第2話 開拓使の航海

 小惑星帯は、太陽系の火星と木星の間に広がる、幾万の星々である。


 大きいものは、準惑星と呼ばれ、小さいものは、巨石程度しかない。スニタニーを求め、漆黒の航海に出た開拓使たちは、或る者は、準惑星を目指し、或る者は、巨石群を目指した。


 開拓使たちは、日本島で、革命により、身分を失い、土地を奪われた者たちであり、新しい政府の小惑星開拓使募集が始まると、競って飛びついた。

 家族、親族を伴う者もいたし、家族を地球に残し、単身、開拓使船に乗り込む者もいた。


 開拓使たちが、数年の航海を経て、小惑星帯に着いた時、初めて、この航海が無謀であったことに気が付いた。

 新政府の係員が示した、パンフレットには、開拓の中心となる準惑星タレスは、開発が進み、大気があり、居住ステーションが家族ごとに完備され、すぐに鉱物採集ができると説明されていた。


 しかし、厚いガスに包まれたタレスの大地に降り立った開拓使たちの目の前には、居住ステーションが数棟あるが、建築途中で放棄されているだけであり、開拓使たちも、荒涼たる大地に放棄されたことを思い知らされた。


 開拓使たちは、地球に戻る燃料、食料を片道分だけしか与えられていなかった。1万人の男女、子供たちは、タレスで生きていかねばならなかった。


 開拓使たちは、大気装置を修理し、また、水発生機の製造を始めた。鉱物採集どころの話ではなかった。男たちは大気装置の設置を進め、女たちは、水畑で、穀物、野菜の栽培に勤しんだ。

 タレスで、人間らしい生活ができるようになるには、20年の年月が過ぎ、その頃には、地球の地核でスニタニーが発見され、スニタニーラッシュは幕を閉じていた。

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