第三章 ただの普通の喫茶店?

9杯目 コーヒーと一緒に

ここは、喫茶店 月日の薫り。そして俺は、この店のマスターである、過波去紅舞である。

意外といわれるが、俺はこれでもまだ20代で、しかも、元探偵である。

じゃあ、なぜ喫茶店をやっているか?

そんなの決まってる、探偵やるよりも、稼げるし、生活が安定するからである。


「さてと、今日も営業始めるか……っとその前に」


俺は、オーブン内の鉄板を取り出し、厨房の机の上に敷いてある、濡れ布巾の上に置いた。

ジュ~という布巾の水分が蒸発した音がした。


「よし、これで、完璧だ。今日の看板に、書いておくか‼」


この店の看板は、黒板になっている。

俺は、日課である看板出しの時にチョークで今日のおすすめメニューを書く。

これで客が来てくれるのは、本当にうれしい。


「よし、出来た‼」


俺は、看板を店の前に出し、店に戻る。


看板には、

『本日より、マスターの手作りクッキーメニューに追加‼』

と記してあった。

















この店には従業員が4人(そのうち3人はアルバイト)いる。


「いや~、今日はいつもより盛況でしたね、マスター‼」


このいかにも元気な子が、今見春香だ。大学生で、今見姉妹の妹だ。


「ですね、ホールスタッフが3人でも、ギリギリでした。お疲れ様です、マスター」


こちらのおしとやかな女の子は、今見綾香。大学生で、今見姉妹の姉だ。


「でも、なぜ今日は人が多かったのかしら?店長、理由を教えてもらえる‼」


こちらの少しキレ気味の女子校正に見える女子大生は、夜桜紗希。

この店で1番長いアルバイトの子だ。

そして怒るととても怖い。


「まあまあ、みんな頑張って働いたおかげで、売り上げがかなり良かったということで、今度何か差し入れてくれるわよ。ね、去紅舞君‼」


この調子のいいことをほざいている美人は、阿阪美葉音。

この喫茶店を継いだ時に、一緒に働いていた好で未だに従業員として働いている。


「お前らなぁ……、売上と言ってもこれが1週間続けば利益がかなり出るが、一日じゃ分からないんだぞ!!

でも、今日は皆頑張ったから、差し入れとは行かないが、今後出そうと思ってる、特別に飲ませてやるよ」


俺はそう告げて、コーヒーミルで豆の配合を始めた。

配合を終え、少し豆を煎る。

煎り終えた豆をコーヒーミルで挽く。

客が居なくなった店内に、豆を挽くガリガリと言う音だけが響く。

その音が響くと共に店内にコーヒーの香りが少しだけ広がる。


「いい匂いですね、何か手伝いましょうか?」


綾香が、俺に問いかける。


「じゃあ、厨房のオーブンの様子を見て来てくれないか?

もしも、加熱が終わっていたらそのまま取り出してくれ」

「分かりました。何故、オーブンなんでしょうか……」


綾香は、少し疑問を持っていたが、去紅舞の指示に従った。


「よし、これでいいだろう」


俺は豆の挽き具合を確認し、いい感じなのを確認し、挽いた豆をドリップフィルターに適量入れる。

お湯が湧く直前で火を止め、ゆっくり蒸らしながら淹れていく。

ゆっくり、時計回りにお湯を入れ、抽出され終わるまで、蒸らす。

そして、またお湯を時計回りにゆっくり入れて、蒸らす。

これを数回繰り返し、ポットに十分な量がたまった。

そこでドリップを終え、カップに注いでいく。


「マスター、オーブの中のヤツを皿に盛り付けました」


綾香がオーブンで焼いていたヤツを皿に盛り付けて持ってきた。


「ありがとう、助かるよ」


俺は頭を優しく撫でる。


「えへへ、どういたしまして」


時々めちゃくちゃ可愛く笑うこの子が、とても愛らしい。


「もうすぐ出来るから、あとは座って待っていてくれ」

「わかりました」


そう言うと、綾香は春香と紗希の話している席の方へ歩いて行った。


「おやおや、見せつけてくれますね〜、店長?」

「なんだよ、従業員にはやらんぞ。働いてるのは当たり前だからな!」

「そんなぁぁぁぁ……」

「冗談に決まってるだろ?」

「ですよね!」

「とりあえず、お前は運ぶのを手伝え、それくらい出来るよな美葉音」

「もちろん!」


俺は美葉音と一緒に盆の上に置いたカップ5つを持って、3人のいる席に向かった。


「一応、新メニュー候補のカフェモカとカップケーキだ。食べて味の感想を聴かせてくれ」

「それじゃあ……」


4人はカップケーキにかぶりつく。

そして目を見開いて、


「「「「美味しい!!」」」」


4人が口を揃えて言った。


「表面は少しサクッとしているのに中はふわふわで甘い!」

「そして適度に喉が渇く感じ……」

「じゃあここで……」

「どうぞ?」


俺はカフェモカを飲んでいいぞばかりに、手を前に出す。


「ビターカフェモカ……」

「甘くない、でも、そこまで苦くもない。カップケーキを食べた後だからかもしれないけど、口の中の甘さがいい感じに中和されて、不思議だけど、幾らでも食べれる。これは売れるわ……」

「4人とも褒めすぎだよ!」

「何で今まで隠したんですか?」

「秘密にしてない、ただ、作って笑顔になって欲しい人がいなかったから、作らなかっただけで、今は居るから……」

「なるほど、愛の味という訳ですか。焼けちゃいますね、カップケーキだけに!!」

「誰が上手いこと言えって言った!!」

「やだな〜、感想ですよ〜!!」

「でも、本当に美味しいです。今日一日頑張った甲斐がありました!!」


綾香が最高の笑顔で言った。

その瞬間、俺の疲れは吹き飛んでいた。


「それじゃあ、今日もお疲れ様でした!!」


こうして今日も、この喫茶店は繁盛しているようだ。


















__________________

(あとがき)

皆様ご無沙汰してます、汐風波沙です。

久し振りにカクヨムで投稿します!

最近更新無いな〜と思っていた方、申し訳ありません。

ようやく、書きたいように書けました。

もしよろしければ、応援、星、レビュー、応援コメントを頂けると、今後の励みになりますので、よろしくお願いします!

以上、汐風波沙でした。

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