第15話 温度

「かんぱーい!!」






詩音とグラスを合わせてアルコールを流し込む。







「くぁー!最高」







「くくっ、めぐおじさんみたい」







「なっ!ピチピチの20代なんだけど!?」







「あははは、ピチピチって」







ケタケタと笑いを漏らす詩音に頬を膨らませる。







「ごめんって」







拗ねている私にそう言いながらも笑い続けてる詩音。







「あ、そうだ」








「僕、めぐのこと知りたいな」







誤魔化すようにそう口を開く詩音。








けれど私はその言葉に戸惑ってしまう。






「さっきは僕のこと話したでしょ?仕事のこと。だから今度は僕がめぐのこと聞きたいなって」







「例えば・・?」







「なんでもいいよ。例えば、そうだな、、、好きな食べ物、とか」









「え、そんなこと?」









「そんなこと、だけど僕は知らないから」







「……」








偶然かあるいは必然か。









たった二度会っただけの私たち。









まだお互いのことを何も知らない。







「だから教えてほしい。めぐのこと」







詩音の言葉に私はうなずいた。







それから私たちは色んなことを話した。






自分の趣味のこと、仕事のこと。







「へえ~!映画よく見るんだ?」







「うん!彼が好きで」








「っ!」







言ってしまってからすぐにハッとなった。







「めぐ..」







黙り込んでしまった私を、詩音が心配そうにのぞき込んでいる。








「わたし、余計な事言って、、、」








ごまかすように笑うけれどうまく笑えない。








最悪だ。







せっかく楽しく話していたのに私が全部壊してしまった。








笑わなきゃ笑わなきゃ何か、話さなきゃ、、、








詩音に気を遣わせてしまう。








そう分かっているのに言葉は出てこなくてーーーー







「大丈夫だよ」








そうやって憔悴する私に間近から言葉が届いた。









「めぐ、大丈夫だから」








私の心情をすべて理解しているというようにかけられた温かさがこもった言葉が。








いつの間にか私の隣に来ていた詩音が私を優しく抱きしめる。








冷えていた心が、体が、温かく溶かされる感じがした。

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