第29話 告白

フラワーガーデンを出た後しばらく電車にゆられながら俺たちはある駅に着いた。


「なぁ、どこ向かってるんだ?もう夕方だぞ」

「もう少しで着くから」


ここに来るまでに結構時間がかかったのだ。

こんなに遠い場所まで来て紅葉は帰り大丈夫なのだろうか?


「じゃあこの展望台に行こう」

「わかった」


連れてこられたのは普通の展望台だった。


「とうちゃーく」

「長かったな」


50段近くの階段を上って着いた展望台から外を見るとそこには夕日が沈みかけるときで下には海があり僕たちを照らしていた。


「綺麗だ」

「そうでしょ」


紅葉が自慢げに言ってきた。


「でもよくこんな場所見つけたね」

「ここに、穴場なんだ。みんな知らない場所だから人が全然来ないし」


確かにここに来るまでの道は草がとても生えており奥にこんなのがあるなんて知らない人はわざわざ入ろうとは思わないだろ。


「紅葉はなんでここ見つけたの?」

「たまたまあそこの海で撮影の時に下から見つけたんだ。」

「運が良かったね」

「うん!それから落ち込んだ時とか休みの日はここに来てたんだ」


そうなのか。ここは紅葉にとって思い出の場所なのか。

そして俺たちは近くにあるベンチに座った。


「ねぇ康介、寄りかかってもいい?」

「いいよ」


ここで断れるやつはいないだろう。


「あのね、私今日とっても楽しかったよ。ううん、今日だけじゃない。康介と出会ってからすごい楽しくて時間が過ぎるのが早いんだ。だからこれからも康介と一緒にいたいしもっと色んなことしたい。もっと深い仲にもなりたい。だからさ康介」


そこで紅葉は俺に寄りかかるのをやめてベンチから立った。波の音が心地いい感じに聞こえ紅葉の後ろでは夕日が沈みかけていた。


「好きです。付き合ってください」


紅葉が頭を下げて告白してきた。俺は電車にゆられながら次の場所で告白されるだろうなと思っていたから腹はくくっていた。その前からも今の答えは決まっていた。


「ごめん、今は返事ができない」

「そ、そうだよね」


紅葉が泣きそうな顔になった。


「ごめん、紅葉が嫌いとかじゃないんだ。まだ七海さんとのやつも行ってないからそれまで返事は待っててもらえるかな?」


「うん、わかった。まだ可能性はあるんだね。なら頑張るよ」


紅葉がまっすぐすぎて心が痛い。早く俺も決めないとな。


「じゃあ夕日も沈んじゃったし帰ろっか」

「そうだな。」


こうして俺たちは電車にゆられながら家に向かった。帰りの電車では紅葉は眠っていた。

少し元気がなさそうだった。


「紅葉と七海さんのためにも早く決めないとな。」


俺は今一度心に決めたのだった。

















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