第11話裏切りの囁き

「このたびわたしたすけけていただきありがとうございます。」

まったく、あんな暴動ぼうどうこすからこうなるんだ。感謝かんしゃするならわたし桐島きりしまにだろ」

「そうだったな、おまえ機転きてんのおかげだ。こんなに優秀ゆうしゅう若頭わかがしらがいて、わたししあわせものだよ。」

「とんでもない、すべては組長くみちょうのためです。」

 ここは清藤きよふじ自宅じたくである、長篠組ながしのぐみ組長くみちょう羽柴はしば若頭わかがしら桐島きりしま半日間はんにちかんせていた。

 羽柴はしばがサスガスーパーを脅迫きょうはくする事件じけんこすことをめたあの桐島きりしま偶然ぐうぜん清藤きよふじからの電話でんわけた。

 そしてこのことを清藤きよふじはなして、清藤きよふじからもし失敗しっぱいしたときの対策たいさくおしえてもらった。

 もちろん脅迫きょうはく失敗しっぱいわり、そのらせをけた組長くみちょう警察けいさつつかまることをおそれた。

 桐島きりしま清藤きよふじからおしえてもらったとおり、資料しりょうすべ処分しょぶんして事務所じむしょはらい、清藤きよふじこしてくれたくるま清藤きよふじいえへとかったのだ。

「それにしてもこれからどうするというのだ?インターネットでの販売はんばいつづけられるとしても、さしてもうけられないだろ?」

 清藤きよふじにピシャリとわれて、羽柴はしばなにえなかった。

「チクショウ・・・、どれもこれも大島おおしまのせいだ!!おれらはただ商売しょうばいをしていただけだというのに・・・。」

 羽柴はしばかお憤怒ふんぬひとかおではなくなっている。

わたし大島おおしまおもわない、市民しみん安全あんぜん警察けいさつまかせればいいのに、しゃばってくる態度たいどらない。」

清藤きよふじ大島おおしまをやっつけるためにちからしてくれ。このとおりだ!!」

 羽柴はしば清藤きよふじ土下座どげざたのみこんだ。

「わかった、ほかならぬおまえのためだ。」

「ありがとう、つべきものはともだ・・・。」

 羽柴はしば清藤きよふじにぎった。

「まずはてき実態じったい調査ちょうさすることだ、わたしいにうでのいい探偵たんていがいるから紹介しょうかいしてやろう。」

「いろいろありがとうございます、料金りょうきんはどれくらいかかりますか?」

わたしはらうから問題もんだいない。」

「そうですか、それはありがとうございます。」

「それよりも本社ほんしゃほうから連絡れんらくがあったぞ、ふくダンボールの販売はんばいはどうするのかって。」

「おそらくこれから事件じけんがニュースでながれることをかんがえると、移動販売いどうはんばいはもう不可能ふかのうです。ネット販売はんばい方向ほうこうえたほうがいいとおもいます。」

「そうか、もうダメか・・・。」

 羽柴はしばくらかおになった。

「またあたしい商売しょうばいかんがえればいい、そのためにも大島おおしまたおすんだ。」

 清藤きよふじはげまされ、羽柴はしばはやるた。










 一方大島家いっぽうおおしまけでは、「チーム・ブンガブンガ!」のメンバー全員ぜんいん長篠組ながしのぐみをやっつけるための作戦さくせんてていた。

「やっぱり組長くみちょうつかまえることがなによりだよ。」

「そのためには組長くみちょうをおびきさないといけないな。」

「そのためにはふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃにもっと邪魔じゃまをすればいいんだ。」

「でもそれをどうやるか・・・?」

「だったらTwitterなどでうわさながすのはどうだ?そうすればネット販売はんばい妨害ぼうがいできる。」

 風間かざま提案ていあんした。

「なんてうわさながすんだ?」

「ほら、行方不明ゆくえふめいになったアルバイトの高校生こうこうせいはなしがあっただろう。あれを俺達おれたち噂話うわさばなしにするんだよ。」

 イーサンはあの噂話うわさばなしおもした、するとはなしいていた友近ともちかはなしはいってきた。

「その高校生こうこうせいなら、つかったわよ。」

「え!?どこにいたの」

兵庫県ひょうごけん神戸こうべよ。親戚しんせきいえにいたわ。」

「どうしてそんなところにいたの?」

母親ははおやはなしによると、ヤクザたちが毎日家まいにちいえにくるようになったので安全あんぜんかんがえて、親戚しんせきいえかせたそうよ。」

「その高校生こうこうせいえる?」

「それは無理むりね、依頼者いらいしゃには電話でんわこえかせてくれたけど、安全あんぜんがわかるまではだれにもわせられないって。」

「じゃあ、ぼくをそのいえれてってよ。はなしきにくんだ。」

「わかったわ、わたしがそこへおくってあげる。」

 こうしてイーサンは友近ともちかくるまで、その高校生こうこうせいいえへとかった。











 一方いっぽう桐島きりしまはあの事件以降じけんいこうもトラックの運転うんてんをしていた。

「あんなことのあとなのに・・・、いつもどおりはたらいていて大丈夫だいじょうぶですかね・・。」

 助手席じょしゅせきすわった田中たなかがぼやいた。

「そんな心配しんぱいをするな、組長くみちょう命令めいれいだから仕方しかたない。」

「そうですよね、俺達おれたちには拒否権きょひけんいからな・・・。」

 桐島きりしま運転うんてんするトラックにはうらルートで入手にゅうしゅした衣類いるい・ゲームなどがはいったダンボールがまれている。

 そのおかげでふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ運営うんえいできているものの、商品しょうひん値上ねあげげをするはめになった。

 そのため全盛期ぜんせいきよりもげが激減げきげんした。

 さいわ警察けいさつにはつかってないが、いずれつかることにわりはない。

 桐島きりしまはいつるかわからない逮捕たいほおびえながら、生活せいかつをしていた。

 トラックがふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ駐車場ちゅうしゃじょうき、荷下におろし作業さぎょうはじまった。

 そして荷下におろし作業さいぎょうわったそのとき桐島きりしまのスマホがった。

桐島きりしまか、清藤きよふじだ。」

 なんと相手あいて清藤きよふじだった、桐島きりしま一瞬呆然いっしゅんぼうぜんとなった。

「ああ、清藤様きよふじさま組長くみちょう用事ようじですか?」

「いいや、きみにだけだ。」

 桐島きりしまくびをかしげた、どうしてこんなおれなんかに用事ようじがあるのだろう・・・。

今日きょう午後六時ごごろくじむかえをおくるから、わたしはなしをしてくれないか?」

「わかりました、六時ろくじにですね?」

「そうだ、よろしくな。」

 疑問ぎもんかかえたまま、桐島きりしま通話つうわった。









 午後六時ごごろくじ桐島きりしま会社前かいしゃまえっているとくろいセダンが桐島きりしままえまった。

桐島様きりしまさままえにこちらを。」

 セダンの運転手うんてんしゅ桐島きりしま招待状しょうたいじょうわたした。

「なんだこれは?」

清藤様きよふじさまのおちしている料理店りょうりてん会員制かいいんせい登録とうろくしないと入店にゅうてんできませんが、その招待状しょうたいじょうがあればどなたでも入店にゅうてんできます。」

 桐島きりしま納得なっとくしてセダンにった。

 セダンが発車はっしゃしてから三十分後さんじゅっぷんご小牧市こまきしにあるおおきな洋食店ようしょくてん到着とうちゃくした。

 桐島きりしま入店にゅうてんして受付うけつけ招待状しょうたいじょうせると、清藤きよふじ相席あいせきとなるせき案内あんないされた。

「よくたね、わたしのおごりだからきなものをどうぞ。」

 桐島きりしまはハンバーグを注文ちゅうもんした。

「それで、はなしというのはなんですか?」

「そのまえあやまっておく、あなたのことを勝手かって調しらべてすまなかった。」

「え、どういうことですか?」

桐島充きりしまみつる愛知県小牧市小牧原二丁目在住あいちけんこまきしこまきはらにちょうめざいじゅう小中高しょうちゅうこう学生時代がくせいじだい地元じもと学校がっこうおくり、名古屋なごやのS大学だいがく入学にゅうがくする。」

桐島きりしま警戒けいかいかおになった。

清藤きよふじさん、おれなにいたいのですか?」

きみ、ヤクザめるはあるか?」

「・・・まあ、いつかはあしあらおうとおもいます。」

「いつかじゃない、今足いまあしあらうべきだ。もしわたしすのなら、きみ運営うんえいしている運送会社うんそうがいしゃ仕事しごと斡旋あっせんしてあげよう。」

わたしになにをさせたいのですか?」

「これを処分しょぶんしてほしいんだ。」

 そうって清藤きよふじ桐島きりしま封筒ふうとうわたした。

「そこにはふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃかんする資料しりょうはいっている、これが警察けいさつったらわたしつかまる。」

「・・・なるほど。」

「それからもしものときは、匿名とくめいで『すべ羽柴はしば仕業しわざだ』と警察けいさつにタレコミしてほしい。」

 桐島きりしま絶句ぜっくした、それは組長くみちょうるということだ。

「どうだ、やってくれるか?」

本気ほんきでやるつもりですか、組長くみちょう清藤様きよふじさまのことをマブダチとんでいたのですが・・・?」

 清藤きよふじはためいきをつくとうんざりした口調くちょうこたえた。

「あいつはそんなことったのか・・、高校時代こうこうじだいまでパシリさせたくらいで友達ともだちじゃねえよ。」

 桐島きりしま高校時代こうこうじだい羽柴はしばがグレるまえ自分じぶんかさなり、どくおもった。

 それから桐島きりしま注文ちゅうもんしたハンバーグをべたあと封筒ふうとうって帰宅きたくした。




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