミ』だ。」

「あ?何だよそれ。そのぉ『かげふみ』?ってやつ。」

「おいお前いい加減にしろよ。」

「……?何だよ。」

「お前はノリと勢いでここにきてんのかもしれネェが、ここは不良が遊びにくる場所じゃねぇんだよ。」

「あ?言わせておけばペラペラと……舐めてんのかぁおい!」

ブレウは高橋に襲いかかる。その手には刃物を持っている。

一瞬。高橋は消え、ブレウの後ろに回りこむ。

「これが『影フミ』だ。」

「…?そんな、ボルミトさんと…同じ⁉︎この世に2つとして同じカルマは存在しない…のに…?」

「ボルミト。お前に聞きたいことは山ほどあるが、1つ!聞きたいことがある

。」

「……なんだ。」

「こいつのことをどう思ってんだ。」

「捨て駒以外の何者でもないな。」

「んなことだろぉとは思ったよ。」

「そんなっ…!」

「ここはもう使い物にならんな。」

ボルミトは立ち上がった。

「逃がさねェよ!」

安土は後ろに足で円を描くようにして回り込み短刀を突きつける。

四式ヨンシキ、雀指し《スズメザシ》!」

ボルミトは消える。

「クソッ!影フミ使いかっ!」

「待てっ!」

「追いかけるな!安土!」

「⁉︎」

「あいつが使ってたのは、陰式インシキだ。陽式ヨウシキのお前じゃ立ち回りで差をつけられる。」

「そんな…。」

「仕方ねぇ、帰るとするか。」

「まてよお前等!」

ブレウは叫んだ。

「何だよ?」

「オレはこれから、どう生きてきゃいいんだよ!親の反対押し切って神奈川に来たけど全然ダメで、何やっても向いてなくて。でも、喧嘩だけは強かったから、この上下田にくる道を選んで…。そこでボルミトさんに拾ってもらって。もうオレにこれ以外の道はねぇんだよ!」

「はぁ?あるじゃねぇか。」

安土はツッコミを入れる。

「お前が進もうとしてねぇだけだろ?テメェが進もうとすれば、何処へだって行けんだよ。上下田の中でも外でもいい。進めばそこに道があんだよ。」

ブレウは涙をこぼした。

「ほらよ。」

高橋は手を差し伸べる。

「ウッウゥゥクッ…」

ブレウも手を取ろうと手を伸ば…

バリィン!

「⁉︎」

「ふぅ、コートが汚れるな。この入り方は私の性に合わんな。」

「お前はっ⁉︎」

「突然失礼。警視庁ケイシチョウ 捜査一課ソウサイッカ 第二班ダイニハン 竹ノタケノウチ 秀明ヒデアキだ。では。」

ズズズッ!

黒い影がブレウのそばを囲む。

「⁉︎」

「被告人 大台ケオオダイガハラ オサム殺人幇助サツジンホウジョの容疑で逮捕する。」


つづく。

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