プロローグ 高橋 景臨

東京 上下田カミシモダ

政府の命令により東京湾は世界最大級の埋め立て地になった。

そん時は「未来を変える。」なんかもてはやされ、「夢の大地」なんかも呼ばれてた。

上下田が完成してから、だいたい一世紀。

上下田の細部まで治安維持は行き届かず、麻薬の売買やら殺人やら強盗やら何やら…

「夢の大地」なんか呼ばれてたらしいが。今はもう「夢の大地」なんかじゃねぇな。名前を付けるんだったらそうだな

「世紀末の大地」………だな!


2217/10/24高橋タカハシ 景臨ケイリン


「久しぶりだな、高橋。」

「てめぇは随分とおっさんになったもんだな。」

「フッ!七つも上のヤツに対しての言い方がそれかい?」

「七つだけしか上じゃねぇだろ。」

「まぁねぇ。」

「あの事件からもう十六年にもなるんだゼ。」

「ビックリだよな。で、今日は何のためにここに来たんだい?」

「おいおい、サラッと済ますなぁ。」

「早く要件を言いなよ。」

「復讐をしようと思う。」

かい?」

「よくわかってるじゃぁねいか。」

「どういう手段をとるつもりだい?」

「組織を作る。」

「どんな…?」

「名前は付けてないけどよぉ、に復讐してぇ奴らとか、この上下田をよく思わねぇ奴ら。」

「ほう…。」

「世界の作った物差しに当てはまることを知らねぇ奴ら。そんな奴らを集めて、組織を、作る。」

「そして…?」

「この先はてめぇの脳みそで理解できんだろ?」

「……………。」

「おい黙ってんじゃねぇよ。」

「復讐…か。あまり良い言葉じゃぁないね。」

「まぁ…良いだろ。」

「でもね、それは許可できない案件だ。」

「!?」

「そもそも君の復讐に割く為の時間も金も無い。君は計画性もない。よって設立することには大いに反対するネ。そもそも君は…。」

ドタン!!

「こりゃ…逃げられちゃったね。」


「あいつは何もわかってねぇ!!」

高橋はブツブツと呟きながら、道端の缶を蹴り飛ばした

カコーンッ

良い音が鳴った、美しい軌道、が、最大の誤算。前方に居た金髪のお兄さんに(ヤンキーに?)当たってしまった。

「あぁ?イテェナコラァ。」

金髪のお兄さんは少し茶色がかったサングラスを少し滑らせ鼻の頭にかけている。

「おい?」

「ハ、ハイ!」

お兄さんは地面に落ちていた缶を拾い上げた。

「これ、アンちゃんか?」

「………。」

「なぁ?オイ。」

「…………。」

「オイオイオイ」

お兄さんは詰め寄ってくる。

「なぁ…?」

「そのくらいにしておけ!!」

後ろからよく通る声がバシュンと真っ直ぐに響いた。

「アァ?おいテメッ!喧嘩売ってんのかぁおい?」

お兄さんはドタドタと走りつめよってきた。

ヤバイ、本気だ!!|

が、しかし。自分の右肩から真っ直ぐに大きな拳が飛び出した。

「⁉︎」

拳はお兄さんの顔の横をシュッと走り、お兄さんのグラサンは片方からかけられた大きな力でスルリとお兄さんの耳を離れた。


「大丈夫でしたか?」

「あ…あ、ハイ。」

「災難でしたね。ま、この上下田では少なくない事ですから。あれくらいなだったけマシなんじゃないですかね。」

「あなた、名前は。」

滝本タキモト滝本タキモト 龍千リュウセンです。あなたは?」

「あぁ、オレは高橋タカハシ 景臨ケイリンって。」

「敬語…」

「はい?」

「敬語、外していいですよ。いくつですか?」

「26です。」

「あぁ、じゃ、ボクの方が年上だ。ボク、28です。」

「ならやっぱ、敬語使った方が…。」

「いや、良いですよ。年上が敬語つけなくて良いって言ってるんだからつけないで良いですよ。」

「じゃぁ、お言葉に甘えて。」

滝本さんは…龍千はとても話しやすい人だった。話すのが上手で、聞くのも上手。人としてのステータスが常人の倍以上あると言っても過言ではない。

オレはいろんなことを龍千に相談した。復讐のこと、組織を作りたいこと、上司のこと。

オレが復讐しようとしている奴らには、なんと龍千にも絡みがあった。

自分が小学六年生の時くらいに、弟がそいつらのテロ事件に巻き込まれたそうだ。その話をする時の龍千の顔はどこか遠くを見ていて、見ているこっちも悲しい気持ちにさせられた。

龍千は自分の話もよく交え話した。

「ボクはね、今、所属しているチームのリーダーにされかけているんですよ。でも、自分は全然自信がなくて。ボクよりもっと適任がいるはずなんですよね。」

龍千は、氷で割った焼酎をゴクゴクと喉に滑らせた。(因みに全然酔わない。お酒強い。)

「なんでボクなんだろ。」

「…………。」

「あ、なんか変な話しちゃったね、ゴメンゴメン。」

「イヤ、」

「?」

「やったほうがいいと思うぜ!リーダー!」

「えっ、どうして急に。」

「だってよ、龍千はトーク能力にも長けているし、護身術も学んでる。」

「……。」

「優しいから、なんでも話せそうだから、なんでも話しちゃいそうになる。それは、この世界を生きる人にとっては、素晴らしい能力なんだぜ?」

「それは…。」

「ん?」

「それは君も同じだよ。タカハシ君。」

「えっ…。」

「ボクがもしリーダーを決めたりする側じゃなくて、入る方なら、ボクは君のチームに入りたい。」

龍千はドンと机を鳴らした。

「ホラ、いつか話してくれたじゃないか。作りたい組織が有るって。ボクはそれに入りたい、チームのリーダーになるよりも、そっちの方がボクにあっていると思う!」

「でも…。龍千はそのチームに必要とされてんだろ?じゃぁその要望にも答えねぇと。」

「それもそうか…。じゃぁ君の言う通り、リーダーになってみる。でも、君の作る組織にも入れてくれ。出来ることは少ないかもしれない。でも、出来ないことを嘆くより幾分かはマシなハズだ。」

「ありがとよ。忘れねぇぞ今の言葉。」


その後は龍千会う機会が無くなった。アイツも忙しくなったのだろう。オレは何度も上司に頼み込みをしたが、何度も何度も弾かれた。

そしてある日。

「高橋。」

「なんだ?」

「高橋、組織の話なんだが…。」

「まさか…」

「作っていいぞ。」

「ヨッシャァァァァァ!」

「ただし、無論条件がある。お前、副長をやらないかい?」

「え、副長?」

副長とは、オレの所属している組織のナンバー2にあたる役職だ。

「まぁ、それくらいなら……。でも、何で急に心変わりしたんだ?」

「あぁ、それはね。この間、台長会議で龍神台の若い台長がね……

『石橋さんのとこに、タカハシって奴がいるでしょう。そいつが、組織を作りたいって言ってませんか。ボクからもお願いするんで、その……タカハシに組織を作ってあげてください。どうぞよろしくお願いします。』

……ってことがあってね。お前、あんな奴と面識あったのかい?」

「あ?あぁ、あったさ。とびっきりの絆がな。」

ありがとう、龍千。

「で、組織の名前は何にするんだい?どうせならめちゃくちゃかっこいいやつにしなよね。」

「もう決めてあるさ。」

「へぇ、どんな?」

「どこまでも追い続ける追跡者…という意味で。」

CHASER!!!!!!!!!!!!!!

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