8杯目 彼女の想い

「……っは!?」


目が覚めると俺は風呂場にいた。

そこには高そうなシャンプーが置いてある。

状況を整理しよう。

俺は現在から過去に、今まで戻ることが出来なかった運命のあの日に戻ってきた。

そして、そろそろ時間ということだな、マズイな。このままだとまた阿阪が……

と考えていると、


「やめてくださいっ!!」


という聞き覚えのある声が響いた。

俺は風呂場を出てリビングに向かった。


リビングの入口付近に隠れ、中の様子を覗いた。


「まさか、お前が潜入していた探偵だったとは、本当に残念だ」

「何を言っているのか、私にはわかりません!!」

「まあいい、バレちまった以上生きては帰さないからな」

「……ッ」


嘉味田は阿阪の首を締め始めた。


「ほら、命乞いしろよ!!助けてくださいって言って楽になれよ!!」

「言わ.......ないっ!!私は貴方になんか屈しない!!」

「そうか、ならば私の手の中で死ね!!」

「グァっ!!」


先程よりも強く締まっているのか、目を大きく見開いて、少し泡を吹いている.......

ここで何もせずに待っていても嘉味田は死ぬ、寿命でな。

でも、今回は阿阪を助けるために戻って来たんだ!!

その為に、

俺はスマホを片手に飛び出した。


パシャリっ!!


俺はカメラで2人の様子を写真に収めた。


「貴様ァ、何者だ!!」

「どうも、過波探偵事務所の過波去紅舞です。おやおや、本気で女性の首を絞めているでわありませんか。この写真が世に出回れば、JECは即倒産ですね、これはマスコミに売れば高くつきそうだ!!」


ここまで言っても多分コイツはそれでも引かない。

だから、


「取引しよう。この写真をスマホごとお前に渡す。渡す前に阿阪を渡せ。そしたらここで起きていたことを見てなかったことにしてやる」

「ほぉ、この私に取引を持ちかけるか、いいだろう、その取引乗った!!ほら、女を先に渡せばいいんだろ?ほらよっ!!」


嘉味田は、阿阪を俺に投げ渡した。


「それじゃあ、スマホを渡してもらおうか。パスワードを掛けるのはナシだぞ!」

「わかった、ほらよ!」


俺はベッドにスマホを投げた。


「じゃあ、俺たちは出て行く。もう二度と会わないことを願っている。」


そう言って、俺たちは嘉味田の部屋を後にした。











去紅舞達が去った後の嘉味田邸

全く、本当に油断も隙もないなウチの人事は。

まさか探偵まで潜ませていたとは。

でも、何故あの男は私の部屋に入れたのだ?

このマンションはオートロックだし、まさか、オートロックをすり抜けて来たなんてありえないよな。

そんな事を考えながら私は過波が置いて行ったスマホを拾う。

そして、電源を付けた。

『残念!

 こっちはダミーでした!!』

アイツ、まさかあの状態で私を欺いたのか!?


「絶対に殺してやるよ、過波去紅舞ぁぁぁあ!!」


私は直ぐに家を出てあの二人を追いかけた。











去紅舞side________


「ここまで来たら大丈夫だろう。すまなかったな、阿阪。怖い思いさせてしまって……」

「ううん、必ず助けに来てくれるって


その言葉に違和感を感じだが、そろそろ例の交差点だ。

ここで確実に事故が起きるが、ここでトラックに轢かれるのは、アイツだ。

そんな事を考えているうちに信号が青に変わった。


「阿阪、渡るよ。」


俺は阿阪の手を引っ張り、渡りきった。

信号が点滅し始めた瞬間に、


「過波去紅舞ぁぁぁぁあ!!」


そんな狂気じみた声で俺の名前を叫ぶな!!

嘉味田が追いついたのだ。

しかし、点滅信号は止まれのルールを忘れているお前が悪い。


「じゃあな」


俺は一言だけドヤ顔で言い放った。

点滅し始めた信号を渡ろうとした嘉味田は、信号無視したトラックの下敷きになり、即死した。

その後俺たちは警察の事情聴取を受け、その後依頼である社長のゴシップを人事の人に渡した。


「さてと、それじゃあ、始めるとするか。」

「始めるって何を?」

「俺、探偵を辞めて喫茶店で働こうと思ってさ、いや、。」

「なるほどね、現役JDで私には無いたわわな胸ときましたか。」

「何故わかった!?」

「言ってなかったね、私、の顔を見ると、その人がの。」

「そんな設定聞いてない!」

「仕方ないじゃない、後付だし。でも、正直もう探偵はいいかな!!」

「そっか、じゃあ一緒に『喫茶店 月日の薫り』で働かないか?」

「何言ってるのよ、そんなの当たり前じゃない!!」

「良かった……、これからもよろしくな阿阪。」

「名前、下の名前で呼んでよ。」

「え!?」

「だから、私だけ名字なのもおかしいから、私も名前で呼んで。」


少し戸惑いはしたが、本人が呼んで欲しいのなら、読んでいいのだろう。


「わかった。これからもよろしくな、美葉音!!」

「うん、こちらこそだよ去紅舞!!」


こうして俺たちは新たな未来みちを歩み始めることになった。

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