第7話 メデューサと目を合わせるな!

 女子更衣室にて、瓜子うりこ蛇美子じゃみこ浦間うらま千夜子ちよこにウザ絡みされていた。



「ねぇねぇ蛇美子じゃみこぉ。この子イケてると思わなーい?」

「う、うん」

「あっ、こっちもイケてるかもぉ」

「うん」

蛇美子じゃみこはどの子が推しぉ?」

「えっ?」



 瓜子うりこ自身は3次元の男性アイドルに全く興味がないので、どれも同じ顔に見えた。誰か選ばないと文句を言われそうなので、あっさりした顔の男性を選ぶ。



「この虹村にじむらさんかな」


「えー、虹村にじむらぁ? それないわぁ、センス悪ぅー」



 浦間うらまの心無い発言で、瓜子うりこはついにキレた。彼女の長い髪がたくさんの蛇に変わり、浦間うらまを睨みつける。



「シャアアア! うるさーい!」



 瓜子うりこの眼が赤く光れば、あっという間に浦間うらまの全身が石化する。彼女は頭を抱えて激しく動揺する。



「あああ、どうしよう。また、やっちゃったわ!」



 彼女は散々悩んだ結果、浦間うらまの石像を引きずって、保健室へ向かうことにした。



※※※



 保健室では、小野沢おのざわ監督が治療を受けていた。



「まぁ。こんなケガして、よく生きてられますねぇ」


「ハハハ。頑丈なのが取り柄ですから」



 監督の体のあちこちが、ボールの跡でへこんでいる。彼は桃野ももの弟の豪速球を受けるキャッチャーになっていたのだ。



「あっ、わわわ、ごめんなさい、監督! 私が浦間うらまさんを石にしたせいで……」


「おやおや? 浦間うらまはそんな姿になってたのか」



 瓜子うりこは正直に経緯を説明する。監督は無表情でうなずき続ける。



「なるほど。その石化は解除できるのか?」


「だいたい半日ぐらいで戻ります」


「ふむふむ。一部分だけ石化させることは可能か?」


「はい。母や姉がよくやっています」


「一部分の石化は、何分くらいで解除される?」


「10分から15分くらいだと」


「なるほど。それなら、ピッチャーの手を石化させて、特定の球種だけしか投げられないように出来るな。よしっ!」



 監督はえびす顔になって手を叩く。



「瓜子、今日から動くものの部分石化の練習を積んでくれ。上手くコントロールが出来たら、スタメンで使うからな」


「わ、私がスタメン? ありがとうございます!」



 中学時代は試合終盤の代走や守備固めが多い彼女にとって、実にありがたい提案だった。彼女は嬉しくてメデューサと化して、赤い眼を見開く。



「あれ? あぁ、また私としたことが……」



 監督と保健の先生までも石化させてしまった。




 その後、希望きぼう学園の校舎内で、体の半分が石化した虫や尾羽が石化した鳥が、よく目撃されるようになった。



(続く)

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