国境を越えて

(藍那視点)


 山中で様々な生物を見た。まあウチらは音を立てずになんとかスルーできたけどね。

 なるほどよく分かったよ! この世界には、魔物、あるいはモンスターと呼称されるモノが存在しているという事が……

 そして……おそらく、人間であったであろう骨や、まだ原形をとどめてはいるが、この世のもので無くなってしまった人たちもそこらへんに転がっていた。きっと魔物に命を奪われたのだろう。

 恐ろしいことにそんな日常がこの世界には溢れているのだ。山道を走っている最中に偶然、旅の商人と出会ったので傷薬を買い、アホそうな金髪ヤンキーとガルタに飲ませた。

 さっき倒れていた奴らから金目になりそうなものを貰っておいてよかった。

 とりあえず旅の商人のテントで一緒に休ませてもらう事になった。


「コレで良しっと、ちょっと彼のステータスを確認してやってくれるかい」


「へ?」


 ステータスって何!?


「オイどうやって見んの?」


 ウチは旅の商人に聞いた。

 いきなりステータスとか何の話だよオイ!


「ハッハハハーっ! 何や自分この世界に来て真っ先に気ぃ付いてへんかったんかいや?」


 関西弁のおっさんが情報に疎いヤツだと呆れたように声を出す。知るか!というか何だよその情報通ですって顔は……


「視界の端にアイコンがあるやろ?」


「え?」


 言われるまま、ウチは何処を見るでもなくぼんやりとすると視界の端に何か妙に自己主張するマークが見える。


「それに意識を集中するようにしてみぃや」


 ピコーンと軽い音がしてまるでARのように視界に大きくアイコンが表示された。


 ———————————————————————


 ガルタ・イルマーニ


 クラス 兵士

 レベル13


 HP146 MP43 SP50


 攻撃135 守り155 敏捷50


 スキル

 剣技、斧技、宮廷作法、悪意感知

 、空腹耐性、


 装備

 鉄の鎧、鉄の盾、鉄の剣


 進化:条件を満たしていません



 ———————————————————————



 杉田 藍那スギタアイナ

 クラス 魔物使テイマー


 レベル 1

 HP19 MP3 SP6

 攻撃14 守り15 速さ4


 ユニークスキル

【種子作成】


 スキル

 農業、剣道、鷹の目、魔物使役

 、栽培、調理、整理整頓


 


 装備

 旅人の服、初級冒険者の棒


 進化:条件を満たしていません



 ———————————————————————


 木幡良和コバタヨシカズ


 クラス 盾士


 レベル 1

 HP13 MP1 SP4

 攻撃16 守り19 速さ3


 スキル

 虚空庫アイテムボックス(特級)

 気配察知、喧嘩術、シールドバッシュ


 装備

 旅人の服、初級冒険者の棒


 進化:条件を満たしていません


 ———————————————————————


 下田 海

 クラス 村人


 レベル 1

 HP13 MP1 SP4

 攻撃16 守り19 速さ3


 固有スキル

【錬成】


 スキル

 気合ため、料理、合成、瞬発、

 気力操作、運搬、


 装備

 町人の服


 進化:条件を満たしていません


 ———————————————————————

 へー、金髪ヤンキー君は下田 海って名前なのか


 テントで少し休んでいるとガルタが寝覚めた。


「よおガルタ、目が覚めたんかーっ! お前ケガの具合はどないやねん?」


「んっ………ああそうだ!私は確かあの黒装束の男に斬られてその後は……」


「そうやワイがしばき回したろ思うてガーって行ったらアイツ突然、透明人間みたいにスーッと消えおったんやで」


 イヤイヤイヤイヤ〜無理っしょアンタなんかじゃ

 全く何いってんだよこのオッサンは? オメエがかかって行ったところで何がどうなるんだよ?

 ……多分


「そうか君たちが私をここまで連れて来てくれたのか?」


 そこへ金髪ヤンキーの下田 海も入って来た。

 どうやら彼も少し良くなったようだ。


「おかげで随分と良くなったッス」


「あぁ、なんだよその態度はよ!

 アンタ超重かったんだけど」


「こんなガリガリの中坊なんか重ないわ!

 アイ坊が軟弱なだけやがな、気合が足らんのや!」


 ハア、このオッさん何言ってんの?

 何が気合いだよ!

 ウチの事いったい何だと思っていやがんだよ?

 アレコレ使いやがって!

 つーかアタシ一応女の子なんですけどー


「ところであのカラスなんだろう?さっきからずっとオレ達のそばにいないか?」


「カラスだと?」


「あぁん?」


 確かにテントの前の木の枝に一匹カラスが止まっているが別にコチラに危害を加えるような感じでもないので無視しておくことにした。


 あとさっきステータスをいじってみて気づいたことがある。ウチはどうやらテイマーという職業らしく魔物を使役する事が出来るらしい


 あと旅の商人から聞いたんだけど、この山を1つ越えた先に町があるらしいのでまずはそこを目指す事に決めた。

 そしてガルタや杉田も少し回復したようなので山登りを再開したがやはりその足取りはどうもまだおぼつかない様子だが突然、ヨッシーがガルタにちょうどいい長さの棒をわたした。


「さっきお前らが休んどる間にそこらへんから見つけてきたんやで! どないやこの木の棒しっかりしとるやろ?」


「おお、確かにな! ヨッシー殿ありがとう」


「殿はいらんがなアホ♡」


 2人はお互いのガシッと肩を掴みだした。

 なんなんだよこの2人はホモか?

 BLかよ?




 ◇





 しばらく旅の商人とともに山脈を越えたあと、とうとうウチらは国境の近くに来た。

 まずはスキル鷹の目を使い、あたりを調べてみる。ここから500メートルほど先、どうやら国境の周りには5人の兵士が巡回しながら見張っているようだ


「ワシ、あの兵士さんと酒が飲みとうなったんで

 お前さんらはその間にサッサと国境を越えるなり好きにしな」


 そういうと商人のオッサンは兵士のところへ行ってこっそり酒瓶を渡した。すると兵士は仲間を呼び出し皆で酒を飲みだした。何だ酒盛りを始めたぞ?


「カイ君、アイナ殿、聖教国では酒類は禁止なので彼らはこうやってコッソリと人目につかない所で飲酒するしかないんだ。」


 フーンそうなのか

 まぁでもあの商人がああやって兵士達を上手く引き付けてくれたお陰でウチらは兵士に見つかる事無く無事に国境を越えられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る